第9話 いつもと違う朝
「おはよ。」
いつもの通り芽久美を迎えに行くと、なんと既に起きていた。
「今日、槍でも降ってくるんじゃないか…?」
「失礼な!私だって早起きすることくらいあるよ。」
「そうかそうか、そりゃ失礼しました。…一応傘取りに戻ろうかな。」
「もう!」
軽く小突き合いながら登校するが、明楽の足取りは重かった。
「…元気ないね?どうしたの?告白されたんでしょ?」
「なんで告白されたって思うんだよ。」
「…女の勘。で、なんで元気ないの?」
「多分告白しようとしてたから元気がない。」
「なんでー?」
「…人生で初めて振ったから。」
「!」
「…なんで嬉しそうなんだよ。」
「い、いやぁ〜、やっぱこの芽久美ちゃんには敵わなかったってやつぅ?相手の子には可哀相だけど、仕方ないよねぇ〜。」
「うるせぇ。別にお前のために振ったわけじゃないから。」
ニヤニヤする幼馴染をあしらって先にバスに乗り込んだ。
「…じゃあどういう理由?」
「お前に関係ないだろ。」
「…ケチ。」
いつもならもっとしつこく言ってきそうな気もするが、芽久美はそれ以上何も言ってこなかった。
(…本当に今日何か降ってくるんじゃないか?)
様子のおかしい幼馴染を気味悪く思いながらも、どう声をかけて良いか分からず明楽も黙っていた。
やがてバスはひなげし女学園を通り過ぎ、次のバス停へ走り出した。
(今日は瀬戸さん居なかったな。いつも一本早いバスに乗ってるのか?)
女子校を目で追う明楽を見て、芽久美が口を開いた。
「…女子校に興味あるんだ。」
「えっ。いや…そういう訳じゃ。」
短く「ふぅん」とだけ返事をした芽久美は、明楽の袖を引っ張った。
「なんだよ。」
「…別に。」
袖をつまんだままそっぽを向いている幼馴染。
「なんだ、ヤキモチか?」
「ち、違うもん!」
「そうだよなぁ、こんな格好良い幼馴染失いたくないよなぁww」
「違うってば!」
ようやくいつもの調子を取り戻した二人は、ああでもないこうでもないと言い合いながら仲良く校門をくぐった。
クラスでは既に噂が広まっているようで、クラスメイトからは冷やかされた。
「お前、隣のクラスの子振ったんだって?やっぱ西原が本命か。」
「ちげーよ。」
「じゃあなんで振ったんだよー?そんなブスだったの?」
「お前失礼だな。可愛かったよ。」
「じゃあ断る理由ないじゃん。」
「昨日初めて名前を知った相手と付き合えるわけないだろ。」
「俺なら、可愛かったらアリだなぁ。」
「相手のことよく知らないのによく付き合えるな。」
「これから知っていけばいいじゃん?大事なのは顔よ。」
「……。」
否定したかったが、一目惚れしている手前完全否定は出来なかった。
「やっぱお前もそうなんじゃんw」
「…だとしても、友達から始めるね。」
「またまた〜w」
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