第8話 幼馴染を好きになるということ

 家に着いた頃にLINEを開くと、芽久美から返信が来ていた。

”モテ期到来?おめでとうww”

 一緒に送られてきたスタンプは、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべたパンダのイラストだった。

「…冷やかしかっ。」

 人生で初めて人を振ったショックはまぁまぁ大きかった。自分に向けられた好意を無下にする感じがして心が重い。

 ため息を吐きながらベッドに倒れ込み、幼馴染に向けて「あっかんべー」のスタンプを送った。


***


 芽久美は明楽からの返信を見てため息を吐いた。

(明楽、告白OKしたのかな…。)

 放課後、明楽からの連絡が気になってこっそり後をつけていたが、隣のクラスの女子に告白されているのを見てしまい、慌てて帰ったのだった。

(もし付き合うことになってたら?私ともう登下校しなくなるってことだよね…?)

  ベッドに正座をして、次の文章を考えた。少し打っては消してを繰り返し、結局返信できずに3時間が経った。

(…もうこの話題はやめよう。でも、明日憂鬱だな。)

 一階から「お風呂入っちゃいなさい」と母の声がしたので、のそのそと立ち上がり制服を脱いだ。

(あっちから何も言ってこないってことは、付き合ってはないのかな?断った可能性あり?)

 もんもんとしたまま湯船に浸かった。

(断ったとしたら、どんな理由で?明楽のことだから、”好きとかよく分からない”とかかな。…でも、もし”好きな人が居るから”とかだったら…?)

 長風呂のせいで、湯船から上がった時にクラクラと目眩がした。

(はぁ、幼馴染を好きになるって辛い…。)

 いつも一緒にいるのが当たり前の存在、それがある日急に居なくなったらと考えると怖かった。

(よそ見なんかしないで私を好きになって欲しい。)

 芽久美の独占欲は強まる一方だった。

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