第7話 山田さん

「おつかれ。」

「あ!お、お疲れ様…!」

 部活が終わった後、待ち合わせしていた校門で山田さんと落ち合った。芽久美には”用事ができた”と送っておいたが、既読が着くも返事はなかった。

「石井くん、今日なんだか足痛そうだったね。」

「えっ。…あー、ちょっと休みの日に捻っちゃって。」

「そうだったんだ。」

 仲間たちには知られないようキツめにテーピングをして部活に挑んでいたのだが…。

「俺、そんな足引きずってた?」

「ううん!いつもよりなんだか動きがゆっくりに見えたから、気になっただけ。」

「そう…。」

 よく見ていてくれたのだろう。それなのに自分は今日初めて名前を知ったなんて、申し訳なかった。

「えっと、今日、時間くれてありがとう。」

「ううん、全然いいよ。」

「その…いつもは西原さんと登下校してるから、二人って付き合ってるのかなって。」

「やっぱ周りにはそう見えるよなぁ~。」

「違うの…?」

「うん、幼馴染で家も近いから一緒に通ってるだけ。付き合ってないよ。」

「そっか、良かった…。」

 山田さんは夕焼けに頬を染めながら歩いた。


「…石井くん、好きな人居る?」


 その言葉を聞いた時、瀬戸さんの顔が直ぐに浮かんだ。

「っ、…うん、居る。」

「居るんだ…。どんな人?」

「かっこい…美人な人。」

「うちの高校の子?」

「他校。」

「……そっか。」

 彼女は足を止めて俯いてしまった。

「…ごめん、せっかく時間貰ったのに変なこと聞いちゃって。」

「え、…ううん、俺は、別に…。」

 気まずい沈黙の後、山田さんは「帰り道、こっちだから。」と言って点滅する信号を駆け足で渡った。

「…やっぱ、告白しようとしてたのかな。」

 彼女の背中を見送りながら、心の中で「ごめん」と呟いた。

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