第6話 モテ期?

「もう、なんで先に行っちゃったのさ!おかげで遅刻しかけたじゃん。」

 昼休憩になった途端、芽久美がやってきて文句を言ってきた。

「お前、いい加減自力で起きろよ。」

「むーりー。」

 いつもは芽久美の家に迎えに行き叩き起こすのだが、今日は俺が先に学校に行ったために寝坊したらしい。

「LINEの通知音でさえ聞き逃して寝ちゃったんだもん。やっぱ直接起こしてくれなきゃ。」

「お前なぁ。もう高校生なんだから俺に頼るなよ。」

「そんな硬いこと言わないで〜、私達の仲じゃん?」

「お前、そんな事言ってると一生彼氏できないぞ。」

「うぐっ。」

 芽久美はおしゃれで、フランスのクオーターなこともあって見た目は可愛い。俺に激甘なことを抜かせば、モテる要素はそれなりにある。

「残念な美女ってやつ?責任取って明楽貰ってよぉ。」

「自分で美女という辺り確かに残念だな。」

 芽久美を受け流しつつ弁当の卵を口に入れた。

「ねぇねぇ、私の話最後まで聞いてた?」

「え?だから、残念なんだろ。」

「そっちじゃなくてぇ〜…。」

 何か言いたげだったが、特に気にせず弁当を頬張った。

「…明楽って、どんな子がタイプなの?」

「えぇ〜?」

「明楽だってモテそうじゃん?チビなのを抜かせば。」

「チビは余計だ。」

「でさ、どんな子が好きなの??」

 今度は受け流しも受け付けずに聞いてきた。

「…ファッションにケチつけない子。あと顔が良い子。」

「私じゃーん♡」

「…え?」

「え?」



 放課後になり、生徒たちは各々自分の部活へ。俺はジャージに着替えて体育館へ向かった。

「石井くん!」

 振り返ると、隣のクラスの女子が立っていた。

「えーっと…」

「あ、山田です。山田えみり。」

「山田さん。それで、俺に何か…?」

 今まで話したことの無い女子に、今話しかけられる理由がわからなかった。

 しかし彼女が少しもじもじしながら「放課後、予定って空いてますか?」と言ったので、そこでようやく気づいた。

「あっ…。えっと…、うん。」

 山田さんはパッと表情を明るくさせ、「じゃあ、またね!」と言ってバドミントン部の所有するコートへ走っていった。

「モテるなぁ。」

「!」

 背後から声がしたので慌てて振り向くと、逸先輩がニヤニヤしながら立っていた。

「あの子と付き合うん?」

「いや、そういう話じゃない可能性もあるし…。」

「もしそうなら付き合うん?」

「…わかりません。」

「ふーん?結構可愛かったけどなぁ。」

 勿体ない、といった様子で先輩は先に行ってしまった。

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