第5話 イケメン女子高生

「えっ、あの…女子校…?」

「あぁ、お前も間違えたか。」

 先輩は軽く笑ってから説明してくれた。

「楓はこう見えて女なんだ。スカート、似合わねぇだろ(笑)」

 先輩の言葉を聞いて苦笑する瀬戸さん・・

「ズボンにしたかったんだけど、無いって言われて。」

「そ、そうだったんだ…。」

 驚きと共に内心少し安心していた。一目惚れした相手が男だと思って焦っていたが、女性だとわかれば納得がいく。

(良かった、俺の感覚は間違ってなかったんだ…。)

「こいつ普段から男の格好してるから、制服のスカートは貴重な姿なんだ。」

「貴重って(笑)。」

「だってそうだろ、お前私服全部メンズじゃん。」

「そうだけど、別に女を捨ててるわけじゃないから。」

「それなら安心した。」

 先輩と瀬戸さんのやり取りを見ながら、自分も安心したなんて言えないな、と思った。


「じゃ、私はここで。」

 バスがひなげし女学園前に到着し、瀬戸さんは先に降りていった。

「…あいつ、親の言いつけでここに通ってるらしいぜ。」

「そうなんですか…。」

 もしかしたら、いいところのお嬢様なのだろうか。遠ざかる彼女の背中をぼんやり見つめていると、「あいつのこと、どう思う?」と急に聞かれた。

「えっ、どうって…格好いいなって。」

「やっぱそうだよなぁ〜。」

 大げさに先輩はため息をついた。

「女の子らしくしてれば可愛いと思うんだけどなぁ。」

「…可愛いっていうか、美人かな。」

 そう、瀬戸さんは美人なんだ。俺は美人な瀬戸さんに一目惚れしたのであって、決して格好良さに惚れたわけじゃない。

 「よろしく」と笑顔をくれた瀬戸さんの顔を思い出し、また顔が熱くなった。

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