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「あれ? ここは?」
ウィスタリアがキョロキョロと見回しながら言った。その様子を見て、エボニーは真剣な表情で答えた。
「マゼンタ王女がひっそりと暮らしていたっていう山奥のお屋敷だよ。あの女王と名乗ったのは明らかに他の奴とは持っている強さが違うと感じた」
その言葉を聞いてウィスタリアは驚いた。
「え!? じゃあ……逃げたって事……?」
「ああ……。そうだ。あいつの強さは異常だ。俺たちが全力で力を合わせて束になったとしても敵わないだろう。それにもし仮に心魔怪の本体があの女王だったとしたら……そもそも勝つ術が……」
「勝つ術が……?」
ウィスタリアは不安そうな顔をする。エボニーはそんなウィスタリアに申し訳なさそうにして話した。
「ウィス。すまない。俺はお前の幼馴染として、家族として、お前を危険には晒せない。だから、ここから先は俺一人で戦う事にするよ」
「え……それってどういう……?」
「アイツが女王だって言うんなら、心魔怪を人々に自由自在に宿らせる事が出来ると考えられる。しかも、俺よりも遥かに強いんだ。だったら方法はただ一つだろう。アイツよりも、もっと強い奴……魂壊竜の力を、借りるしかない」
エボニーの言葉を聞いたウィスタリアは悲しそうな顔をしながら話す。
「そんな……でも、それって……」
「ああ。分かっている。魂壊竜の恐ろしさは嫌って言うほど叩きこまれてるよ。だけど、このままアイツを野放しにしてたらそれこそ世界は闇に染まってしまうんだ。俺はこの世界を守りたい。その為には……魂壊竜に頼るしか無いんだよ」
エボニーの話を聞いたウィスタリアは泣きながらエボニーに縋りついた。
「そんなのダメ! 私は今のエボニーと一緒にいたい! 魂が壊れたエボニーなんて、もうエボニーじゃない!」
「ウィス……。安心しろ。俺は最強の魔術師だぞ? 魂が壊されるはずないだろ?」
口ではそう言ったが、内心は恐怖に包まれていた。最悪の場合、魂壊竜によってこの国どころか世界もろとも滅ぼされる可能性だってある、何ならその可能性の方が高いまである。だけど、このままじゃ世界はヨルンに滅ぼされる。だから、世界を守るには、こうするしかないんだ。
「……ごめんなさい。私、エボニーを疑ってた。そうだよね! エボニーが魂を壊されるはずないよね!」
ウィスタリアの言葉を聞いたエボニーはホッとしたように息を吐いて笑った。
「ふぅーっ……。分かってくれたか。良かったぜ」
「うん」
「ま、俺がパパっと世界を救ってやるから安心しろ! それと」
エボニーは呆然と突っ立っている真太とポコの方に顔を向けた。
「勝てない相手っていうのは、勝てないって思いこんでるだけで、本当は勝てるもんなんだぜ!」
「エボニーさん……」
「ブヒ……」
真太とポコは動揺した様子でエボニーを見つめている。そんな二人を見てエボニーはニカっとした笑みを浮かべた。
「今からそれを証明してやるから! 見とけよ!」
こうしてエボニーは上昇魔法を使い空高くまで舞い上がり、どこからでも確認できる魂壊竜が封印されている卵の方へ飛んでいった。
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