第17話

《五月雨》(和灯)side


* * *


「ほら、飛行機乗るぞ」


そう言って、私の腕を引いてくれた。


ちがう、


私の事はそんな目で見ない。

これは、「私」が恋人「やく」だから。


変な勘違いをしてしまったら、

変な期待をしてしまったら、


その後、全てが崩れる。

そんなことを想像しただけで足がすくむ。



私はこの人を愛しちゃだめだ。この人に溺れてしまう。


「…結城君進むの早いよ、」



私の顔を見ず、貴方は進んでしまう。


そんな貴方の背中を見ることしかできません。


私は、陽友都先輩に追いつけないです。


そんな、貴方が、


前だけを見る貴方が、



私は、きっと、



大好きなんです。




「今、行きます」


それと同時に、この気持ちを受け入れた。



* * *


―――アメリカ 着


「飛行機に乗っているだけでも疲れた」


「んー。結城君大丈夫?」


顔を見ると、少し顔色が悪かった。


「酔った?ちょっと休憩する?」


「ん、10分程度休憩したい」


先輩が弱ってる…


「水、買ってくるから。ここで待っててね?」


そう言って、近くの自動販売機まで足を運んだ。


《殺華》(陽友都)side


酔った…五月雨が水を買いにどっか行った。


「あら?西谷にしたに君?」


目の前に現れたのは、

誰だ?殺しの関係者か?

だとした名前を忘れた。


「えーと、確か「付き合った人の名前も忘れた?」


これだけ言えばわかるでしょ、そう言い、俺の隣に座った。


「夏来、さん?」


夏来なつきさんは、俺が任務の時殺した相手の妹だ。

協会が渡す情報は最低限だ。

夏来さんのお兄さんは自分の事を話さなかったり、行動を見せたりしなかった。

情報が少しでも多く取る為、夏来さんと付き合った始末だ。


殺し屋には情は必要ない。


お兄さんが死んですぐ喧嘩を装い、別れた。


「夏来さん、なんでここに?」


「前みたいに呼んでちょうだい。その方が楽だわ」


「ナツ…、何でここに?」


「ふっ。なんか久し振りに呼んで貰えたわね。」


そう言って、ナツが一息ついた。


「私、結婚するの」


「…え?だって「結婚しない条件、でしょ?」


「貴方とは結婚をしない約束で付き合ったわ。

 けど、初めてそんな事どうでも良いと思えた相手なの。」


俺にはその条件がうれしかった。

けど、初めてそんな条件を言われたから少しは戸惑った。


「そうか、良い人と出会えたんだな」


「…ん。けど、貴方も良い人だったのよ?」


「は?」


ナツは面白がって俺を笑った。


「私を笑わせてくれた人、楽しませてくれた人、悲しませた人、

 …あら?貴方の良い所しか出てこないわ?」


そう言って、俺に沢山の話をしてくれた。


「ナツ、変わったな」


「貴方と喧嘩してからね」


「それは…すまなかった。俺は「私が素直になれなかった」


「それも一つの原因よ?貴方の所為じゃない」


そして、話終えたばかりに腰を上げた。


「こっちで結婚式挙げるの。花嫁姿、貴方にも見て欲しかった」


「じゃ、俺はタキシード姿を見せればよかった訳だ」


「それはそれで、泣いてしまうわね」


「なんでだよ」


2人して笑いあった。昔のように。


「旦那が来たわ。また会う時ね」


「ああ、じゃあな。ナツ」


「バイバイ。西谷君」


姿が見えなくなるまでその姿を見続けた。


「今のは彼女さんだった方ですか?」


「さみっ―――!」


五月雨に手で口を覆われた。


「由菜です」


そう言って、手を外してくれた。


「で、どうなんです?彼女さんだったんですか?」


「ええ、まあ。ハイ」


てか、こんな事、五月雨に知られて大丈夫なのか?


俺は、五月雨が



「え?」



そんなことを考えた瞬間、


 好き


という2文字が溢れ出た。


五月雨を見ると、いや五月雨を見下ろしている状態だった。



 好き


今、コイツから目を背けたくなった。



俺は五月雨が





好きなんだ。



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