第15話
《一死》side
―――建物の中 地下3階
嘘だろ…⁉
あれは、
「大丈夫なのか?」
不意に呟いてしまった。
だが、今戦っている雑魚共の相手をしている殺華は気づかなかった。
これは連絡するべきなのか?
この場を離れ、笑魅さんに電話をした。
* * *
《
「先輩、私あなたの名前知らないんですけど?」
教えるわけないじゃないか。
「いやだって、自分の情報は話したくないだろう?」
「いやいや。私の名前知ってますよね?」
「う゛」
確かにコイツの名前を知っている。これでは、対等ではないだろう。
「名前は何ですか?」
「いいだろう、教えてやる。陽友都だ。太陽の陽に、友達の友、京都の都だ」
「陽友都さん…」
「なんだ?」
「いやなんでも」
この時、和灯は
“友って入ってるけど友達いるのかな”
と考えていた。
「?まあ、その名は呼ぶな。今まで通り《殺華》だ」
「分かりました」
そして、地下三階から地上へ出た。
今回は難ばっかりだったな。
「あら、《殺華》君」
「えーと、」
「笑魅よ。協会の幹部の一人」
そう言ってウインクをした。
それより、何故ここに協会の幹部が?
「フフっ。それより私を覚えてないなんて,
私も衰えた者ね」
「人は覚えるのが苦手な者ですので」
「あら、意外なこと」
こんな相手の探り合いが続く中、たった1人 《一死》が見守って
いた。
この女は自分の娘が死んでいるかもしれないのに何をやっているのだろうか?
ただ単に、娘を愛していなかっただけなのだろうか?
そんな考えを《一死》は繰り広げていた。
「そろそろお暇させて頂こうかしら」
顔いっぱいに笑顔を見せた。
「私の笑みは人を魅了する。そろそろ私の名前覚えたかしら?」
「ええ。覚えました。きっと」
「次会う時が楽しみだわ」
そう言って俺の耳元で囁いた。
覚えておきなさい
複数の意味が込められているであろう言葉だった。
《笑魅》side
「ああ、嬢雨。生きておいてくれ」
私は自分の娘を本名で呼ぶことが無かった。
最後に言ったのはいつだっただろうか?
そんなことすら記憶にない。
「
愉しいってことを一番に考えて欲しい
そんな願いからつけた名前だ。
「ねえ、お父さんは?」
不意に聞かれた問いに私は体を強張らせた。
私の夫は、お前の父は。
私が殺した
違う。そいつは、お前を殺そうとしていたんだ。
いつか自分でこの子に伝えてしまうんじゃないか、と
ただそんなことが怖くて
距離を置いて、
私がいつかこの子まで殺すことの無いように
殺し屋まで育てた。
それなのに、お前まで死んだら、私は何を糧に生きればいい?
お前まで死なないでくれ。
ただそんなことを考えて、願って、走った。
「嬢雨はっ‼」
目の前の光景は残酷だった。
赤く染まる壁
一死が立っている傍にたった一人、横で寝ている人物がいた。
「嬢雨さん、今息を引き取りました。来るのが遅いんですよ‼‼何やってんすか‼‼
娘が、自分の娘が死にそうな時に何アイツとしゃべってんすか‼」
そうやって、一死は私の襟をつかんだ。
「バカなんすか‼親でしょうが‼殺し屋以前に‼一児の母でしょうが‼」
「…16歳。4月23日生まれ。本名しか知らない。ただ、それが親と言えるのか? 」
好きな食べ物も、恋愛も、趣味も、好きな色も、好きな事も、
何もかもこの子に対して一切の興味がないかのように知らない。
私の瞳は一死を捉えた。
「教えてくれ」
「知りませんよ……だけど、少なからず嬢雨さんは最後まであなたを信じていた」
「は?」
「信じなくてもいい。だが、この子は言っていた」
―――『お母さんまだかな?』
―――『私、お母さんより先に逝っちゃうんだね』
―――『お母さんに追いつきたかった』
―――『お母さんに会いたい』
―――『』
「今は、二人にしてくれ」
「だが、「上司の命令だ」
「…はい」
たった一人、赤い血で染まった部屋にいた。
―――『想いは言葉にしなさい。必ず通じるから』
小さい時、この子に言った言葉だ。
「なに律義に守ってんだよっ」
「私が言ったのに、私が守れてないじゃんか」
「
「お前の名を呼ぶのは何回目だ?」
誰も返してくれない。
ただただ私の声が響くだけ。
この無力さはどうしたらいい?
この思いは誰にぶつけりゃいい?
―――《殺華》
すぐに思いついた人物がコイツだった。
コイツにぶつけても意味はない。
そんな事は分かっている。
だけど、娘を殺したのは
決まりだ。
殺華を殺す。
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