第14話


数十年前―――――



「殺華は気づいています!それなのに、野放しにするんですか?」


「ちぃと黙っておれ」


ある建物の中、ある一室で言い合いが起きていた。


一番位が高いであろう、この人物。


名は《刃磨軌じんまき》。

この殺し屋の世界のトップに君臨し、今現在その権力を誇っている人物だ。

絶大な支持を受け、この世界の秩序を保たせる為の人物といっても過言ではない。




言い換えれば、このトップを崩せば殺し屋世界はする。




「殺華に殺す意思はなかろう」


「え、?」


「死見音が死んだ今、何も感じることはなかろう」


「だから復讐に奔走するのではないかと思うのですが」


こちらの男はここにいる5名の者達の中で一番若く見える。


「ったく、怖がりだなぁ」


この体つきの良い男は、自信に満ち溢れた笑顔で言う。


「俺ら5名でどうにかなるって」


「そんな甘い考え通じなかったら?」


5名の中、たった一人の女がいた。


笑魅えみさぁん、大丈夫だって」


「だから、その考えが甘いんだって」


強く言い返す笑魅と呼ばれる女。


「お前ら、本当に黙れ。磨軌さんの時間だ」


男が発したその名。それだけでその空間はあまりにも静かになった。


「殺華は与えられたものを失った。釘もさしておいたし大丈夫じゃろう」


ただし、そう言って幹部全員を見渡した。


「何をしでかすか分からん。誰かに観察してもらおう」




観察という名の




「ではこの私が」


そう言って先陣を切って、一歩前に出て来た、男がいた。


「おお、《一死かずし》、お前は安心して任せれる。儂に忠誠を誓って居るしな」


「ええ、この《一死》にお任せを」


左手を右胸に掲げ、右足を後ろに下げ、腰を折った。


「ッチ。良い所取りかよ」


数名の文句も相手にせず、扉を開けた。


「ここから始まりだ。なぁ《殺華》?」


怪しげな一言は扉とともに音を消した。



* * *



数年後―――


《一死》side


「大きな変化なし、っと」


一体何年続ければいいんだ?


元凶は俺か。


『ええ、この《一死》にお任せを』


俺はなんて事を言ったんだろうか。


「もう疲れたな」


滅多に自分の任務にも取り掛かれない。

少しは《磨軌まき》さんも分かってくれているのだろう。

だが、あまりにも任務が簡単すぎるのだ。


俺ら幹部の仕事は殺す相手の「プライベート、過去、人間関係…」

そういうのを調べて、適当な人物に合わせて殺しを頼んでいる。


まあ、そんな面倒くさい事しなければいいのに、と今でも思っている。



コンビニでおやつやら買おうか。


そうして、コンビニに入った。


「ん~!今日は限定のケーキが買えた‼」


そんな些細な嬉しさに喜び、《殺華》を追った。

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