第10話


殺華さつか》(陽友都ひゆと)side


さっきまでいた囮の奴らは俺と《五月雨さみだれ》のおかげで今、倒れている。


《五月雨》が壊したドアの中を覗いても人がいない。

いや居るのだが、敵の頭がいない。


―――また囮か。


ここに一体何人の囮を使ったんだろうか。


「《五月雨》、ここも囮しかいない。地下2階に行くぞ」


「え、なんでわかるんですか?」


「誰も統一していないから」


「へ、へえ」


「お前意味わかってないだろ?」


「そんなことないですよ~。アハハ…」


南階段を使って、地下2階へ移動することになった。


* * *


《五月雨》(和灯なお)side


「あ~。また最初っからかよ」


「え?」


「隠れてる場所だよ、頭が。分かんないだろ?」


確かに。どうするんだろう。


「そういえばお前、一体どうやって―――」


「え?」


主語が無いから分からない。


「地下3階の―――「ああ!あれですか!」


「アイツが言っていた意味が身をもって分かった」


陽友都が頭に浮かべたのは一番最初に会い、和灯なおと勝負した男だった。


「?まあいいです、それより」


咳ばらいをし、場を整えた。


「あれは――――――」






空気 埃 匂い ごみの量 ゴミに書かれてる賞味期限 明り


埃があれば掃除 廊下の足跡 


一つ一つの単語をジグソーパズルの様に繋げ、仮説へと展開させる。



―――……分かった。



空気がこもっていれば換気。

埃があるところには寄りにくい。

ゴミがあれば賞味期限を見る。

明りの強さ。

掃除がされてるか。

埃を被っていた廊下に足跡。


もちろん、掃除が罠かもしれないから注意した。



そうして、それらしき場所を絞っていった。


まあ、あと2つ目を付けてたけど、1発で当たった。イェイ!



「―――みたいな感じです!褒めてください!」


「ああ、お前の野生の勘で当たったのだと覚えておく」


「ちょ、ひどくないですか!?」



それから、どこに居るかも分からないので、手当たり次第に扉を開けて探した。


[《殺華》先輩!居ました!]


口パクで伝えた。

すると《殺華》先輩が、


[分かった]


―――ペンギンみたい。


[誰がボスですか?]


《殺華》先輩に聞いてみると、



[多分、あのチビだな]


この部屋の中にはチビなんか居なかった。


[あぁ、すまん。お前からするとちょっと大きい奴だ]


そう言ってからかってきた。


ぐうう!腹立つつぅぅぅ!!



[行くぞ]



「来た」


先に相手から言葉が放たれた。


冷酷殺神斬れいこくさつじんき、」


「まだそんな名前あるんだ」


誰かが言ったその単語に《殺華》先輩が反応した。


え?え?

誰のこと言ってるんですか?え?


「当たり前だろう?逆になんと呼ぶべきなのか」


「呼ばなくていいよ、どうせ死ぬし」


えええ!!《殺華》先輩のこと?

冷酷殺神斬……ちょっとそれあってるかも……


そんなことを思いながら、今までの酷さを振り返っていた。


「後ろのやつも納得のいく顔してっけど?」


後ろのやつ……はい。私のことでしょう。


「《五月雨》、お前なあ」


怖いです。

寒気がしたようなぁーしなかったようなぁー。アハハ……ハハ……




「殺れ」




《殺華》先輩が言っていた、頭が声を発した途端ここに居る人達の雰囲気が変化した。


「《五月雨》、ここで初めての俺の試験だ」


「はい?え、ちょ―――」


「こいつが相手するよー」


勝手に自分の面倒事を私に押し付けてスマホを弄っている。


「あ、負けたら―――ドッカーン。ね?」


ヒイイイィィィ


これは本当に負けたらやばい。けど、


「私そんなに弱くないですよ」


そんなに心配されるほどヤワじゃない。


「舐めんなって言ってんの」


自分はスマホをいじってる癖に……



「「「「「冷酷殺神斬がまともなこと言ってる」」」」」



足を止めて、相手の人達が言った。


「《殺華》先輩の扱いって……」


この場にいる本人以外の私達が白い目を向けていた。


「ッチ。《五月雨》、ここにいるヤツら全員殺しちまえ」


面倒臭そうに言うと、顎でクイッと相手を指した。


「じゃ、ドッカーン、ね?」


あまりにも優しい笑顔で言うので


「怖いです、逆に」


というと、スッカリスマホにご執着。



早く殺れ、と。








「猫さん猫さん情報くださいな」







《五月雨》が言った言葉が始まりを告げるようで。



殺しが始まった。



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