第6話

殺華さつか》(陽友都ひゆと)side


「《殺華さつか》先輩!!今日も私と一緒です!」


「お前、元気だな?」


「先輩が元気ないだけです!」


「俺は爺じゃねーぞ?」


今日は違う所の『殺し屋』を見に行く。

ここ“皐月未さつきみ”は他の『殺し屋』と交流がある。

こちらの方では珍しいことで、“皐月未”はこの世界で名が知られていた。

その中でも伝説の殺し屋、俺の師匠のお兄さん。《死奇しき》さんが名を馳せていた。

死奇さんは俺にも必要不可欠な人物だった。

俺に殺し屋の在り方や厳しさ、カッコよさを教えてくれた。

俺の目標だ。それは今も変わらない。


死奇さんは今、この組織にはいない。

今は、海外で殺し屋として活動を続けているらしい。


俺も強くならなくちゃいけない。

自分も。周りの人も。






もう二度と失われることが無いように。






「先輩?ほら行きますよ!!」


――楽しみなんだろうな。

声の明るさや笑顔から読み取れる。


「表情も殺し屋として必要なスキルだぞ?」


「ええ!!そんな顔に出ていましたか⁉」


「どうだろうな~」


そして俺が先陣を切るべく、他の殺し屋のところへ足を運んでいた。



* * *


「こんにちわ、《殺華》様!」


「こんにちは、《興人おきと》さん」


「おお!名前覚えて頂きありがとうございます!」


笑顔で応えるべく、仮面の笑顔を張った。


「案内、お願いします」


「はいそりゃもちろん」


すると、《五月雨》が耳打ちをしてきた。


「先輩って有名なんですか?」


堂々と言おう。


「知らん!」


私への感謝なのか。まあ、小太り興人さんの媚売りが始まったのだ。



《五月雨》(和灯なお)side


「さぁ、着きました!」


興人さんの声に合わせ、扉が開いた。

中にいた人達の目が一斉にこちらに向く。


「これはこれは!《殺華》様じゃないですか!」


「こんにちわ、夏秋かしゅうさん」


「今日はよろしくお願いしますな?」


「そんな軟に見えますか?それと、こちら新人の―――」


「《五月雨》です。よろしくお願いします」


やはりここでも批判の声が上がった。



「女にできっかよ!」

「かわうぃぃー!!狙っちゃお~」

「誰に慰めてもらうんでちゅか?」


ここが一番酷いんじゃない?


「じゃ、誰か勝負しますか?ハンデでヒールと片手は無しにします」


「ヒュー。イキがっちゃってエ」


「俺がやる。どうせ―――」


「一体誰に慰めてもらうんですか?てか、心折れないでくださいね?」


「大丈夫だわ!お前―――」


「わ!スゴい自信ですね!!どこから湧き上がって来るんでしょうか?」


「お前、人の話聞けよッ!!」


「スタートじゃ!!」


勝手に夏秋と言われる人に言い合いをを破るかのよう始められてしまった。


「うっそ⁉言うなら言って―――」


ビュン


初っ端から先に蹴りを入れられそうになった。


「あっぶな!」


「おしゃべりが過ぎるんだよ!このあまァ!!」


ヒュン


「だから遅いんだって」


そう言って、男の足をつかんで、自分の方に引いた。

すると、男は自分の顔を殴るようで、こぶしを作っていた。

それに気づいた私は、先程まで持っていた足を上げた状態ですぐにしゃがみ、一本の軸、片足を蹴った。


「イッタ!」


そして後ろに回り込み、羽交い絞めをした。


「まだしますか?あ!ここにナイフが!!」


ここにいる奴らは思った。

“もっとましな嘘をつけ‼‼”


「もうやめだ」


夏秋さんが言うと、すぐに空間がピリピリし始めた。


「《殺華》様よ。この《五月雨》という奴は、本当に―――」


「夏秋さん。それは言っちゃだめです」


そう言って、夏秋さんの口を手で覆った。


「すまんのぉ。ちぃと気になったもんじゃからのぉ」


「いえ。それより、強化訓練しますよ」



自分のことを聞かれた際、《殺華》先輩が止めた?

一体何故?



何を隠しているのだろうか。



《殺華》先輩は何を隠して…





―――自分という存在が何かあるのだろうか?自分は何か見落としている?






そんな疑問を持ちながら殺華先輩の後ろを追った。

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