第5話


『昨日、総理大臣の補佐についている“立越郷司たちごえごうし”氏が死亡されているのを確認しました。また立越氏の警備担当者、関係者を含め計21名が死亡されているの発見したという事です。また数日前のファマナ会社事件と関連があるとみて警察は捜査しています』



俺の殺し方を変えないといけないな。

だが、この殺し方は《死見音》に教えてもらった殺し方だから手放しにくい。

残しておきたい。これだけは…



コンコンコン


「ハーイ。今行きます」


ガチャ


「いったい何の用―――⁉⁉」


そう言って扉を開けて目に映る相手を疑った。


「陽友都!来たぜ!」


「兄ちゃん⁉⁉」



兄ちゃんは『殺し屋』をやっているのを知っている。

まあさすがに兄ちゃんの政治家を使ったんだから当然な訳なんですけど…


兄ちゃんは知らない。両親を殺したのは誰か。


『俺は感謝しているんだ!あの両親を殺してくれたことに。だから犯人を探して礼を言いたいんだ』


そんなことを言っていた。

でも俺はこの目に見えた。


“父さんを殺した奴見つけて殺してやる‼”


そう言っている気がして、自分が殺したとは到底言えなかった。

それは今も同じだ。

そして大人になった今理解した。


兄ちゃんは父さんを尊敬していた。

だが、父さんの慰謝料も入ることによって感謝も生まれたが、同時に尊敬していた父を殺されたことに復讐心も生まれた。


だから、殺したいという気持ちが生まれたんだろう。



俺はまず兄ちゃんからの情報をもらうため、兄ちゃんへの説得が必要だった。


“俺は親父を殺した奴を殺す。だから『殺し屋』になる!兄ちゃん、そっちの世界の情報任せたからね?”


そう伝えると、輝いた眼で


『ありがとう!本当は憎んでいたんだ…父さんを殺した奴のこと…』


そして今の繋がりがある。



「しっかしまあ、よくこんな場所住んでんなあ?」


「うん。ここがちょうど良かったから」


「殺しでか?」


「そうだよ。それ以外何にもないよ」


「今日はところでどうしたの?もしかしてまた殺ったほうがいいの?」


「うん出来たらな。けど今回はそこまでだ。別にやんなくてもいい」


「兄ちゃんと姉ちゃんの力になりたいの!こんな力しか使えないから…」


「ハハッ。そんなこと言ってもらえて兄ちゃんうれしいぞ」


そう言って、俺の頭をかき乱してきた。


「で、相手は誰なの?」


「お前さ、この前大臣の補佐の人、殺したか?」


「わからない。殺した人把握できないし」


「なんだかお前らしいな」


兄ちゃんはなんでも笑ってくれる。

そんな兄ちゃんが大好きだ。勿論、姉ちゃんも。



『時には強い。だが、それが仇となる。関係性を見直せ』


初めて《死見音しみね》に冷たい言葉を放たれた時がこの時だった。


『安易に血縁者と会うな。それで足跡がついたらどうする?

お前はどんな責任が取れる?孤独だと思うならそう思うな。

それでも思うならここから去って違う道を見ればいい。

お前はそれだけの力しかないと言っているものだから』



「…兄ちゃん。今後やり取りが減るかもしれない」


「しょうがないじゃないか。お前は頑張ってる」


「うん。兄ちゃんと姉ちゃんが一番の理解者だ!ありがとう!」


「いいぜ。大丈夫だ」


そう言って帰る準備を始めた。


「兄ちゃん、また会えた時ね!バイバイ」


「ああ。また今度な」


そして耳打ちをしてきた。


「そりゃもちろん!」





“生きろ”





兄ちゃんに言われた言葉。まあ、軽いお守りとしてもらっておこう。

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