第4話

五月雨さみだれ》(和灯なお) side


本名、亘理わたり和灯なお

母が殺し屋と名乗る奴に殺された。ただただ復讐のため、殺し屋になった始末だ。

私は数日前、“皐月未”という殺し屋の組織に入った。


冷刹れいせつ様を顔もしっかり見ないまま実感した。


“経験の差”

扉を開けて入っただけなのに…

これはこれは絶対に埋まることの無い差だ。

だがあまりにも差が大きすぎる。

なんだ?私の体がこれ以上行こうとすると頭の中で警報が鳴る。


“私は中途半端な感情で殺し屋になったのかもしれない”


そう改めて思った。

そんな考えを振り払うよう首を振り、深呼吸をし、落ち着かせた。


そして冷刹様の顔を見ることなく記憶が途切れている。



結局、冷刹様に会えずに集会に参加した。


《殺華》さん、私の指導者になった人だ。

一般人と変わらない雰囲気とか貧弱さがあったから


“この人なんかに人を殺せるのか?”


と思ったほどだ。



だが、今日の仕事殺しをする前雰囲気が変わった。

―――この変わりよう何なの?気色悪い…


今日の相手は総理大臣の補佐役についている“立越たちごえ郷司ごうし”という人らしい。なんか聞く限りやらかしたらしい。

誰が何やらかしたかなんていちいち覚えられない。

まあただ、忘れただけなんだけど……


「ほんとに今回は見てるだけでいいんだな?」


「ええ。最初はあなたの殺り方見て学びたいですし」


「んじゃあ、しっかりそこで見とけ」


そう言って約20人いた人たちを殺していく。

―――近距離戦?遠距離か中距離じゃないの?しかも必ず最後に首を狙う。に…?


あ!この間のファマナ会社の死も…⁉

ひょろそうに見えてやることは大胆、か。


「ふうっ」


「お疲れ様です。近距離派なんですか?」


「ん?今回はこっちの方が良かったから近距離戦なだけだぞ?足取り、変だったろう?」


「え?」


「え?」


なんか当然のように『変だったろ?』って言われても。結局、余裕でに殺してるんだし。軽く自己嫌悪に陥りそう…


「お前は中距離戦が得意か?」


「え、あ。はいそうです。けど、近距離のほうが好きなんですよ」


・・・ ・・・ ・・・


な・ん・で・こ・ん・な・に・は・な・し・が続かないのぉぉぉ!!!


何か言って下さいよ!!



そして。《殺華》さんの準備が終わり、この場から去ろうとした時、


「ごめんな。全然良い所とか見せれなかった気がする。あ、あと。話も盛り上げられなくて悪かったな」


そう言って私の頭をポンポンとしたいのか。

下手くそながらもやられた。


―――なんだ?この動悸の速さは?まさか、何か伝えようと⁉


「なんか“皐月未さつきみ”なりの暗号ですか?」 


「はぁ?ちげーよ。俺が勝手にやったんだ」


夕日に染められたのか、顔が赤くなっている。

そして、それを隠すかのようにそっぽを向いた。


「ちょ、《殺華》さん?無視しないでください」


「無視なんかしてねーよ」


んん?ますます不思議な人だ。

そう思いながら《殺華》さんの隣を歩いた。


「《殺華》さん」


「先輩で良い」


「はい?」


「だから、先輩で良い。さん付けだとなんか拒絶感を感じる」


咳ばらいをし、言い直した。


「《殺華》先輩、いつか並べるよう努力します」


「ああ。そこまで来れるといいがな」



最後の最後で先輩との会話が盛り上がった。

―――楽しかった。




久しぶりにそう思って目を閉じた。

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