第3話

今日はアイツが言っていた集合の日だ。



昔と変わらない。俺が連れてこられた場所だ。


未だに慣れないんだよな。この空間。

ざわざわした空間が静かになるのは《じゅん》さんが来た証拠だ。


「今から始めるぞ~」


《尋》さんは殺しに関係する名前が入ってない人だ。何か関係があるのか、気になるが聞くことはない。皆他人に情報を流すのを嫌うからだ。


「何人かは聞いてるかもしんないが、新しく入る奴がいる。まあ、俺の隣を見ればわかるだろうが…」


「《五月雨さみだれ》です。歳は19です。よろしくお願いします」


集まって居た奴らが騒ぎ出した。


「オォイ、オォイ?女に務まんのかよ?」

「かわいいわ~。お前狙えば?」

「すました顔してやがんな~」


結構ひどいな。俺の時より…ましか。

俺は口を開けた。


「試験が物語るんだろう?そうしたら、試験の点数と何回受けたか聞いてみたらどうだ?」


「え?試験って…一回だけなんじゃ?」


彼女はまるで何も知らなかったかのよう呟いた。


「ってことは彼女は一回しか受けてない…ちなみに点数は何点は?」


彼女 《五月雨》に問いかけた。


「百点って帰ってきましたけど…?」


「「嘘だろ⁉《殺華さつか》さんに続いてかよ⁉」」


皆が驚きを隠せていなかった。


「いやけど考えろよ?《殺華》さんは14歳で百点だ。こいつは19だ」


「…それより《五月雨》の指導者がだれになるかが問題だろ?な、《尋》さん」


「俺のセリフを毎回毎回…俺立つだけでいいんじゃないのか?」


アハハ・・・アハハ・・・ハハ・・・・・・


「どんな人がいい!とか同性がいい!とか希望はあるか?」


尋さんは最初俺にも聞いてくれた。その理由を聞いたら面白かったなあ。


「強い人」


「なんて言った?」


「強い人がいいです。性別なんか関係なく!」



「どうして強い人にこだわるんだ?」


気になることを聞いた。


「女だからです。女は何も出来ない訳ではありません。それを証明するんです」


そういう事か。…誰かに何か言われたのか?


「あのすいません。《殺華》さんという人がすごいんですよね?話の限り」


「ん~。すごいんだけどね」


目配りしないでくれ。尋さん。


「あなたが《殺華》さんですか?」


ほら~。尋さんの目配りに気づいたんだろうに。面倒事押し付けないでくださいよ。


「ああそうだ。けど、俺は指導できないぞ?教えんの下手だしな」


「それでもいいです」


「君の成長に繋がらない」


「私は見て吸収します」


このやり取りを見ていて周りの奴らは思った。

“頑固者同士なかなか折れねーな⁉⁉”


結局この二人のやり取りは10分程度続いていた。


そして折れたのが、彼女ではなく、俺だったのだ。


「その代わり、教えるのは下手でも何も言うんじゃねーぞ?」


「それは勿論」


まだ不満がある俺は何度も聞き直した。


「お、《殺華》が折れたんだな~?」


「尋さんが目配りさせるから!」


「わりーな。昔と同じ手ェ使ったわ」


それは―――――



* * *


「なんであーゆー質問したんですか?」



「ああ、あれは俺自身が指導者候補から外れる方法なんだよ」


「意味が分かりません」


「相手に質問することで、まず辺の人を探すだろう?そしたら、約9割は俺以外を指名するんだよ」


「じゃあ俺はまんまと引っかかった訳ですね」


「ま、ガキンちょらのご機嫌取りは面倒臭いんでね」


* * *


という、14歳にして大人の悪知恵を知った時だった。


「あ、今からでも変えるか?指導者。《尋》さん強ェし、教えんのうまいぞ?」


「大丈夫です。あなたのほうが面白そうです」


「うんぐふふっ!!」


尋さんが笑ったのだ。


「《尋》さん…俺って珍獣ですか?」


「ある意味珍獣で良いかも知んないな…ンぐふっ」


尋さん笑いすぎ…俺何処にでもいそうな奴だと思うけどな。



そして“皐月未”の集会が終わった。


「お前、どうせアイツ―――古刹から聞いてただろ?彼女の点数とか。あ、あと一つ。《殺華》冷刹れいせつ様が―――」


今いる場所の下に行くのか…

――あそこジメジメしてるんだよな。


目の前に片目に傷を持った男―――冷刹様が現れた。


「お久しぶりです、冷刹様」


「久しいな。陽友都ひゆと


「冷刹様、その名は――」

「そうだったな、《殺華》」

「ありがたく存じます」

「新しく入った奴だが誰の指導下に着いたんだ?」


乾いた笑いを出し、答えた。


「大変申し上げにくいですが私が指導者になりました」

「殺華がか、」

「俺なんかにできないんですけどね」


「大丈夫だ。儂の前で倒れなかった。それ以上に今もこうやって話せているんだしな。いつか敬語も崩せるといいんだがなぁ」


「無理ですよ。俺はあんたが仲間にしてくれた時、感じてしまったんだですから」


「まあ、良い事なのか、悪い事なのか。だが、《殺華》ぐらいだな。そこまで崩して話してくれるのは」


「ありがたいです、またお呼びください」




そして、今日の集会を忘れるよう目を閉じた。願望を乗せて、


――あの女も忘れたい。


と。

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