第11話 神々の痴態

 1人のバカがいた。

 そのバカはいつもへらへらしていた。

 呪われた神々に目を付けられたバカは、ありえないあらゆる種類の強さを身に着けた。

 神々はバカに神々の遊びを手向けた。

 沢山の人が死に、そしてそのバカは英雄となり箱舟を動かし次の世界へと旅立った。


 次の世界でもやはりバカは生まれた。

 バカはなぜか弱かった。

 呪いにかかってバカは強くなった。

 沢山の人々を見返した。

 神々はそれを見て懐かしさを感じて神々の遊びを提案した。

 そして大勢の人の命と生命の命が死に絶えた。

 バカは箱舟を操って次の世界へと旅立った。


 次の世界でも次の世界でもそれが数千回いや数万回繰り返された。

 バカは英雄となり死んでいった。

 英雄だけが増え続けた。

 箱舟には図書館がある。そこに英雄達の記録が残された。 

 人々は彼等を英雄だと拝んだ。

 それはこの世界を滅ぼしたバカ達だった。

 

 異変は突然起きた。

 今の世界の1つ前の世界だった。

 そこにバカは生まれなかった。

 皆強かった。

 バカがいないので神様は面白くなかった。

 だからバカを作る事にした。

 バカは女性だった。

 その名前はレイファ。

 

 レイファと名付けられたバカはバカじゃなかった。

 神様が間違って今の時代の世界に作ってしまった。

 そのレイファという名前のバカモドキは人間ではなかった。

 それは神が作りしバカ姫だった。 

 バカ姫は人間とは異なる。 

 あらゆる強さを秘めている。

 

 だが誤算が起きた。

 今の時代の世界の前の世界は滅びる事なく、今の時代の世界と融合した。

 さらに今の時代には相変わらずバカがいた。

 まさかのバカとバカ姫とのコラボ。

 さらに最悪なのはバカはバカ姫と付き合いだした。

 なんの因果か、2人は恋に落ちた。

 バカとバカ姫はどうなってしまうのか、神々はさらに目を向けた。

 バカはスライムすら倒せない、今までで超絶バカだった。

 神々は喜んだ。


 神々はあらゆる手を使って運命の糸を引いて、バカ姫に呪いの本を持たせた。

 バカ姫は呪いを無事バカに届けてくれた。

 だがそこでも誤算が起きた。

 バカは今までのバカより超絶強すぎた。

 このままではいけないと思い神々は考えた。

 まぁ結局神々の遊びを発動させる訳だ。


 そして神々はこちらを覗くスパイを見た。

 神学者ネフェトリーを、最後の最後でこちらの手を見ていた。

 

「これが最後の情報よ、ちゃんと聞くのよ2人とも、一応他の英雄達は理解してるわ」


「あ、ああ、でも俺がバカか、なんかその例えひどくないか」

「わ、私にいたってはバカ姫だぞ、恥ずかしすぎるぞ」


「神々の意識を見た時、彼等はこうしかけてくる」


====神々の遊びを始めまーす、この人物レイファを見つけ出し殺害してください。倒した人はレベル1億になります====


「まぁ、神だから先に手はうつでしょうね」


 神学者ネフェトリーは食後のデザートが来てない子供のように呟いた。


「ちょえええええええ」

「私もついにモテキが来たようだな」


「レイファちゃんんん、なにその落ち着きよう」

「安心しろ私は、お主がぱーちくぴーちくやってる間にレベル30になったぞ」

「それすごい事なんだけど、なぜか今の俺は喜ぶ事ができねえええええ」

「何事も初心に帰るのが大事だぞフレンダイサー」


 そこに苦行のランラと神秘のメアがやってきた。貴族が数名いたはずだが、今は1人の男性しかいなかった。

 冒険者ギルドのメンバーは全員いなくなっているし、八咫烏のメンバーはとっくに逃げたようだ。


 足元でこちらを伺っている幼いドラゴンのペラーを見た。

 こいつは元々貴族達の若君と呼ばれる人の所有になるはずだったのだろう。

 そう考えると申し訳ない事をしなぁと思いつつも。


「いや、もうそのドラゴンは諦める。わたし達は一度街に帰還する。そこで若君の指示を待つ事にした。なにより無事なのはわたしたちの街と村だけのようだ。他の街や村や国はほぼ崩壊しているだろう、お前達のありえなさすぎる戦闘でな、死者も相当でたようだしな、しばらくは復興で忙しくなるだろうがな」


 ランラがこちらをまっすぐに見て告げた。


「まぁ、そなたが良ければ、お前の女になりたいが、まぁそこの女性には殺されたくないのでな」


 ランラはにかりと笑い。


「若君に一度会いにくるといい、君なら歓迎してくれるだろう、問題はそこのお嬢さんだが、大勢の人間から狙われる事を覚悟したほうがいいぞ、レベル1億はとても魅力的だからな」


 そう告げたのはメアであった。

 

 1人の男性がこちらに近づき会釈してきた。


「先程までの無礼は詫びよう、若様もお主なら気に入るはずだ。君を鑑定してもレベルが????としか表示されない、恐ろしくて聞けないがね、君のおかげで助かった命もあろう、それを見る事にしたほうがいいぞ」


「ああ、そうする」


「俺様はアルフレッドだ。よろしくな」

「ああ、アルフレッドよろしく」


 そう言いながら3名の貴族達は馬に跨って村のような街に帰還していった。

 

「ではこのネフェトリーはワールドボックスの中で魂のケージを回復させてもらおう」


「そうしてくれ、色々とありがとな」

「気にするな、このネフェトリーもバカの一人だからさ」


「ちがいねぇ」


 神学者ネフェトリーはワールドボックスの中に消えていった。

 さっきから何度も落としているのだが、ひょこひょこついてくる呪いの本。

 あの本はずっと俺を追いかけてきている。


 必要な時に拾えばいいかなーぐらいにしか思っていない。

 その時になれば光り輝くし、他の人間には認知出来ないようだしな。


「さて、家に帰りたい所だが、帰る場所がないのだよね」


 レイファが腕組みしていると俺はふっと笑って見せた。


「それなら大丈夫だ。あそこは箱舟だろ、居住区ぐらいあるさ」


「場所が分かるの?」


「俺は元バカ3000人以上と繋がってるんだぜ?」


「ふふふ、でかしたぞ、我が夫よ」


「まだプロポーズしてませんが」


「まったくいいコンビだよあんたらは」


「そうだ。こいつがペラーだ。あっちがレイファだ」


 レイファはペラーの全身を見てうんうんと頷き。


「非常食も大切だね」

「おいこら、誰が非常食だ」


「あら、口答えするの、トカゲ料理はおいしいそうよ」

「あーいえ、お姉さま、どうか命だけは」


「よろしい、あなたは下僕2号よ」

「へぇ、1号だれなの?」


 俺の問いかけに、レイファはふひひと笑うだけだった。


「あんたよ」


 冷たく脳みそに響いたものだ。


 俺の右肩が居心地悪くなったようで、俺の髪の毛の上にどっしりと座るペラー。

 レイファはこちらに左腕を組んで歩いている。

 

「そんなに寂しかったのか」

「いやーこうしてれば攻撃されないっしょ」

 

 なるほどなーと思いつつ。

 村のような街に帰還する事になった。

 大勢の人々がパニックになっていたが、何者かが巨大魔王とその眷属魔王、巨大竜王とその眷属竜王をぶちのめしてくれたおかげで、お祭りモードになっていた。


 大勢の人間をぬっていくと、皆お祭りモードでレイファの存在に気付かなった。

 その為、無事に冒険者ギルドに到着した。


 中に入ると大勢の冒険者がテーブルに座ってぶるぶると震えていた。

 頭の中に耐久を減らしてレベルを上げますかという警告メッセージが流れる中、全て拒否した。


 これ以上レベルがあがるのは確かに嬉しい事なのだが。

 あまり冒険者ギルドの耐久を減らしすぎて、冒険者ギルドそのものが消滅されても困る。


「あ、フレンダイサー様、よくご無事であなたの活躍は聞いております、てか見てました」

「この前の受付嬢さんですね」

「ギルドマスターの老師がお待ちしております」

「今会いに行きます」

「それとフレンダイサー様は特例としてS級冒険者に認定されました」

「ありがとうね」

「ではこちらへどうぞ」


 その場がざわつき始める。


「やっぱあれフレンダイサーか」

「ああ、巨大魔王と巨大竜王を倒して3000人以上の名のある英雄を眷属にしたって話だろ」

「あれウソじゃねーか」

「でも実際鑑定しても????だろ? ありえねーぞ」


「八咫烏も壊滅したそうじゃねーか」

「ああ、それ聞いた」

「団長と副団長2名がいなくなって、ほぼ壊滅だってさ、冒険者ギルドは逃げてきたって」

「誰がやったんだよ」

「壊滅させたのもフレンダイサーだって、あいつほぼ1人でやったってさ、謎のパーティーメンバーも奴の眷属の英雄だって」

「なぁ、俺これからフレンダイサー応援するよ」


「それと隣にいるレイファを殺せば1億レベル上がるってさ神々の遊びで」

「その代わり俺達はフレンダイサーに殺害されるよ」


「そ、それもそうだよな」

「これからフレンダイサー様の為ってがんばろうかな」


 そんな発言をしり目に、そのギルドマスターの部屋の扉をゆっくりとノックした。


「ぜひ入ってくれた前、ふぉふぉふぉ」


 俺とレイファは頷きあって、中に入った。そこにはギルドマスター老師の隣に金髪優男がにやりとほくそ笑んでいたのだ。


 即座に鑑定すると【チェロロス:最高貴族(通称若様)】


 この時になってようやく苦行のランラと神秘のメアとアルフレッドが大事にする若様が眼の前にいる事を悟った。




 


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