第10話 超絶レベルアップ

「あたってえええええ、くだけろおおおおおおお」


【おめでとうございます。レベルが3615になりました。竜王ハゲスの耐久が999/1000になります】

【おめでとうございます。レベルが3616になりました。竜王ハゲスの耐久が998/1000になります】


「これでもくらええええええええ、うらあああああああ」


 竜王ハゲスを殴って殴りまくる、一発の拳だけで竜王ハゲスがボールのように吹き飛び、平原が荒野が山が吹き飛んでいく。


 それはもはや天災そのものであった。


【おめでとうございます。レベルが3617になりました。竜王ハゲスの耐久が997/1000になります】

【おめでとうございます。レベルが3618になりました。竜王ハゲスの耐久が996/1000になります】


「こんちきしょうううう、HPがへってねえええええええ」


 魔王バブバブはこちらを見て戸惑っている。

 それもそうだろう、たかが人間がその遥かに巨大な竜王を振り回しているのだから。

 そして竜王と魔王のHPが高すぎて倒せないという最悪な結末。


「そんなのは覆すのみだぜえええええ、のりにのってきたぜえええええ」

 

 もう俺の頭は可笑しくなってきた。

 リズミカルな歩調で歩き、そのまま拳をおみまいする。

 それは、ほぼ【おめでとうございます。スキル【ふざける】を覚えました】


「神がふざけてんだろおおおおおお」


 そう言いながらふざけている俺。


「あ、あいつなんで踊りながら戦ってるんだ」

「く、くるったのか」

「ち、違う、あれは誰も知らない拳法よ」

「いや主君はふざけてるだけだ」


 貴族とか冒険者とか八咫烏のメンバーがそれぞれ憶測を述べているのに、それをぶち壊したのが英雄王カルサスであった。

 ちなみに彼等は遥か遠くの山の上からこちらを伺っている。

 ここまでのレベルになると五感は化け物クラスまであるのが実状だ。


「よーし、もっと乗りに乗るぜ」


 ふざけながら高速で500連発の拳をお見舞いした。

 

【おめでとうございます。レベルが3618→4118になりました。竜王ハゲスの耐久が496/1000になりました】


「ふ、不思議だな、攻撃すればするほど強くなり、ふざければふざける程強くなる。

【おめでとうございます。スキル【ふざけるレベル2】になりました】

【おめでとうございます。スキル【ふざけるレベル100】になりました】

【おめでとうございます。スキル【ふざけるレベル∞】カンストを迎えました】


「てか、2からどうやって100になったんねん」


 俺の一人突っ込みは誰も見てくれていなかった。

 1人しょぼんとしていると、竜王ハゲスが立ち上がろうとしている。

 その巨大な体が地面に立つだけで、地震が来るほどだ。


「ちなみに、俺が振り回して地面に叩き付けるだけでとんでもない地震が起きてますがな、なんでやねん」


 またむなしく1人突っ込みをしてしまった。

 本当にふざけるレベルカンストしてんのかよと突っ込みたくなるがそれを抑える。


「ふーお兄さん元気出ちゃう、ハゲスを攻撃すればするほど元気でちゃう、サディストかしらじゃいっきまーす」


 その時だ。どの世界にも王という存在はいる。

 魔王の中の王様が魔王バブバブであり、竜王の中の王様が竜王ハゲスである。


「どんなところにも王はいるものだな、だがパパよそなたは感じたのではなかろうか」


 さっきから無言を貫いていた灰色の幼いドラゴンのペラーが口を開いた。


「パパ、あなたは、もう、あなたは、竜王としての……」


 俺はペラーが何を言いたいのか理解できなかった。

 しかし魔王バブバブと竜王ハゲスは一言も言葉を発していなかった。

 突然本の神様に生き返らせられたうえ、驚き戦争がはじまったものだからぐれたものだと思っていた。


「ひいいい、ひいいいいいい、ば、ばけものおおおおおおお」


 それは大きな猛獣が叫んだ声そのものだった。

 竜王ハゲスは彼の体よりはるかに小さい俺に向かって、あまつさえ化け物といったのだ。


「ほう、どうやら殺されたいようだな、ま殺すけど、ま、殺すけどね」

「うあああああああ、もうこんな世界いやだああああおわっちまええええ【ザ・エンド】」


「まじか、パパ、あなたはこの惑星を吹き飛ばすつもりか」


【それはやっちゃいけないっしょおおおおおと神様は呟いております】


「全部神様のせいだから、そこ忘れずに」


【神様はげんなりとして反省しています】


「でザ・エンドってなんや」


「自らの命を犠牲にして100個の隕石を落とす魔法です」

「ふむ、それを全部落とせばいいんだな、確かに竜王ハゲスが蒸発してったな、パパに挨拶しなくていいのか、ペラー」


「いや、いいんですよ、どうせ腰抜けですし」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッゴゴオッゴゴゴゴゴゴゴ


 その音は遥か空から聞こえてきた。

 雲より真上、そして宇宙と呼ばれる所から、ぐつぐつと燃え盛る巨大な岩の塊、隕石が100個落下してくる。


「ちょっくら行ってくるわ」


 俺はペラーを地面に置いた。


「死ぬなよ」


「もちろんだぜ」


 地面を蹴り上げた。

 体が持ち上がり、猛スピードで空を駆け回る。

 まるでジグザグの雷撃のように飛び回る。

 隕石1個で耐久が500/500ある事が判明する。


「一発の拳に500拳を込める、いざ【ザ・フィフ】」


 その拳には500回分の攻撃が含まれる。

 空中をジグザクに動き回り、隕石を片端から粉々にしていく。

 その数100個。


 地上にいる人々は突如出現した隕石に呆気にとられただろう。

 だがそこに小さな小さな米粒ような俺が飛来し、片端から爆散させている事を知らない。


 知っているのはきっと灰色の幼いドラゴンのペラーだけだろう。

 あとは眷族と近くにいた貴族と冒険者と八咫烏のメンバーだろう。


 気づいたとき、俺は地面に立っていた。

 全身からもうもうと煙をあげている。

 右手と左手は真っ赤にぐつぐつに燃え滾っていた。

 瞳は青く燃え上がり、メラメラと魔王バブバブをにらんでいる。


 もはやどこからどう見ても神様そのものになってしまった俺は、意識が遠くなりそうになりながら、自分の仕事を全うするのみ。


【おめでとうございます。レベルが53618になります。隕石100個の耐久が0になりましたので消滅します】


【おめでとうございます。神化に成功しました】


 まったく神様なのに神化についての情報さえくれない。

 まぁそんな所に意識をもっていくほど俺も馬鹿じゃない。


 地面を蹴り上げる。


「はぁあああああああ」


 一発の拳で魔王バブバブの腹に穴が開くのではないかというくらいの衝撃を与える。


【おめでとうございます。レベルが53818になります。魔王バブバブの耐久が200減りましたので残り1800です】


「うらああああああああ」


 ただの蹴り、驚異的な足のスピードで魔王バブバブの体を駆け上がる。

 そうそれはただの蹴りを顎に命中させる。

 魔王バブバブは体が浮き上がる程吹き飛ぶ。


【おめでとうございます。レベルが54018になります。魔王バブバブの耐久が200減りましたので残り1600です】


「ふぅうううう、はあああああああ」


 次はかかと落としを魔王バブバブの頭に食らわせる。

 魔王バブバブの体が地面にめり込む。


【おめでとうございます。レベル54218になります。魔王バブバブの耐久が200減りましたので残り1400です】


「これで終わりだああああ。【神の鉄槌】」


 右腕と左腕をためてためて、同時に二本の槌のような拳が飛来する。


【おめでとうございます。レベル55618になります。魔王バブバブの耐久が0になりましたので消滅します】


 魔王バブバブは空を見上げてゆっくりと消滅していく。

 その時彼の瞳から迷いはなくなり、にこりとこちらを見ていた気がした。


 2体の化け物クラスの魔王と竜王が消滅したからなのか、その眷族の魔王と竜王達も消滅していく。

 俺の周りに1人また1人と英雄達が集い始める。

 その数は3000人以上。

 彼らはこちらをじっと見ている。


 目が青く燃えているのは自分自身でも気づいている。

 右手と左手がマグマのようにひび割れて燃えているのもしっている。


 もはや俺が普通の人間ではない事は理解している。


【神様はとてもとても楽しませてもらいました。あなたの活躍でこの神である本の神としてこの惑星の生物に告げよう……】


====近いうちに【神々の遊び】が始まる。楽しい楽しい遊びだ。命を散らそう、フハハアッハハハハハハ====


 その時だ俺の体が崩壊を始めようとしていた。

 右足がぼろりとくずれていき、骨そのものになった。

 まるでゾンビの状態になり、次に右腕がぼろぼろと崩れた。


「「「「しゅ、しゅくん」」」」


 大勢の英雄達が集ってくる。

 彼らは俺の死を見ているのだろうか。

 俺は死ぬのか?


 その時だ。

 1人の般若のように燃え盛る顔をした1人の女性がやってくる。

 あれ、あんなやつ眷族にいたっけ。


 それは正真正銘。


「れ、レイファ?」


「あんた何勝手に死のうとしてんのよおおおお、起きたら家崩壊してるしあんた消えてるし、なんか夢だと思ってたの本当だったみたいだし」

「は、はは、てか、だれだよここに連れてきたの」


「わしじゃ」

「伝説の鍛冶屋イルケンティウス?」


「あとわたしもね」

「暗黒魔女メリィー?」


「わしはお前のために最高な武器を作っておった、しかし3000人以上の英雄達がいるならと考え、彼等の情報をてらしあわせ、彼等がもっていたアーティファクトを融合させた。その結果、【神殺し】という武器が出来た。お前は神に呪われている。それも二つの呪だ。神殺しは神の呪をコントロールするものじゃ」


「そして神をも殺せるわよ」


 暗黒魔女メリィーがにやりと笑った。


「お主の危機を心臓で悟ったわしたちはこっちに向かったのじゃが、そこの娘と出会った。包丁握ってお主を探しておったからのう、ちと連れてくの反対したんじゃが、メリィーが面白そうじゃからとな」


「ね、面白かったでしょ」


「さて、はやく握らんか、お主の足が骨だぞ」


「す、すまん」


 俺はドワーフの体をしてエルフの耳を持つ伝説の鍛冶屋イルケンティウスから一本の武器を渡される。

 見たこともない素材で作られた真っ赤な鞘。

 それを握るだけで、体中から毒という毒が抜けていく感じだった。

 呼吸が荒くなり、神の呪という毒が、神の恩恵へと切り替わっていく。


 目をかっと開くと、青い炎はなくなっていく、意識するとまた出現させる事が出来る。


 うまくコントロールする事が出来たようで、俺はほっとしつつ、右足と左脚も失われた肉が復活して元の肉体に戻る。

 

 英雄達が涙を流す。

 俺の体からいろいろなものが抜け出ていく。

 深呼吸を何度も繰り返す。


 英雄達が1人また1人とワールドボックスに戻っていく。

 彼等は大量の魂エネルギーを消費したので、ワールドボックスの世界で休息させる必要がある。無理をすると本当の死の消滅が待っている。


 英雄王カルサスと神姫ニィアと俊足のダガドはこちらをじっと見ている。


「主君、我たちもあちらへ戻る、ちと現世に実体化しすぎたようだ」

「レイファちゃんを楽しませるんだよ」

「ようやく酔いがさめてきたんだがなぁ」


 3名がワールドボックスに入っていくと。

 俺はふうと息を吸い上げて何度も呼吸をしながら小さな石に座った。

 

【耐久を減らしますか?】

「いや減らさなくていい」

【了解です】


「なるほどな、こうやってコントロールする事が出来るわけだな【神殺し】は、ふむ、さて君は戻らないのか?」


 そこには一人の女性がこちらを見ていた。

 英雄達の仲間の一人だ。

 彼女の名前は神学者ネフェトリーで通称ネフェだ。


「はい、主よ、私は神々の遊びなるものを知っています、彼等が何をするかもです」

「ほう、聞かせてくれ、俺はちょっと動けなくてな、レイファも聞いてくれ」

「いいけどさ、私とあなたの愛の巣を作る必要があるわよ」

「それはあとまわしだ」

「ダメよ今すぐよ、あなたわかってるの、このあたり一帯全滅よ、なぜか私たちの村というか街のようなところだけどあそこだけ無事よ」


「それも関係しています。なぜあの村というか街に英雄の魂が集まり、なぜ、無事なのか」

「運がいいからだろ」

「フレンダイサーちょっと黙って、今ネフェちゃんがいい事言おうとしてたから」

「レイファこそ愛の巣だって」

「こんな状況だからじゃないこの世界が滅びそうな感じなんだもの」


「はい、そうです。この世界は何度も滅びてます、そしてあの村のような街が残るのです、なぜならあれが箱舟だからです」


 俺とレイファは凍り付いたのであった。

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