第9話 死者、英雄の大群
巨大な魔王は圧倒的な魔法を地面に炸裂させた。
地割れのごとく地面から山々に貫き巨大な山そのものを蒸発させていた。
神話に出てくるドラゴンのごとき大きさの竜王は咆哮をあげた。
四方の森を吹き飛ばし森という概念をなくした。
彼等の眷属も魔王と竜王である。
魔王の眷属と竜王の眷族の戦争が始まる。
沢山の村は焼かれ、街は破壊された。
人々は一瞬で魔王と竜王の攻撃で蒸発してしまった。
それは人間に限らず、虫、動物、モンスター、魚、数えきれない声明を蒸発させたのだ。
「あ、っはっは、神さまやりすぎじゃね?」
【神としてちとやりすぎましたと反省していますと神さまはおっしゃっています】
もはや地獄絵図のその光景を俺と本の神さまとドラゴンの神様が見ているわけだ。
「ちと本気だすかな」
その時だ、後ろから気配を感じた。
振り返ると、そこにいたのはあの貴族達と神秘のメアと苦行のランラの姉妹、八咫烏の団長であるリンキンパックとその配下達。
あと英雄王カルサス、神姫ニィア、俊足のダカドだった。
「そこの3名、こいつら守ってやってくれ」
「承知であります。主君、あれを使うのですね」
「いやー使うしかないでしょ」
「主君の無事を祈ります」
英雄王カルサスが忠儀を示してくれる中。俺は呼吸を整えて発言した。
それは呪文ではない、それは祝詞ではない、それは魔法ではない、ただ呼んだだけ。
「岩窟ダザリック、怒山ログロン、多重騎士ホガロ、絶望のルックンラック、死神カエチャン、神殺しファイガー、豚神ジェノバ、海風チャチャ、秒速のシカナム、お絵かきのジャバ、人形師ペテペテ、夢幻のオオカミ、絶世のバタコ、獣使いマダム、天才トゥパ、管理人ジョニー、怪物ググツ、殺人鬼リンキン、宴王ムナゴロシ、……」
それは永遠と続いた。
ワールドボックスの世界からこちらに呼び出すとき、適当に呼び出すと、関係ないものまで出てくる事がある。
なので名前を呼ぶことで性格に呼び出すことができるのだが。
ワールドボックスに入っているものは全て記憶する事が出来る。
まるで頭の中にメモ帳がぎっしりと積み込まれている感じなのだ。
最後の一人まで言いきる総勢3000人を超える英雄たち。
このスキルの名前は。
「幽霊軍団だ」
俺の背後には3000人の英雄が付き従っている。
彼等は1人で最強とされる。国、いや世界そのものを脅かした人達だ。
そしてなぜか彼等はこの村と街周辺に集まっていた。
自分が住んでいる場所が村なのか街なのか正確には理解していない。
時々で、村だと言ったり、街だと言ってしまう自分がいた。
いつかこの当たりで何があったら英雄達の幽霊が集まるのか知りたいものだ。
そんな事を適当に考えていた。
「では、みなさん、魔王と竜王を皆殺しにしてやってください」
【【【御意】】】
「それと心の底からうずうずするんです。そういえばドラゴン呪いもありましたね」
そう呟いた時には、3000人を超える英雄達は地面を蹴っていた。
そこに残されたのはびくびくと正気を失いそうだけど冷静さを務める冒険者と八咫烏のメンバーと貴族の人達がいた。
「お、おれは夢を見ているのか」
「だ、団長冷静になでごんす」
「ここにいるあいつが化け物なんでやんす」
「こ、これは一大事だぞ、もはやあいつ国レベルの冒険者だぞ」
「アルフレッド、もうやめましょう、あの人に逆らうという事は死ですよ」
アルフレッドと呼ばれた貴族は神秘のメアにたしなめられていた。
「まず、おめでとうと言っておこう、ゴッドドラゴンとして誇らしい、巨大な魔王と巨大な竜王が殺したすべての生物がお前を主として使役してもらいにくるぞ」
「まぁそんな所だろうね」
空間そのものがひずみだした。
ここは山の部分ではあるがとても広くて広大だ。
なにより英雄が3000人いても平気なくらい頑丈だ。
その地面ではなく空間そのものが震えていた。
まるで事象の原理を破壊してしまっているような不思議な感じだった。
次の瞬間、そこには突如現れたあらゆる生命体がいた。
「人間、動物、虫、魚、モンスター、ありとあらゆる生命よ、お前等の魔力は俺のものだ、ワールドボックスに入ってくれ、そこには君達の新しい生活がある」
言葉で発する必要なんて無かった。
彼等は既に俺が使役している事になっている。
死霊や幽鬼とは違ったものになっている。
彼らは生命だ。
だが一度死んでいる。
それも圧倒的な力により次の瞬間には蒸発してここに出現しているという現状。
さらに彼等の頭の中には俺の情報が伝えられている。
何をして何をしてはいけないのか、何をすべきかを情報として伝えられる。
俺は彼等に第二の人生を歩んでほしい。
その為のワールドボックスに広がる不思議で平和な世界の住民へと。
「「「「「我らの住む場所へ」」」」」
空間そのものが震え出す。
俺の右手の平に透明な箱が出現する。
その数は数万、いや数える事など不可能だ。
渦を巻くように次から次へと生命であり生命でない彼等はワールドボックスの中にと納まった。
「ワールドボックスに入っている全ての魔力や力は俺の力となる。つまり」
【神様は爆笑しています。あなたはワールドボックスを居住地として使用しています。そんな馬鹿な事をする人がいるとはと、そして居住区にある魔力と力はもちろん持ち主のところにきます。そこまで計算するとは、神様は感激しています。そしてあなたのワールドボックスの住民になった数は2億5千万人です。約ですね、あなたの魔力ははてさてどのくらいでしょうかね、そして力はどのくらいでしょうかねええええと神様は爆笑しております】
「そうだ。今の俺は神を越えてるぞ」
「普通は自分でそうは言わん」
「黙れペラーなにもかもお前が俺に与えた呪いだろう」
「うんうん、使役した虫の大群に追いかけられて泣きべそかくと思ったのにさ」
「魚が空中を泳いでるのは笑ったぞ」
「それは僕も思った」
「じゃあ、英雄王カルサス、神姫ニィア、俊足のダガドこいつらは守ってもらうぞ」
「「「御意」」」
地面を蹴り上げる。
空中に飛び上った俺の右肩には相変わらず生まれたばかりの幼いドラゴンの子供がいる。でも中身はゴッドと呼ばれるゴッドドラゴンである。
空中にはためきながら、右手と左手を構える。
「あっつい塊でもくらっとけ」
「せめて呪文で言おうね」
俺の頭上に小さな塊が出現する。
それがみるみるうちにでかくなり、分裂する。
2つの赤い塊が魔王バブバブと竜王ハゲスに直撃する。
2人の魔王と竜王は巨大な体をゆっくりとよろめかせる。
ちなみに地上では魔王と竜王が手を組み、英雄達と死闘を繰り広げている。
落下しながら俺は考える。
「あいつらなかなかしぶてーな」
「それが普通でしょ」
「ぶちこむか」
体相変わらず地面に向かって落下し続ける。
森がなくなりほぼぐちゃぐちゃの荒野になってしまった着地する。
その衝撃で地面そのものに大きな穴が出来る。
次の瞬間には地面を蹴り上げる。スキル【縮地】ではないが、それと同じくらいのスピードで魔王バブバブの足をつかむ。
それを振り回す。
小さな人間がその数万倍の大きさの魔王バブバブをふりふりする。
あげく地面に叩きつける。
竜王ハゲスがこちらに向かって爪を振り下ろす。
俺は足を曲げ、ばねにしてジャンプする。爪を頭突きで破壊すると、竜王ハゲスが後ろにのけぞる。
体をくるくると回転させそのままの勢いで竜王ハゲスの頭を叩きつける。
竜王ハゲスが地面に叩きつけられる。
もはや地震のようなものが起きている。
今の俺は五感があり得ないことになってる。
山の向こうの住民達がパニックになってる声もわかる。
「あ、あいつ化け物だ。魔王バブバブの足をつかんでばんばんて俺は何か地獄にいるのか」
「信じられねー貴族やってきたけど竜王の爪破壊して地面に叩き付けるって」
そんな励ましの言葉を感じながら。
「よーし、お前らに残念なお知らせがある。HPと耐久は違いまーす」
その場が静まり返る。
「HPが10億あっても、耐久は1000とかあるからね」
それでも静まり返る。
「鑑定した結果、バブバブ君のHPは45億ですねー普通に倒すと倒せませんねーですが耐久は2000です」
それでも誰も理解していないのか聞こえてないのか無言。
「ハゲス君のHPは80億ですねー普通に倒すと無理です。一体なんかいぶん回せばいいのやら、しかーし耐久は1000です、ふっへっへ」
その場がまだ静まり返る。
「ようは俺だけのお前等攻略方法だ。俺は攻撃すると何が何でも耐久さげるんだよ、てことは1000回殴ればハゲス君しょーめーつ」
それでもみんな無言。
「てことで、てめーら消すぞ」
地面を蹴り上げた俺は竜王ハゲス目掛けて突っ込んだ。
そこから古代竜王ハゲスのフルボッコ劇場が始まったのであった。
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