第6話 幽霊軍団の人々
そこはぼろぼろの鍛冶屋であった。
遥か昔伝説の鍛冶屋がいた。
だが彼は後世に技術を提供する前に王族の陰謀に巻き込まれて死んだ。
というのが建前。
真実は。
「わしは当時の王族に嫌われておった。それはのう、王族の為だけに武器を作れと言われた」
その男見た目はドワーフ。
その男耳はエルフ。
ドワーフとエルフのハーフ。
彼の名前は。
「イルケンティウス」
伝説の鍛冶屋イルケンティウスはにやりと笑っていた。
遥か昔の家。それはもう朽ち果てようとしていたのだから。
「じゃが、鍛冶道具無事なようじゃのう」
彼も幽霊軍団のメンバーの一人である。
「それで、お主の最高の武器をつくってやろうではないか」
「とても楽しみだ」
「それで素材は買ってきたのか」
「もちろんだ。素材屋からはなんでそんなにインゴット各種を買うのか疑問がられたがな」
「それが普通だろう、わしがおぬしに作ろうとしているのはそれなりのものじゃて、わしがドワーフの血をひき、エルフの血をひく意味を考えて欲しい」
「だな、イルケンティウスは魔武器を作れるって事だろ」
「その通り、ドワーフの技術とエルフの魔法の融合じゃて」
「それでどのくらいで出来る」
「まぁ1週間程度じゃのう、その間に邪魔が入らんともかぎらん、ここは小さな街の一角じゃからのう」
「なら、奴も出しておこう」
ワールドボックスから出現したのは1人のローブ姿の女性であった。
彼女には眼そのものがなかった。
いや、顔そのものがなく口だけだ。
「暗黒魔女メリィーお前の結界魔法でしばらく守ってくれ」
「それはあんたの願いかい」
「まぁそんなところだ」
暗黒魔女メリィーは大勢の人間的に腐った女性を見つけて拷問して魔法の実験にした大罪人である。しかし彼女は人間的にどうかと思う女性しか手をつけず、子供や素晴らしき女性には一切手をださず、逆に応援するほどだった。
一説にはメリィーは大勢の女性に慕われていたそうだ。
なぜ彼女には顔がないのかというと、子供の頃に母親によって美しすぎる彼女の目と鼻はつぶされたそうだ。
「まったく、くそ爺のおもりとはね」
「メリィーよ嫌なら帰ってもよかろうじゃぞ」
「そうはいきません、フレンダイサー様の力になれるのは生きていて素晴らしい事よ、あら失礼死んでいて素晴らしい事でしたのね」
「かかっかか、メリィーよお主のブラックジョークはおもろいぞい」
2人が笑っているのを見て。
「しばらく俺はここを離れる。色々頼むぞ」
「このくそ爺がお主の為に宇宙最強の武器をつくってくれよう」
「このメリィーここを死守いたしますわ」
俺は自分自身が形成しているワールドボックスの中に入る事にした。
そこは支離滅裂な世界が形成されている。
空に平原があったりとぐちゃぐちゃな世界だ。
そこに巨大な城がある。
あそこが俺の王国のかなめだ。
空を浮遊しながら玉座に座ると、大勢の幽霊の家臣たちが膝をおって忠誠を誓った。
この世界では耐久が減る事は一切ないのだ。
「美神師ラルファトリエいるか」
「これはこれはフレンダイサーじゃないですか、僕の事はラルとお呼びくださいと言っているではないですか」
その人物は頭を天然パーマにしながらのイケメンであった。
彼は遥か昔大勢の人々を幸せにしてきた。
沢山の人間の美容をととのえ、男性は美男子に女性は美女にと。
だがその技術を羨んだある貴族が彼を殺してしまったのだ。
「今の俺の姿を見てどう思う」
「それはそれは美しいとはいえないでしょう、髭もじゃでありながら髪の毛はぼうぼう、体臭はきついですし」
「そこでラル、お前に全てを任せようとおもう」
「そ、それはフレンダイサー様の髪の毛と髭を好きにしていいという事ですか」
「もちろんだ」
「このラル命をかけて格好よくしてみせます」
それから30分かけてラルは俺の髪の毛と髭を整えてくれた。
鏡で俺自身の顔を見せられるのだが。
やはりおかしい、髪の毛と髭をどうのこうのしてもどうにもならない部分が恰好よくなってる。それは上手く表現できないが。
「ラル素晴らしいよ」
「御意でございます」
それから俺は王族でしか使わないような大浴場で体を洗い流した。
何もかも落ち着くと。
「ビックリガエルのトドーが情報を掴んできています」
そう告げたのは1人のメイドのような女性であった。
「神姫ニィアよメイドなどやらせて申し訳ない」
「気にしないでください、このニィアはあなた様のものです」
神姫ニィアは伝説の姫と呼ばれた女性だ。
姫でありながら戦場の最前線で戦い沢山の英雄を葬ってきた。
神姫ニィアの後ろからカエルのような太った男がやってくる。
彼はビックリガエルのトドー、沢山のカエルを使役している。彼の凄いところは底知れない事。
カエルの使役の数は数億を遥かに超える。
よって逃す情報はないとされる伝説の情報屋。
「あなたが住んでいる街に50人の盗賊団が攻め込もうとしています。彼等は女性や子供を捕らえて奴隷として売り払う用意があります。その山賊団の名前は八咫烏です。ランクはAランクですが、主の力では小指でなんとかなります」
「大げさだぞ、俺の小指はそんな使い方はしない」
「これは、失礼いたしました。あなたさまの拳で十分です」
「そうか、レイファに被害が及んだらまずいな、ちょっと山賊団潰してくるわ」
「御意でございます。それと今沢山の国々で戦争が始まろうとしています。主君がいる街も例外ではなく冒険者とそうでないものの徴兵がはじまるでしょう」
「うむ、レイファは強いから徴兵されるかもしれないから、とりあえず国潰しておくか」
「我が君よ、そんな周りくどい事などせずあなた様の妻となられる方をここに招待してはいかがでしょうか」
「いやーレイファは大切だよ、でもね怖いんだよ」
「我が君が怖いですと」
「トドー君にだって苦手な存在はあるだろ? だけど守りたいって思うのもあるだろ?」
「このビックリガエルのトドーは元々カエルが嫌いでした。ですが自分が手名付ける事が出来たのはカエルだけでした」
「そういう事さトドー」
「なるほどです。理解しました。また情報を集めてまいります」
「無理はするなよ、お前は戦闘に対してはからっきしだめだ。護衛の殺人狂リッパーは仕事してるよな」
「はい、あの人は人を殺したいそうですが、主君の言いなりになり殺しは我慢しています」
「それはよかった」
「ここにいないのは、主君を見ると一発やりあいたいからだそうです」
「まったくリッパーは誤解されるぞ」
「それは自分も感じました」
殺人狂リッパーは虐待されて育った。
虐待した人は父親であり騎士団の団長だった。
当時の騎士団の団長は最強とされていた。
しかし殺人狂リッパーのナイフで殺された。
彼はナイフで強者を殺す快感を得た。
その結果数百人のあらゆる騎士団長が殺され、彼は勇者に掴まり処刑された。
俺は意識を外側に向けた。
気づけばワールドボックスの中から出ていた。
「さて、問題は八咫烏という山賊団だな、Aランクか冒険者ギルドに戻るとするか」
独り言を呟きながら、その足を冒険者ギルドに向けた。
冒険者ギルドに入ると、カウンターまで5歩かかり、5レベル上がるのと同時に冒険者ギルドそのものが5の耐久値を減らした。960/1000の耐久値になった冒険者ギルドの建物。
さらに俺のレベルが3606になった。
目の前の受付嬢に事情を説明する。
なぜか受付嬢は何度もこちらをちらりちらりと見ているし。
他の冒険者の女性達もこちらをちらりちらりと見ている。
おそらく身だしなみを整えたらイケメンだったという奴だろう。
まぁあいつが髪の毛と髭を整えてくれたおかげでもあるんだろうが。
老齢のギルドマスターがやってきた。
「ほう、いい男になったではないか、匂いも嗅いだことのないものじゃのう」
「八咫烏について知ってますか」
「ふむ、その名を聞くとは」
「山賊団である事はわかるのですが、50人構成でAランク冒険者に匹敵するみたいですね」
「うむ、1つお主は忘れている事があるのう、お主の冒険者ランクじゃ、お主Dじゃぞ」
「あ」
「よってお主は単独で八咫烏討伐には参加できん」
「なるほど、そういう決まりが」
「じゃが、他の冒険者と組んで討伐するのは問題ないのじゃ」
「なるほど」
「お主が八咫烏について尋ねてきたときはあいつらも終わったと思ったが、色々と規則があるのじゃよ、安心性お主は魔石を換金したのもあって今Cランクじゃからのう」
「それは喜んでいいのでしょうか」
「ふぁふぁふぁ、後ろにいる20人構成のptが八咫烏討伐に30分後出発する。登録するかのう」
「ぜひお願いします」
俺は八咫烏山賊討伐に登録すると、ちょうどその時ptの人達が出発を始めた。
俺は冒険者ギルドを出ようとするのだが、レベルが3611になり、冒険者ギルドの耐久が955/1000になった。きっといつか突然冒険者ギルドが消滅するのも時間の問題だと感じていた。
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