第5話 とりあえず帰還します
地平線から太陽が昇ってきたとき、俺は平原でモンスター無双していた。
まずダンジョン世界と呼ばれる場所に行くのは問題ない、近くにあるからだ。
問題は武器と鎧が無い事、あと金がない事。
冒険者ギルドでは魔石を売り飛ばす事が出来る。
俺は考えた。どうやってお金を稼ごうかと、というか俺は文明社会で生きていけるのかと、文明社会で生きた場合もちろん建物の中に行かねばならず、そこでは耐久が減り続け俺はレベルが上がり続けるという現実。
要は文明社会で生きていくと建物や物が次から次へと消滅していくし、呪いをかけてきた本の神様の気まぐれで、減り具合が変わるという恐ろしい現実もある。
とりあえず俺はモンスターを狩りまくって魔石を集める事に集中する。
平原にはスライムやゴブリンが沢山住み着いている。
あと武器を使うと耐久が0になるので、とりあえず拳と足で暴れています。
【ゴブリンが現れました。ゴブリンを討伐しました。おめでとうございます。レベルが73になりました】
【ゴブリンが現れました。ゴブリンを討伐しました。おめでとうございます。レベルが74になりました】
俺にかけられた呪いはモンスターを一撃で葬り去る事が出来るみたいだ。それプラスレベルが1上がるようだ。
だがふと気づいた。倒しているのは呪いのせいではなく自分自身の力のせいではと、レベルがあがるのは相手の体力つまり耐久が減ってるからレベルがあがるのではと。
「これはもっと強いモンスターと戦わねばな」
それから無我夢中でゴブリンを殺しつくした。スライムも殺しつくした。
平原には無限にモンスターが出現し続けた。
こちらを見ている冒険者達はちょっと引いていた。
どのくらいだろう、敵を倒し続けた。
雑魚モンスターだからとゴブリンとスライムをバカにはしなかった。
1週間だろうか、それくらいの日数をひたすら平原で過ごした。
ちなみに休憩はとっていない、ぶっ続けで動き続けた。
太陽が昇り、太陽が沈む。それを毎回繰り返した。
不思議とお腹は減らなかった。
おそらくレベルが上がる事で空腹がリセットされ満腹になってるみたいだ。
どうやら俺はレベル飯ってやつにはまってるみたいだ。
衣服はぼろぼろで、雨でぐちゃぐちゃになろうとも髭もじゃで髪の毛がもじゃもじゃになろうとも、ひたすらゴブリンとスライムを葬り去る。
1ヵ月が経過していた。
そろそろレイファが俺の事心配してないだろうか、ようやく人間らしい思考になったとき、狩りをやめた。
ゆっくりと足を冒険者ギルドに向けた。
街の中で大勢の冒険者が通りすがる人がこちらを見た。
その誰もが鼻をつまみ、俺の悪臭がひどいようだ。
「なぜ、俺はこうも無我夢中に」
気持ちよかったのだ。レベル2の時スライムを倒す事さえ出来なかった。
なのに今ではモンスターを一撃で葬り去る事が出来る。
それは快感そのものであった。それは快楽殺人鬼が目覚める瞬間であった。
それは新しいおもちゃを与えられた子供だった。それは壊れてしまったおもちゃだった。
冒険者ギルドの扉を開いた時、そこには大勢の冒険者達がいた。
彼等はこちらを見てげらげら笑っている。
【おめでとうございます。レベルが????になりました。冒険者ギルドの耐久が970/1000になりました】
相変わらず神様の呪いは健在らしい。
カウンターに辿り着くと、受付嬢がこちらを見ていた。
「げ、きたねーぞ、山男がきたな」
「どこのだれだよ、ばかみてーだぜ」
「そういえば、フレンダイサーは見ねーな、死んだんだろ」
「あいつは危険だからな、おい山男、どっからきた」
俺は彼等を睨みつけた。
そしてちょっと深呼吸するだけで、その場の全員が凍り付いた。
それはとてつもない殺気だったからだ。
「う、うごけねえええ、こ、こいつただの山男じゃねーぞ」
「はぁ、死ぬ、た、たのむ殺さないでくれ」
「ギルドマスターいいのかよ」
するとギルドマスターの老人は椅子から立ち上がって。
声が震えていた。
「お帰り、フレンダイサー」
その場がさらに凍り付く。
「う、そだろ」
「て、みんな鑑定しろ、フレンダイサーか調べろ」
「あ、うそだ。そんなレベル聞いたことねーぞ」
「何か何かアイテム使ったのか」
「う、うそだろ、レベル3600ってありえねーぞ」
俺にかけられた呪い、それを考えていた。つまり耐久値を減らす事で強制的にレベルが1上がるという事だ。
そして耐久値はある法則のもと減らされていく。
それは神様の気分でだ。俺の攻撃力が異常で相手を倒したとしても、それは耐久値を減らしたとされレベルがあがる。
ようは相手の耐久値を減らす呪いと俺の力で相手の耐久値を0にしても俺は強制的にレベルが1あがる。
と言う事はどんなに雑魚でもどんなに強くても、俺のレベルは1しか上がらない。
でだ。俺が考えたのは、スライムとゴブリンが永遠に異空間から出現する。
つまりモンスター世界からやってくる彼等を無限に殺せばいい。
まだモンスター世界に行く技術は今のこの世界には存在しない。
なので俺はひたすら沸き続けるモンスターを狩り続けるのだ。
まぁレベルを上げるというのもあるが、一番大きいのは魔石だ。
魔石を大量に得る為には、強いモンスターを一生懸命倒すより、雑魚モンスターを一気に倒すといほうが向いている。
しかしよりより魔石を求めるならさらなるモンスターを倒す必要がある。
そこでも一つ問題が出てくる。俺はスライムに苦闘するほどの雑魚だった。
ステータスが異常になってるから倒せるではいけない。
と言う事でスライムとゴブリンを倒しがてら技術をあげる事にした。
それを1ヵ月で終わらし、冒険者ギルドに舞い戻ってきたわけだ。
どんな英雄でもレベルは500程度。
どんな勇者でもレベルは700程度。
どんな魔王でもレベルは900程度。
どんな神でもレベルは2000程度。
そして俺はレベル3600程度。
俺は神を超えた。
しかし例外は存在する。
「神呪いの書の呪いは……」
その呪いはレベルなど関係ない。
神と俺の契約みたいなもの。
そこにはレベルという概念は存在しない。
俺は再びゆっくりと冒険者達を見回した。
彼等は地面に腰を抜かして尻餅をついている。
俺は彼等をゆっくりと見回す。
「お前らは俺の事を雑魚と呼んだ。さぁ、俺は雑魚だ攻撃してこい、俺はいま4000個の魔石をもっているどうだ。俺を殺したら君達にプレゼントしようではないか」
魔石4000個。
つまり魔石1000個で一財産になる。
魔石2000個で家を買える。
魔石3000個で山を買える。
魔石4000個で小さな国を買える。
冒険者達の脳裏によぎった欲望は次の瞬間消え去る。
「だが俺を相手にするには君達はかわいそうだ。そうだ。俺の下部の一人を倒したらあげようではないか」
俺はパチンと指を鳴らした。
使役する幽霊の1体を具現化した。
「うそだろ」
「おい、俺は幻を見てるのか」
「あ、あれは」
「「「「英雄王カルサス」」」」
俺の前のに降臨したのは英雄王カルサス。
俺は彼を配下に加えていた。
英雄王カルサスは平原を彷徨っていた。
そこに俺と出くわしたのだ。
カルサスは俺を見るなり膝をおりまげて忠誠を誓った。
「む、無理だ」
「か、カルサスって、なんであいつの眷属になってるんだよ」
「無茶苦茶だろ」
ワールドボックス。そこには既に国が出来ていた。
そこには無数の凄腕の亡霊達がいる。
彼等をいつでもどこでもワールドボックスから呼び出す事が出来る。
平原にいるだけで有能な幽霊を集める事が出来た。
その名の通り俺には幽霊軍団が出来ていた。
「ふ、腰抜け共が、ではギルドマスター、この魔石を現金化して欲しい」
「それにしてもすごい量の魔石だな」
「まぁ何匹殺したか分からないからな」
「まったく、あまり無理はするなよ、お前も人間じゃて」
「この地上に俺の事を心配してくれるのはレイファとギルドマスターあんたくらいだ」
「ふ、気にするな、ほれこれが金じゃ」
「助かる」
「老人からの助言として身だしなみは気にしろ、今のお主は山男そのものだ」
「そうか、色々とやらねばな」
「また魔石でも換金にこい」
「そうさせてもらおう」
そして俺は冒険者ギルドから出た。
もちろん冒険者ギルドの耐久を965/1000にしてレベルを3601にしたのであった。
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