第4話 スキルポイント

 その部屋にたどり着くまでに、【おめでとうございます。レベルが51→55になりました。冒険者ギルドの耐久が990/1000になりました】


 スキルポイントの部屋には10個のテーブルが置かれてあり、特殊な鉱石でつくられているようだ。しかもその鉱石のようなものは物体ではなく半透明のようなものだった。


 ほっと一安心した。

 触れる必要があると耐久が関わりそうで怖かったというものもある。

 椅子はなかったのでその透明な板の所で待機すると。


【あなたのレベルに応じてそのがんばりを元にレベル5以上の人にスキルポイントを付与します】


「なるほど、てっきり自分が既にスキルポイントをもっているものだと思った、そうじゃなくてこの機械からスキルポイントをもらうのか、と言う事はどこでスキルを学ぶのだろうか」


【スキルポイントはその人の頭のイメージ力で色々なスキルになります】


「なるほどな、すげー嫌な予感が」


【神様がにかりと笑いました】


「おめーはスキルポイントの人じゃねええだろおおお」


【ではスキルポイント1億を付与します】


「あのースキルポイントの人? 1億って普通なの?」


【ではよき旅を】


「スキルポイントの人おおおおお、人の話を聞けえええええ」


「ふ、無駄じゃ、それは意識なき機械と呼ばれるものじゃて」


「あ、あなたはギルドマスター」


「ちなみにレベル50までならスキルポイントは100だぜ? それが普通だな、すごいやつで200だ、でおめーさんいくつ貰った?」


 ギルドマスターは葉巻を加えながらこちらを見てかっこいいポーズを決めている。


「1億です」


「はいいいいいいい」


 ギルドマスターは地面に叩きつけられた。

 葉巻はごろごろと転がっていき、どこかに消えた。


「う、うそおおおん」

「知りませんよ」


「お前、その光ってるぞ」

「あ、これ知らんぷりで」


【神様は雷を落とそうか迷っています】


「すみません、ギルドマスター本開いていいですか、じゃないと冒険者ギルド破壊されるので」


「なにを物騒な事を言っておる」


 とりあえず本を開き、光ってる2ページ目を嫌な視線で読むわけだ。


【第2の祝福を授ける。ありがたくありがたくありがたく思いなさいと神様は行っています。その力は神様の気分で色々決めるというものです】


「てか自由なのか神様」


【神様はあなたの為に色々な気分で付与されるものを決めてあげます。まず最初に神様の気分がいいのでスキルポイントを1億にしました。ありがたくありがたくありがたく受け取りくださいと申しております】


「神様ありがとう」


 とりあえずウソの気持ちをのべておく。


【神様はにこりと笑いました】


 心の中で勝手に笑ってろと思いつつも。


「さて小僧、1億ポイントをどうするんじゃ」

「あんたに小僧呼ばわりされるいわれはねーぞ」

「わしのレベルは70じゃ、50レベルに到達するのに30年かかったわい、お主を鑑定するとレベルが50こえておるではないかーい、いったいどれくらいの労力を支払ったのじゃ」

「数時間前です」


「はい?」


「数時間前にレベル2から50超えました」

「ぶほおおおおおおお」


 口から大量の煙を吹きだすご老人ことギルドマスター。


「たぶん、俺が冒険者ギルドから出るとレベルが60になるかと」

「そ、それは嘘じゃな、お主、ご老人であるわしをたばかっておるのか、では外に出る時にレベルが上がらなければ、わしが大きな声で笑ってやるわい」


「あ、じゃ、いきますね、えとこの部屋から出て、えと5歩歩いてと、鑑定しみてください」

「ふ、これだから若造とはあれだろ先日テスト勉強したけど勉強してませんがなにか? てきな、ふ、ぶごあじゃおhがおがおがおあg:」


「落ち着いてくださいご老体」

「れ、レベルが60になっとるやないかい、お、お前は何者だ」

「俺が聞きたいですよ、あとモンスター倒したことないんで」

「ま、まじなのか、お、お前、モンスター倒したことないのか」


「ここでウソいってどうするんですか」

「あれじゃないのか、武術を学び剣術を学び帝王学を学んだが、いえ、何もしてませんが、俺すごくね? みたいなやつではないのか?」


「ご老体、あなた本当にジジイなんですか?」

「うむ、よろしい、じゃがこれから苦難がまっておるだろう、がんばるのじゃぞ」


 ギルドマスターの右手と左手は小刻みに震えていた。 

 俺はそれを見なかった事にしつつ、冒険者ギルドを出た。

 冒険者ギルドを出るだけで冒険者ルドの耐久が975/1000になりレベルが70になった。きっとギルドマスターは一生をかけてレベル70になったんだろうけど、俺は数時間でレベル70になってしまった。


 ちなみに冒険者ギルドを出る入口では大勢の冒険者がこちらを恐怖の眼差しで見ていた。まるで俺は化け物か怪物か幽霊かよと失笑してしまった。


 一度自宅に戻った。とはいえ家そのものはなくなり、無数の家具が散乱している程度だ。

 衣服を戦闘スタイルの服にした。

 次に剣と盾を装備し、カバンをつるした。

 装備する程度では耐久は減らないのでほっとしていた。


 ちなみに勇敢なるレイファはぐーすか寝ている。

 近くに座って俺は空を見上げた。


「レイファ聞いてるかわからんが、とにかく俺は夢だったレベルを遥かに超えてしまった。最初の目標はレベル10くらいになればいいかなーって思ってた。これだけレベルが上がったのだから俺がどれだけ強くなったか試してみたい。お前は絶対に行くなっていってたダンジョン世界に行ってみようと思う、落ち着いたらお前がいる宿屋に行って安心させるよ」


 独り言のように俺は囁いた。

 レイファはぐーすか寝ている。

 それでもピクリと肩が動いたことは見逃さなかった。


 老齢のギルドマスターが発言した事を思い出して、イメージしていった。

 頭の中でどんなスキルがあるか理解する為に。

 そこは漆黒の世界だった。

 無数の光が輝き、沢山のカードが出現した。 

 その数は無限だ。


 俺の体は存在してなくて、俺の意識の周りを無数のカードが浮遊している。 

 巨大なものから小さなものまで、次の瞬間リストが頭に叩きつけられる。

 リストとはどんなスキルを習得できるかという内容と効果だった。


 自分が欲しいスキルを把握する。


1ワールドボックス:別次元に世界という入れ物を作る事が出来る。そこにはなんでも入れる事が出来る。別次元の世界そのもののワールドでは王国を作る事も出来る。


2幽霊軍団:使役する幽霊を実体化し幽霊の軍団を使役する。


3全神達人:全ての武術の達人。


 この3つのスキルを習得するだけで1億というスキルポイントは消滅した。

 ワールドボックスというスキルだけで4千はしたのだ。

 それだけ危険なスキルだという事は理解している。

 

 幽霊軍団を習得したのが原因なのか、周りには無数の幽霊がいる事を知覚する。

 彼等はゆっくりとこちらに近づいて、足を折り曲げて忠誠の意思を示してくれる。

 それだけで10体はいただろう、動物の幽霊だったり人間の幽霊だったりしたが。


 ずっと彼等が俺をついてきていたら、少し気持ち悪いので、ワールドボックスの世界に入れる事にした。

 頭の中でワールドボックスの世界が構築されている。


 その中で幽霊達は実体を伴いそれぞれの仕事をしている。


 まさかこんなコンボ技のスキルがあるとはと、1人微笑んでいる。

 

 暗闇の中歩き続けた。

 どこに行くわけでもなかった。

 それでもやらないといけない事がある。

 それはスライムを倒すという事。

 

 数年かけても倒す事の出来なかったスライム。

 森の奥地を歩き、草原地帯に到着した時。

 スライムが1匹こちらを見ていた。

 俺は剣を抜き放った。


 その時だ。頭の中にびりびりと何か電気のような物が走った。

 頭の中にありとあらゆる戦法が叩き込まれる。これこそが全神達人のスキルだろう。

  

 地面を蹴り上げると、走り出した。

 スライムはこちらに向かってボールのような動きをした。

 その真っすぐな攻撃に何年苦しめられたのか、このロングソードはレイファが俺の為にプレゼントしたものだ。


 思いっきりスライムに叩きつけてやった。


 スライムは一撃で消滅し、魔石を出現させた。

 魔石とはモンスターを倒すとドロップするものだ。

 モンスターはこの世界そのものから消滅し、その代わり魔石が残される。


 その魔石は色々な使用方法がある。

 だが俺は凍り付いた。


【おめでとうございます。レベルが71になりました】

【おめでとうございます。レベルが72になりました。ロングソードの耐久が0になりましたので消滅します】


 最初はスライムでレベルがあがり、次にロングソードが生贄にされた。

 涙が溢れてきそうだ。今の俺は武器なしだ。盾だって使えば耐久減るだろうそ。

 相当高い武器を使えば耐久値が高いんだろうけど。


 今はそんな事よりレイファにばれて殺される事が恐怖そのものであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る