18. 剣の『担い手』を名乗る者


 気が付けば全く見も知らない空間に私はいた。

 それとなくデジャヴを感じるし、前世の最後にもこれと似た様な事を経験したことがあった気がする。

 けど確実だったのは、そのデジャヴとは少し違って、光一つも見えない暗闇ではなく、星空の中心のような場所に、私がいたという事だった。


「はじめまして、えーっと、キミ、名前は?」


 そして目の前に椅子に悠々と座り、私の名前を聞く彼女は、一体何者なのだろう。

 見た事も無い蒼と白の煌びやかな布で織合わされたドレスをあしらうその少女はまるで王族や貴族の容姿であり、その綺麗なドレスにしっかりと見合う耽美な美貌と、その口調に似合わない可愛らしさを持っていた。

 つまるところ、私の好みの容姿である。


「プレタ・グライナー」

「そう、今はプレタと言うのね」

「えっと……ココは何処?」

「ここ? ここはね『歪みの境目』という場所よ」

「歪みの……境目?」

「そう、キミのお友達が歪みと言っていた物と、あなたの生命の核である精神の境目」

「えっと、まって、難しい。もっと簡単に教えれる?」

「んー、つまり、今しがたキミは死にかけているの」

「……え?」


 何が原因で死んだ? いや、死にかけているって事は死んでいないのか?


「まぁまぁ、そんなに焦らなく大丈夫よ、あの剣に手を触れた時に起きる一時的な事だから」


 少女が言うその言葉には、物騒な内容でも妙な信頼感という物があった。


「剣……待って! 二人は今どうなってるの!」

「んー、ちょっといざこざに巻き込まれちゃってるかな?」

「いざこざ……何かあったの?」

「部外者が現れたわ、貴方のお仲間はソイツと戦っている。詳しくは言えないけれど、今のあなた達じゃ、倒すのは無理ね」

「まさか魔物……蛇の親玉か! じゃあ、早く二人を助けないと──!」

「気持ちは分かるけど待ちなさい、ここから無理矢理抜け出そうなんて不可能だし、抜け出した所であの蛇に勝てる訳じゃ無いのよ」

「でも、逃げ出すくらいなら──!」

「逃げ出せないから戦っているの」

「なんで!」

「退路が断たれたのと、気を失っているあなたがいるからじゃない?」

「何それ……じゃあ、私はどうすれば二人を──!」

「まずは落ち着いて私の話を聞きなさい。そうすれば、この場所から抜け出すだけじゃなく、二人やアナタ自身をこの窮地から助ける事だってできるわ」

「…………わかった」

「わかればいいの、じゃあ、そこに座って」


 少女が指を差した先には、気付けば椅子があった。先ほどまであった訳でも無いのに不思議だと思いながら、私は彼女に言われるがままその椅子に座った。


「キミに何の用があったのかを言う前に、まずは私が何者かを伝えましょう……私はこの『生血いきちすすり魔剣』の『担い手』……今しがたキミが触れた剣の守護者であり、その持ち主の選別者でもあります──」

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