4.『魔王討伐』というリストラ
N.A.1536年 6月22日 朝
「嘘ぉ……」
寝起きで整っていないぼさぼさの髪、まだ開ききっていない瞼。
起きて早々ホットミルクを片手に読んでいたたった一枚の紙切れの情報誌から、最初に目に入って来た世間の情報に私は困惑するしかなかった。
『勇者ハーモニアが魔王討伐! 世界へ平和が訪れた!』
見開き一枚にデカデカとか書かれていた今日一番の朗報とも言えるその内容がそんな大事件であった。
「私……これからどうすればいいんだろ……」
魔王が討伐されたと聞けば、大体の人は喜びに満ち溢れるだろう。
度重なる天災からの解放、畑を荒らすモンスターも魔王の呪縛を解かれて鎮静化、魔王のせいでそうなってしまっていたあんなことやこんなことが全て無くなるのだ。
けど、それで喜ぶのはあくまでも大体の一般であって、私の様な、大体の人から枠外れした冒険者はそれを良しとは思えないし、言えもしなかった。
「えっと……魔王が討伐されたって事は、このあとの仕事も全部……うわあああ! 考えたくない……!」
冒険者の仕事は主に三つ。
一つは大定番のモンスター討伐。
その次に定番の畑などの見張り。
更にその次に、荷物運び。
それらの仕事の大体が力ある冒険者達へ任せられる理由が、主に『魔王に呪いをかけられ、人を襲う様になった魔物達』のせいだった。だからこそ、魔王が討伐され、魔物達の呪縛が解かれた今、冒険者である私は頭を抱えるのであった。
『安定した収入がなくなる』のだ。
しかもよりによって私は、今日の大仕事(だったもの)と、一昨日の自分の誕生日に合わせて特注の鎧まで作っていたのだ。
馬鹿だった。大馬鹿だった。だいたいあの最強無敵の巨乳勇者が魔王の城に到着したと言う話を耳にした時点で、そんな見栄を張らない方が良かったのだ。
「……どうしよ」
まだ財布にはせめて一週間は今まで通り暮らせるだけの金はがある……。
「……うん! とりあえず行ってみよう!」
ひとまず私は、怖い物見たさもあって、予定していた仕事の場所へと向かってみる事にした。
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