前へ

六野みさお

第1話

街を一人で歩いている

僕の前をだれかが歩いていることがある

いつのまにか僕が抜いていることがある

僕の後ろを誰かが歩いていることがある

いつのまにか僕を抜いていることがある


向こうからだれかが歩いてくる

一人一人違う顔をしている

元気に前を向いている人がいる

陰気に下を向いている人がいる


僕は前を向いていたい

明るくありたいからだけではない

ただ周りを見ていたいのだ

歩いてくる人を見ていたいのだ


前から来るだれかは友人かもしれない

もしくはみんなが知る有名人かもしれない

もちろんめったにないことだけど

それを逃すことに僕は耐えられない


いつも勝手に前に進んでいる

止まっていると苦しくなってくる

正解をゆっくり考えることなく

僕の足は勝手に動いている

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

前へ 六野みさお @rikunomisao

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ