第13話 鏡海での話し合い

 気がつくと僕はこの世のものとは思えない場所にいた。空は雲1つなく澄んだ青が広がり、薄っすらと月が映し出される。


 そんな光景が足元のに広がる水面に鏡のようにクッキリ反射している。


 「ーーゲッ」


 ……そしてこの絶景を邪魔するケバイ剣が一本。


 何となく状況は掴めてきた気がする。これは全て聖剣シーリアスの見せる光景なのだ、と。


「あのー、すいませーん。 自分、シオンといいますけどー」


 とりあえず、コンタクトをとってみる。聖遺物は皆意識を持っているという話だし。


 と、次の瞬間聖剣が強い光を放ちはじめる。


「うっーー」


 ……ハートマークも一緒に付けて演出しなくていいんだけど。


「はじめましてっ☆ あたしはシーリアス! シーちゃんって呼んでね!」


 先程まで剣が突き刺さっていた場所には女の子が立っていた。


 特徴は以下の通り。

 •金髪を三つ編みにしてる

 •今まで見たことない服装(スカートの丈短っ)

 •派手な感じの美人


 他にも沢山あるけど、キリがないのでこれぐらいで。


「前のオッサンはノリは良かったんだけどー、やっぱ、運命ではないかなーって。 で、選ばれました、君はーあたしの心を射止めることはできるかなーー」


 僕のことそっちのけで勝手に話を進めはじめた女の子が僕のほうを見てきた瞬間、よく動く口が止まる。


「ーーキュンッ!♡」


 剣もキュンってするのをはじめて知った。

 もう、帰して欲しい。


「ダーリン! 会いたかった!」


 ほーら。こうなった。


「いえ、違います。 人違いです」


 つい、反射的にそう言ってしまった。

 

☆ ☆ ☆


 美しい壮大な光景の中で僕とシーリアスさんはちゃぶ台を挟んで向かい合っていた。


「ダーリン、紅茶派? コーヒー派? それともあたし? キャー!」


 最初に抱いた感動は今はもう一欠片も残っていない。


「はい、ダーリン、ココアだよ♡」


「僕、まだ何も言ってないし、何でさっき聞いたヤツにないの出すの?」


「えっ、あたしがココア好きだからだけど。 もしかして、マジであたしがよかった? でも流石にいきなりそれは恥ずかしいし……」


 頬を赤くしてモジモジ恥ずかしがる聖剣。ちょっと可愛いと思った自分を殺してやりたい。


「あの、それより今どういう状況ですか?」


 このまま彼女のペースにはまっていると話が進まないのでここは僕が強引にでも進めることにする。


「んー? あたしの心の中?みたいな?多分そんな感じ」


 ざっくばらんな回答でした。ありがとう。はい、次。


「じゃあ、何で僕をここに呼んだんですか?」


「君があたしの運命だから」


「運命?」


「そうだよ。 あたしたちはいずれ、あるべき形に戻るの。 そのためには契約者が必要なの。 それの契約者ってのが君だよ」


 別に揶揄っている様子はない。寧ろ今まで1番真面目な感じすらする。

 

「えっと、ごめん。 分かんない」


「君たちが崇める聖遺物はみんな元人間で、あたしは運命の人に出会うと人間に戻るってことだよ。 ごめんねー、伝わり難くて」


 ……は?

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