第11話 芸術都市は終わってる
芸術都市アート、そこは何から何までが作品として存在する芸術の聖地。都市全体の建物の配置、色なども計算され、とある場所から見ると美しい絵となるとも言われている。
そんな場所へ赴いた僕たち。ここに聖剣シーリアスが収められているらしい。
「なんか、ワチャワチャしてるねー」
この都市は世界中の芸術家たちが集う場でもある。だから、街灯1つにしてもデザインが一つ一つ違ったりする。
「そうですね。賑やかといいますか……」
セリアは目を輝かせながら周囲を見渡す。彼女は聖女、教会からしたら変えなきかない人材だ。勇者に同行という大義名分が無ければ外出すら難しい筈。……今、勇者様いないけど。
「私も始めてですね」
「愛那も始めてなんだ」
愛那は極東の島国の生まれらしい。彼女は一族が過去の大戦で失われた聖遺物『黄昏の勾玉』を見つけるために旅をしており、その道中で勇者パーティーに加わった。
「私は何度も来たことがあるわね」
「ボクもー」
「そう何なんだ」
アリスとカミラは来たことがあるのか。だから、この光景にもあまり驚かないかな。いやでも、カラフルアフロを当たり前に受け入れているのはどうなんだろう。
「ん?」
なにやら、人集りがある。
「何かしら?」
「ねーちゃん、知らないのか? 魔王が街を襲ったんだよ」
なんか、ピンク色のチョンマゲの人が急に割り込んできた。アリスは怪訝な表情で男を見てた。かなり、気になることを言っている気がするのだけど頭が邪魔して内容が入ってこない。
「えー? マジ? わたしぃー、もっと知りたい!」
……!? アリスの口調がおかしなほうへと変わる。
「リゼルのスラム街でな、テレシアが出たらしいのよ。 女が1人食われたらしい。 ひでぇ話だよな、この世から女が1人失われるなんてよ! こんなことあっていいのか?」
「そんなのいいわけないよ!」
「そうだよな! ダメに決まってるよな! 特にアンタみたいな美しいお嬢さんは特に。 この美しい出会いはきっと運命ーー」
「みんな、行くわよ。 急ぐ必要がありそうね」
いつもの口調に戻ったアリスはチョンマゲを放って置いて、先に進む。
「この都市は変わった人が多いから、臨機応変に対応しないといけないんだよ」
……なるほど?
☆ ☆ ☆
この都市は頭がおかしいのが直ぐにわかった。何せ、宿のほとんどがハートマーク沢山の愛の宿ばかりだからだったから。普通の宿は需要がないらしい。
勘弁してほしい。
「さて、色々聞いてみたけど、やっぱりあの情報は本当らしいわね」
1番不人気な宿(普通)をにて。僕たちは集まって、会議を行なっている。
「じゃあ、僕たちと入れ違いで、テレシアは街を襲ったってこと?」
テレシアの現れた街は僕が勇者様に追放を宣告された場所になる。
「そうね、その場にあのエセ勇者もいたらしいけど、直ぐに逃げたらしいし」
アリスはギュッと拳を握りしめる。確かに、勇者が魔王から逃げるなどあってはならないことなのだ。勇者には様々な方面からの援助がある。つまり、それだけ期待されていることになる。
「勇者が勇気を出さなくて、何が勇者なのよ。 普段はあんな偉そうにしてるくせに」
いつも勇者様は言っていた。
『魔王なんて俺様の前じゃ、ゴブリンとかわんねぇーよ!』って。
「……勇者様の聖剣って、テレシアとの相性は良くないの?」
「そんなことはないわ。 聖剣シェアフリートの能力は《蓄積》。 あの勇者もかなり溜めているはずだから倒せはしなくても撃退はできたわ」
「そうなんだ……」
別に逃げた勇者様をとやかく言うつもりはないけど、もし自分がその場にいればと思ってしまう。
「その話は一旦置いときましょう。 それよりも、重要なのは明日の選定の儀です」
愛那が仕切り直すべく、話題を変えてくれる。そうだ、今の僕は明日の選定の儀でシーリアスに選ばれたなければいけない。
「ってどうすればいいの?」
「それはーー」
「それは?」
「ーーー運です」
……大丈夫かなぁ。
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