第10話 天魔竜テレシア グロあり

「クソが!! どいつもこいつもふざけやがってよ!!」


 勇者キースは瓦礫を吹き飛ばし姿を表す。


「なんだっーーー」


 それより先の言葉は出なかった。いや、出せなかったと言っていい。何せ圧倒的なまでの存在感を放つ怪物が目の前にいたのだから。


 キースは知っている。勇者としての使命であり、打つべき敵、すなわち魔王。天に君臨する白亜の竜、竜種ではワイバーンのように小さいがその力は竜種において、いや魔物全体でも並ぶものはないとされる。死齎蟲イザナとは違う意味で討伐不可能な存在ーーそれがテレシアだ。


 キースは気づいた。テレシアは先程まで自分が性欲の吐口にしようとしていた女を片手に持っている。恐らく光の魔力を持っていたのだろう。これはキースはにとってチャンスだ。もちろん、逃げるチャンスである。


「そいつを離せ!」


 だが、愚かにも挑もうとする馬鹿がいた。キースは声のするほうを見る。あの生意気な盗人だ。


「アンタ! 勇者なんだろ!? 何とかしてくれ!」


「ふっ、ふざけんな! 俺は勇者だぞ! こんな所で死んでたまるかよ!」


 テレシアに背を向けて全力で逃亡を図るキース。


「なっ……」


 あっという間にいなくなる勇者に目の前が暗くなる感覚が襲う。圧倒的な力の権化。それと対峙して立つのがやっとなのだ。だが、相手は自分に興味を示していない。なら、スキルで手元にーー


「た、たすけーーー」


 テレシアは右手に持っていた少女の上半身を食いちぎる。


「ーーーーー」


 何が起こったのか、理解出来ない。だが、テレシアはそんなのお構いなしに残った肉を平らげる。あまりもあっさりとした幕引き。やがて、テレシアが飛び立とうと羽を広げる。


「こっ、殺してやるぅぅぅううう!!!」


 手元に転がる瓦礫を投げつける。が、テレシアは1度振り向き少年の姿を捉えるが何事もなかったかのように飛び立つ。


 屈辱だった。住処を燃やされ、家族を殺され、敵だとすら認識されない。少年はそれでもと、僅かな希望に縋り、子供たちの救助を行うのだった。


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