第8話 聖剣シーリアス

「えっと、大丈夫なの?」


「問題ないわ」


 全然問題しかないこの状況にも関わらず、アリスは平然と言い切ってみせる。アリスたちの本当の目的は魔王の切り札である勇者を国に繋ぎ止めることの筈なんだけど……。


 確かに近年は、魔王個体の活動はあまり耳にしない。単純に僕たちの住む場所から遠く離れていることもあるのだが、1番は魔王の知能が高いことだと言われている。だから、未だに討伐されていない、と。


「ボクはあんまり勇者云々は関係ないから」


「まぁ、カミラはそうかもしれなど……」


 カミラはアイドルだ。その特殊なスキルによって戦闘にも参加出来る。しかし、アリスとは違い勇者を取り込み権力拡大みたいなことはない。まぁ、勇者の女になれば安泰かもしれないけど。


「言いたいことは分かります。 しかし、自分で決めたことですので」


 愛那がキッパリ言う。


 自分1人で勝手に決めたのが問題だと思うのは僕だけらしい。


「シオン、実は聖剣シーリアスの使い手が亡くなってしまったらしいの」


「えっ?」


 初耳だった。まぁ、僕みたいな下々の民なら知らないのは当然なんだけど。聖剣シーリアスは聖剣の中でも最も適合率が高いことで有名だ。


「ま、まさか、魔王が?」


 声をなるべく潜めて聞く。もしそうなら、一大事だ。


「違うわ、疫病らしいのよ」


 ……そうなんだ。確か、シーリアスの使い手はかなり長い間勇者をやっていたって聞いたことがあるような、ないような。


「それで、次の選定の儀を来月に行うらしいの。 それに貴方も参加してちょうだい」


 ん???


☆ ☆ ☆


 聖剣シーリアスーー聖剣の中でも1番適合しやすい聖武器として知られる。ただし、一度使い手に選ばれたからには死ぬまで手放すことができないかなりの面倒臭い性格をしているのだ。


 だが、聖武器特有の能力は強力である。


 超強化。それがシーリアスの固有能力だ。ステータスやスキルを一時的に大幅なバフをかけるのだ。


 適合率の高さとシンプルな能力によって、最も多くの魔王を殺した聖武器なのだ。


 ……そのデザイン性と性格に目を瞑ればだが。

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