第7話 勇者と魔王
「み、みんな……」
アリスとグレンさんの僕を賭けた(勝手に)勝負の後のこと。数日ぶりに聞く声がした。
勇者パーティーの仲間カミラ、セリア、愛那の3人だった。
「なんでこんな所に……?」
「決まっているよ。 勇者のパーティーを抜けたんだよ」
桜色の髪の少女、歌姫カミラが当然のように言う。この時点で僕の頭の中は理解が追いつかない。アリスだけかと思っていたけど、どうやらみんなで抜けたのだろうか。
「まぁ、こんな所じゃなんだ、中でじっくり話し合え」
グレンさんが肩に手を置きながらアドバイスをくれる。がーーー
「……ごめん、セリア。 グレンさんに治癒魔法お願いできる?」
とりあえず、アリスによってボロボロになっているグレンさんの治癒から始まることにしよう。
☆ ☆ ☆
セリアの治癒魔法もあって、隣のテーブルで酒と料理を豪快に平らげるグレンさん。
対照的に僕たちのテーブルは静かだった。なぜならーー
「みんな揃って勇者様のパーティーを抜けてきた、と」
今、かなりの難題にぶち当たっているから。
「……はい。 勇者様は素行に問題が多い方ですし、裏でフォローしてくださった、シオンさんを一方的な形で追い出したのですから」
聖女セリアが悲しそうに言う。同情してくれるのは嬉しいけど、抜けるのはやり過ぎだと思う。
「元々、あのパーティーはシオンのサポートであそこまで成長出来たのをあの勇者は何も理解していないのよ」
アリスは勇者様をずっと擦っている。
「みんなはこれからどうするつもりなの?」
とりあえず、これからの予定を聞くとする。みんなはかなりの力を持つ人たちだから、国に帰るのかーーー
「シオンと一緒に冒険者を続けるわ」
???
「えっ? ごめん、どういうこと?」
「もう、恥ずかしいから言わせないでよ」
急にもじもじしてしおらしくなるアリス。クソぅ、かわいいなぁ。
「私たちは皆、貴方について行くことを決めました」
今まで黙っていた愛那が補足説明をしてくれる。あんまり、分かんなかったけど。
「えっと、勇者様は?」
「置いてきたよ」
なんとなくそうなんだとは思っていたけど、マジか。
僕たちは勇者様を強くするために集められた。魔王を討つために。まぁ、魔王はまだ確認されていないけど。
☆ ☆ ☆
魔王ーーそれは魔物を統べる先導者。突然変異で生まれた怪物。魔王の誕生によって滅ぼされた国は数知れず。だが、勇者によってなんとか倒された。一部を除いて。
天魔竜テレシアーー光魔法を使える者のみを捕食し、魔物の中で唯一光魔法を使える、偏食の魔王。
食喰王グエルーー有機物、無機物問わずなんでも食らう、狼の姿をした魔王。
死齎蟲イザナーーもっとも数の多い蚊の魔王。単体では大した強さではないのだが、小さいため完全な根絶が困難と言われるほど。
冒涜の魔王ゼス•ラゼルーー魔王認定された人間。不老不死を求め、闇魔法用いて自分の国を滅ぼした狂王。
4体の魔王は討伐されることなく、本能のままに厄災を撒き散らしている。勇者の使命はこれらの早急な討伐、もしくは新しく生まれた魔王の討伐である。
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