第5話 ちょっと、お転婆なお姫様アリス
前回までのあらすじ。フェイトを賭けて(勝手に)勝負が始まった。
酒場の前の大通りで2人の男女が真剣な雰囲気で睨み合ってる。何故か、酒場の客もわざわざ外に出て行く末を見守っていた。
「さーて、いきなり始まってしまったこの勝負、実況はオイラ、セドルとーー」
「どうも、空気なシオンです」
「で、やっていきヤス」
酒場の机と椅子を勝手に持ち出し、解析席を作る2人。ちなみにセドルはグレンのパーティーの斥候を務める男だ。
「さぁーて、南は我らが頼れるグレンの兄貴。若くしてBランクの冒険者になったエリート! 対する北側の謎の美少女! 彼女についてはなにかあるでヤンスカ?」
「彼女、実は姫騎士アリスなんですよ。 ぶっちゃけ、グレンさんでも相当厳しいかと」
「なんと! オイラはまっっったく知らない! どんな方で?」
「姫騎士アリスは、アンウェル王国の王女です。しかも、当時10歳にしてBランクのスキルを3つも持っていました」
「……え? お姫様? マジ?」
「マジもマジ、大真面目です。 今の彼女はBランク冒険者ですが、その能力はAランク冒険者となんも遜色ないですねぇ」
アリスはまだ冒険者になって2年。Aランクになるには実績と3年以上冒険者をやる必要がある。だから未だにBランクというわけだ。
「そんな凄い人が相手とか大丈夫なんスカ?」
「分かりません。 グレンさんも経験値という意味ではアリスより上ですし、割と何とかなったりするんじゃないですかね」
「ほうほう、どっちが勝つのか!?
いざ! 尋常に! ファイト!」
戦いの火蓋は落とされた。
☆ ☆ ☆
まず、2人はお互いに出かたを伺っていた。緊張感張り詰める静寂を壊したのはグレンの方だった。巨大な身の丈程ある戦斧を軽々と振るう。
が、アリスはそれを可憐に躱す。それこそ踊るように。グレンもアリスも身体強化の魔法を使っているからの動きである。グレンは素の身体能力、アリスは魔法のランクにって拮抗していた。がーー
グレンが勢いよく振り落とした、渾身の一撃によって粉塵が舞う。
「どわっ!?」
「おい! ふざけんな! 酒飲んでんだぞ、こっちは!!」
野次馬たちが各々文句を言う。
が、そんなものお構いなしに戦いは続いていく。
「どうした!? さっきの勢いは!?」
「くっーー」
グレンの斧は重く、疾い。アリスの持つ剣では到底受け止められない。グレンの強みはリーチの長い斧による攻防一体のスタイルだ。
人だろうが、魔物だろうが簡単にミンチに変える極端な戦法。消耗が激しいというところを除けば、だか。
アリスは一旦距離をとる。
「ーーなかなか、やるわね」
「まだ、こんなもんじゃねぇぜ?」
不敵な笑みを浮かべて、右手で手招きをし、挑発してみせるグレン。
「そうね。 貴方頑丈そうだし」
「あ? ーーッ!」
アリスの謎の発言にすぐさま斧を構える。
目の前の少女から魔力が爆発的に増大する。その魔力を剣に注ぎ込む。膨大な魔力は暴風となりて、剣を覆う。それはもはやランスだった。アリスのみが使える風魔法の極致ーー
「
暴風のランスと化した剣をグレンに向けて解き放す。
「《ジェノサイーー》」
グレンも応戦しようとするが、それよりも先にアリスの魔法がグレンを吹き飛ばす。
「……街中で何やってんのさ」
「あぁ、あ、兄貴!」
「私の勝ちね!」
アリスは周囲のことなどお構いなしにシオンの元へ向かうのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます