第3話歪な三角関係
ウェルザーに来て3日がたった、夜。
「沢山食えよ! 兄弟!」
「い、頂きます……」
目の前の大量の料理にドン引きしている最中だった。
来た初日に挨拶した冒険者の人はグレンさんと言うらしく、25歳にしてBランクにまで上り詰めたすごい人。
冒険者のランクはA〜Eまで存在している。凡人の限界がBと言われている中、あの若さでBランクはかなり優秀と言える。
さて、なんでそんな人が僕と一緒に飲んでいるかと言えばーー
「シオン、おめぇなんでも出来んな。 情報収集から武器の手入れ、料理まで」
採取で少しでも稼ごうとギルドに行ったら、グレンさんたちのパーティーに誘われ、一緒にクエストをこなしたら、いつの間にか歓迎されたと言う訳だ。
「なんで、お前ほど優秀な奴がソロなのか分からんし、聞かんが好きなだけここにいろ! 兄弟!」
ガハハハッ!と笑いながら、背中をバシバシ叩いてくるグレンさん。
「痛い、痛いですよ!」
と、楽しい雰囲気に割り込むように酒場の扉を乱暴に開ける音がした。
「………」
入ってきたのは黄金の髪と白亜の甲冑を身に付けた美しい女の子。少女の登場に他の冒険者が見惚れているのか固まっている。
一方の少女は酒場全体を見渡し、酒場の隅で飲んでいた僕たち、というか僕と目が合う。
「シオン!」
少女ーーアリスは一目散に走っーー突進してくる。
「ちょーー」
ドシャンッ!と盛大な音を立てて、僕はアリスのタックルをモロに食らう。硬い甲冑と地面に頭をぶつけた衝撃のダブルパンチに僕は倒れた。
☆ ☆ ☆
「嬢ちゃんはシオンのなんなんだよ?」
「仲間よ」
目を覚ますとアリスが僕に膝枕をしていた。
「あっ、起きたのね」
アリスは太陽のごとき明るい笑みを向ける。くっ、眩しい。僕が吸血鬼だったら一瞬で灰になるぞ!
「えっと、どういう状況?」
「それを今聞いてる所だ」
僕の質問にグレンが答えてくれる。なるほど。
「アンタ、今仲間と言ったが、シオンはソロのはずだろ? どういうことだ?」
「私の知らないところで勝手に追放されたのよ! 信じられる!?」
「お、おう」
アリスがギュッと拳を握る。その姿にグレンさんとパーティーの仲間が引く。美人の怒りは迫力があるなぁ。
「そういうことだから、行きましょう? シオン」
アリスが強引に手を引っ張ってくる。
「ちょ、アリスーー」
「待ちな、嬢ちゃん。 アンタの事情は分かった。 だがな、こっちもそう簡単に信じてやれねぇ。 そして何よりーーシオンを渡す訳にはいかない」
「……どういうことかしら?」
アリスが無機質な目をして振り返ってくる。怖いです。やめて!そんな目で僕を見ないで!
「いや、こっちに来てから少しだけど、かなりお世話になって……」
「ソイツはもう俺たちの仲間だ。 悪いが渡せねぇよ」
「ーーなら、力尽くで奪うことにするわ」
アリスが空いていた左手で腰の剣を逆手の状態で引き抜く。
「へっ、いいだろう! 女だからって容赦しねぇからな!」
「望むところよ!」
なんか、当事者そっちのけで奪い合いが始まってしもうた。
おかしい。こういうのは美人のアリスにチョッカイかけてバトルとかになるはず(経験談)。なのに原因は僕という。まぁ、とりあえずーー
「辞めて! 僕のために争わないで!?」
もう二度と使わないであろうセリフと共に止めに入ることにする。
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