第3話 大爆弾
サネは、明るく聡明な女の子でした。
人前で話す事も躊躇なく大好きでしたので、両親等は、この子は将来学校の先生に成るのが良かろう等と言ったものでしたが、当のサネは、学校の先生に希望を感じていませんでした。
ある日、サネはお父さんの手伝いをする為に納屋に行きました。
お父さんはラジオを聞いていました。
サネは、そこから聴こえて来る音楽や女の人のアナウンスを聴いていて、「これだ」と思いました。
「お父ちゃん、サネね、このラジオの仕事ゆうもんがしてみたい!」
「おお、そうか、ええかも知れんの」
お父さんが嬉しくなって家族にその事を話すと皆も賛成した。
サネはすっかりその気になって、毎日発音の練習とか、難しい言葉の勉強をしました。
毎日欠かさず練習と勉強をしました。
自分の声が、ラジオと言う機械を通じて沢山の人に聞いて貰える興奮で楽しく取り組みました。
サネが17歳になった頃、世の中は地獄の釜の蓋を開けてしまったよな、不愉快な匂いに包まれていて、混沌していました。
そんな中でも、エレナとの秘密の交信は相変わらず行われていました。
ラジオの仕事を目指そうと決めた時、エレナに希望を見つけたと言った時、彼女は良いとも悪いとも言わず、だた優しく微笑むだけでした。
不思議な事に、お互いの姿かたちは見えていませんでした、少なくともサネにエレナは見えませんでしたが、言葉に乗せてエレナがどんな気持ちなのか良く解るのでした。
味方の状況が刻一刻と悪くなっていった頃、エレナがこんな事を言いました。
「もうすぐ大きな事件が起きるの、事件が起きてもあなたは強い人だから、必ず乗り越えられるから、大丈夫だから」
「何が起こるの?」
「それを詳しく教える事は、あなたにとっての重大な体験の受け取り方を歪める事になるから言えないの」
エレナの困ったような悲しむ様な気持ちを受け取ったサネは、それ以上詰問しませんでした。
その3日後、サネの住む街に敵国の飛行機から大きな爆弾が一つ落とされました。
その爆弾は、一人でも多く殺傷出来るように、空中で炸裂しました。
大昔、惑星を一つ破壊してしまったのと似た種類の爆弾を作る事に人類は成功したのです。
エレナをはじめとしたホワイトブラザー達は、それの起こる事を予見していましたので、金色に光る宇宙船から成り行きを見守っていました。
白づくめのホワイトブラザー達は、少しでも被害が少なくなる様に祈りを捧げていました。
サネは丁度その時、爆心地に近い街に来ていました。
エレナは、自分の持てる最大の愛の力を念じ、サネが爆弾の影になる所に移動する様に仕向け、「痛くありませんように! 痛くありませんように! 痛くありませんように!」と、必死で祈りました。
サネが分厚いコンクリートの建物の陰に入った時、太陽がそこに落ちたような閃光が煌めき、地響きと熱風が街を襲った。
サネは、閃光が煌めいた時、彼女の近くを歩いていた人達が消えていなくなるのを見た。
しばらくすると、物陰から怪我をした人達がそろそろと出てきました。
燃えている人、身体が溶けている人、身体の一部が失くなっている人。
サネ自身は、痛みや熱さ、そして特に喉の乾きを感じていたので、記憶を頼りに川の方へ行ってみようと思った。
途中、もがき苦しむ人達を沢山見た。
川と思しき所に流れていたのは、水ではなく死体だった。
サネは、喉の乾きを我慢したまま、数キロ離れた自分の村に帰る事にした。
乗り物は全て破壊されたようであったので、歩く事にした。
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