第2話 エレナ
宮田サネは、思い出す事が憚られるあの戦争の時代、田舎の農家の次女として生まれました。
銀河連邦内では、地球の生命体がとんでもない事を始めたと言うので話し合いが進められていました。
銀河連邦憲章では、各星々の生命体が意思決定した事に対する直接介入が認められていなかったので、ホワイトブラザー達は、地球人による地球人の為の小さな救世主を育成するプロジェクトを始動していました。
その中の一人に宮田サネが選ばれたのでした。
彼女の事は人類の歴史には記されていませんし、彼女の事を知っている人はもういませんが、世の中は、彼女の様な無名の小さな救世主達によって支えられている側面もあるのです。
ある夜、7歳だったサネが母親の横で寝ていた真夜中、額に違和感を感じて目を覚ましました。
額に一筋の光が当たっていた。
なんだろうと思ったサネは、頭をいろんな所に動かして見ましたが、光の筋は常にサネの額の中央を捉えていました。
サネが疲れて諦めると、頭の中で声が聞こえた。
「サネ、突然ゴメンね、私はエレナ、銀河連邦から来たの」
「銀河連邦って?」
「銀河系の中心に大きな太陽があって、その近くから来たの」
「へぇー、何をしにきたの?」
「私達はね、地球の人達が仲良く成れる様に手助けをしに来ているの」
「うん、サネもそう思うの。皆んな仲良くしたら毎日楽しいのにって」
「そうでしょう、だったら、ねぇ、皆んなが仲良くなる為にサネちゃんの力を貸してくれないかしら」
「うん、いいよ」
「ありがとうサネ、じゃあ少し足がチクッとするけど我慢してね、ゴメンね」
エレナはゴメンねを強調した。
光が移動して、サネの足のくるぶし辺りに来て、そこがチクッとした、同時にサネは再び眠りこんでしまった。
翌朝サネは目を覚まして左足のくるぶしの下を触ってみた。
飲み薬位のしこりがあった。
なんだろう、と思った瞬間、頭の中で声が聞こえた。
「サネ、おはよう!」
「エッ、エレナさん?夢じゃなかったの?」
「そうよ、さっきあなたが触ったのは希望の種と言われる物よ」
「希望の種?」
「そう、私達が自由に会話出来るようにする為、そして、あなたが希望を見つける案内をしてくれるの」
「凄い物なんだね」
「そうね、あなたが希望を見つけて実際に活動を始めると、その種は消えてなくなるわ」
「エレナさん!希望の事もっと良く教えて!」「ええ、希望はね、今日の夜ご飯はあれが食べたいとかこれが食べたいとかそんな小さな事では無いの。人間はね、それぞれやりたい事を決めて生まれてくるの。たまたま生まれてきたのではないのよ。つまり、希望って言うのはサネがこの人生でやりたいと決めて来たことを思い出す事なの」
「本当?」
「本当よ、やりたいとをして楽しむ為に私達は創られているのよ」
「じゃあなんで、人は殺し合う戦争をするの?」
「戦争ごっこをして遊んでいたら、どんどん面白くなってしまって、本当に殺し合う戦争になってしまったの」
「ふうん、そうなんだ」
「あなたは頭が良いもの、また機会があったら詳しく教えるわ」
「うん」
サネはこの日から、エレナにいろんなことを教えて貰いましたが、それらの事は、誰にも言いませんでした。
話すと病院に入れられてしまうと、エレナから注意されていたからです。
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