第2話 賑やか病棟と、愉快な仲間たち

 「はぁ、まさか現実だっただなんて、ねぇ。」


 一車は机に置いてある切符を見ながら呟く。

 すると、彼女は切符を手に取り、病室を出た。


 _____2019年12月28日。


 「ハロー、一輪。」


 一車が声をかけたのは、紫の髪に常にはだけてる和服、そして車椅子の青年、黒烏一輪こくろう いちりんだ。


 「実はさ、昨夜夢みたいなことがあって。」


 「夢みたいな……こと?」


 「なんかさ、窓見たら子供が木に引っかかってて、助けてあげたらお礼に銀河鉄道への切符をー、って。」

 「んで、これがその切符。」


 一輪は目を白黒させながら、なるほど。と相槌を打つ。

 その時。


 「その話、あたちサマにもきかせなさーい!」


 病棟の床を少女の走る音が鳴らす。

 やってきたのはわがままってことで有名な院長の娘、闇幕やみまくクリスだ。

 クリスは、生まれつき心臓が弱く生まれた時からこの病棟に入院しており、なんだかんだで皆に愛されてる。


 「あっ、院長んとこのわがまま娘。」


 「あ……クリス……。」


 「あたちサマをおいて、ぎんがにいくなんてずるいの!」

 「あたちサマも連れてってよね!」


 「んー、そう言われても。」


 その時だった。

 誰もいないのに病棟の狭く開く窓が、勝手に開く。


_____


 「んー、この窓もうちょっと開いてほしいですねぇ。」


 そこには見覚えのある車掌のような少女が、外側から無理やり窓を開けていた。


 「いやいやいや!?待って!?どうやって開けたの!?」

 「てか今バリッバリ冬だから早く閉めて!寒い!」


 一車は驚きながら、とりあえず窓を閉めるようにに促した。


 車掌ちゃんは窓を閉め、冷静に皆に挨拶をする。


 「皆さん初めましてぇ〜。昨日この女の子に助けられた車掌さんですぅ。」


 「へいへい。あっ自分、彼方星一車かなたぼし いっしゃって言うんで、気軽に一車でよろ。」


 「俺は……一輪。黒烏 一輪……。」


 「あたちサマは闇幕やみまくクリス、よ!おぼえておきなさい!」


 一同が軽い自己紹介をすると、車掌ちゃんはメモを取りながらこう聞く。


 「一車さん、連れていくお方はこの方々で決定でいいですかぁ〜?」


 「まー、自分はいいけど……」


 その時だった。


_____


 「その話、俺にも聞かせてくれ。」


 一同が振り向くと、60代位の看護師がいる。

 そう、彼こそが病棟で人気の蘇鉄英辞郎そてつ えいじろうだ。


 「あら〜追加ってことですかぁ?」


 「んー、そういう事だよね?蘇鉄のじいちゃん?」


 「そういう事だな。楽しそうだし、何より」

 「ここは病棟だし、旅に出る患者達になんかあった時に備えて俺も着いていく。」


 「ヒュウ、流石蘇鉄のじいちゃん。頼もしいよ。」


 車掌ちゃんは改めてメモを取りながら一車に聞く。


 「それでは〜、銀河鉄道に乗るのは、一車さん、一輪さん、クリスさん、蘇鉄さんで決定ですね〜?」


 「うん、そのメンツでよろ。上の者に伝えておいて。」


 「分かりました〜。では、車掌さんはこれで一旦失礼します〜。」


 そう言うと、車掌ちゃんは窓を再びあけ、何かハンドサインをして姿を消した。


_____今夜、銀河鉄道、進行!

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