銀河鉄道は闇幕病棟に

ノア

第1話 こんばんは、小さな宇宙人さん。

 これは2019年の年末に起きた事を執筆している_____

 予め言っておくが、自分は精神異常者でも無ければ幻覚も見ていない。全て”現実に”起きた夢みたいな話である。


_____


 2019年12月27日。


 「あ〜あ、スマホも没収されて眠剤も飲んだからやること無くなっちゃった。」

 「まぁ、適当に今日もノート日記でも書いておきますかー。」


 町外れの病院の入院病棟にいる少女……”彼方星一車かなたぼし いっしゃ”は、市販のちゃっちいノートを病室の小さな机におっぴろげながら、ポツンと呟いた。


 彼方星一車。16歳。女の子

 病名……思春期による自律神経失調症


 要するに、ちょっと学校で頑張りすぎて無理をした少女だ。

 生意気なようで、繊細な少女。


_____


 一車がノートにつらつら、と今日あったイヤミなおばさん患者の愚痴、ユーモアのある看護師”蘇鉄英辞郎そてつ えいじろう”の面白話、そして……友達以上恋人未満の関係である”黒烏一輪こくろう いちりんとの青春話。

 そんなものを書いていた時だった。


 『ガサガサっ、バサッ!』


 音がしたのは窓から。

 どうやら、何かが落ちたような音だ。


 一車は、慌てて窓の方へと駆けつける。


 「何ー?こんな時間になんなのさーもう。」


 一車は窓を見て驚く。

 それもそうだ。窓の外には木に引っかかっている幼そうな少女が居るのだから。


 「んー困ったなぁ。とりあえず窓開けれるだけ開けますか。」

 「そっからワンチャン救出できるかもしんないし。」


 というのは、彼女が居るのは精神病棟も兼ねているからだ。

 無論、そんな所で窓が大っぴらに開いたら、察しはつくだろう。


 「よいしょ……っと。」

 「よし、ギリギリ手は届くな。」


 一車は女の子に向けて手を差し伸べる。


 「ん……んぅ……。」


 「よしよし、今から一気に引っ張るよー?」


 そう言い、一車は一気に手を引っ張る。


 『バサッ!ズルズル……』


 「あんた意外に重いな!?ここが一階で良かったですねー?」


 「えへへ……すみません〜……あなたは命の恩人さんですねぇ。」


 一車が救ったのはぽってりとした体型の小さな女の子。

 長い長い髪。前髪は目を隠す程に。

 そんな女の子は、照れながら自己紹介をする。


 「あっ、わたしのことはとお呼びください〜。」


 「車掌?あんたどこの鉄道の車掌やってるんです?」


 「紹介します〜。車掌さんは、の車掌なんですぅ。」

 「今日はママや相方さんが待っているのでお暇しますが、今日助けてくださったお礼にこのをお渡ししますぅ。」

 「興味がありましたら、明日の夜……今日くらいの時間に窓を開けて待っていて下さい〜。」


 「は!?このさっむい年末に窓開けろとか鬼畜ですけど???」

 「まぁでも分かりましたよ。考えておきますねー。」


 一車は”インフルの時に見る夢”感覚で受け流し、布団へと入る。切符はノートと一緒に机の上。


_____


 翌朝。


 「昨日は疲れてたからか変な夢見た気がするんだよね〜。」

 「なんだか車掌ちゃんが云々とか、銀河鉄道が云々とか。」


 そう言い、”そう言えば昨日机散らかしっぱなしだった”と思いながら机に向かう。


 「……え?」

 「え、マジ、これ現実だったの?」


 机に置いてある切符、それは確かにであることを意味していた_____

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る