第4話 お披露目会

エミリーは目を覚まし、腕を伸ばした。王宮のベッドというのはふかふかとしたものでぐっすりと眠れていた。静かにドアが開くとフィニーとリリが静かに入ってきた。

「お嬢様起きてらっしゃったんですね。おはようございます」

フィニーとリリはお辞儀をした。

「おはよう、いつもはこんな眠らないんだけど、ベッドがふかふかでよく眠れた」

「それは良かったです。」

フィニーはニッコリと笑い、カーテンを開けた。

「 お嬢様、紅茶です。よかったらお飲みください」

リリはエミリーにと紅茶を淹れ、テーブルに置いた。エミリーは「ありがとう」と一言言い、ソファに座り紅茶を飲み始めた。

「今日は、お披露目会か…気が重いな」

エミリーは朝から肩を落として、ガックリとしていた。

「大丈夫です!お嬢様は座ってらっしゃるだけで良いのですよ」

フィニーは朝から元気なようでエミリーは少しだけ気が楽になった。

「あ!今日はお城のご案内をしたいと思っております。昨日はバタバタして見て回ることも出来ませんでしたから」

「そうだね。ありがとう」

エミリーは嬉しそうに笑った。

「ですがその前に、お披露目会での最低限の礼儀を勉強していただきます!」

「誰に教わるの?」

エミリーは首を傾げた。エミリーは自信まんまんに自分を指さした。

「この私です!これでも下級貴族の出で、こうゆうことはよく教えてまいりました。」

「そうだったの。リリも?」

「リリは市民だったのですが魔法が使えるということで王宮にメイドをしないか?と招待されたんです」

リリは布団を片付けながらぺこりと頭を下げた。

「すごいね、魔法使えるの!私は魔法書も読んだことない。勉強は育ててもらっていた母に教わっていたけど、母は魔法が使えなかったから」

「いえいえ!お嬢様はエルフの血が混じってますから魔法もきっとちょちょいのちょいですよ!」

フィニーは自信満々に言った。

「そ…そうかか」

「そうですよ!」




エミリーはレースが沢山つけられ布が重ねられた豪華で重いドレスを身にまとっていた。

「お嬢様!バッチリです!お辞儀、綺麗ですよ!」

フィニーはパチパチパチと手を叩いた。

「そう?」

エミリーはお辞儀をしている途中で少しあげた。

「はい!とてもお美しいです。これで、お披露目会もバッチリですね、あとは言葉遣いをいわゆるお嬢様言葉でお話ください」

「分かった…わ」

エミリーは「ふぅ」と椅子に座った。

「ねぇ、お披露目会ってどれぐらいの人が来るの?」

「えーっとですね、だいたい200人ほどです」

フィニーはニッコリ笑って言った。エミリーは「ゲ!」と言い、椅子にもたれた。

「多すぎじゃない?」

「これでも少ない方ですよ。ほかのご兄弟のときは600人ほど来ていたそうです。」

エミリーは顔を真っ青にさせた。

「私ここで生きていけるかな」

「お嬢様なら大丈夫です!」

リリがエミリーの肩をツンツンとした。

「どうしたの?」

「陛下からいただいた耳飾りの鉱石が青くにごった色になっています」

エミリーは耳飾りを取り見てみた。

「ほんとだ。昨日は綺麗な透明だったのに、青くにごってる。なんでだろ」

すると部屋のドアがノックされた。フィニーが扉を開けた。立っていたのは執事であった。

「そろそろ」

丸メガネを上にクイッと上げ、低い声で言った。

「わかりました。お嬢様お時間でございます」

「分かったわ」

エミリーは重いドレスを持ち上げ立ち上がった。フィニーとリリは部屋に留まり、頭を下げていた。エミリーが部屋から出ると静かにルーカスが立っていた。

「陛……お父様、お忙しい中来てくださったんですか ?」

「あぁ、お披露目会へは私が連れていく義務のようなものだからな。」

ルーカスは会場へと歩き始めた。エミリーはルーカスの背広な背中を見ながら後を付いて行った。

「そのピアス、色が変わるだろう」

「はい、昨日は綺麗な透明だったのに、今日は青色になってしまいました。」

「そのピアスは魔具でな、主だと決めた相手の感情によって色が変わるらしい」

ルーカスは声色1つ変えずに言った。

「そうだったんですか。青色はどんな感情なんでしょうかね」

エミリーはルーカスに尋ねたがルーカスは「さあな」とそれだけ言って黙ってしまった。それから長い廊下を歩いていた。従者はおらず、たった2人であった。

「……お父様は私が好きですか?」

エミリーは無言を切り裂くように聞いた。その質問にルーカスは黙った。

「私は好きだと思っている。が、好きなのはお前のその容姿なのかもしれない。」

ルーカスは取り繕う言葉ではなく本当の事を言っているのだとエミリーにはしっかりと分かった。

「母に似ているからですか?」

「あぁ」

「私、お父様はとても不器用な方ですが、とても愛情深い方なきがするんです」

するとピタリとルーカスが足を止めた。

「どうなさいました?」

「…いや……なんでもない」

ルーカスはまた歩き出した。

会場にドアの前にくると、それはそれは大きな扉があり、侍従2人がかりで扉が開けられた。会場は大勢の人々が立っていた。そしてシャンデリアが眩しく光り輝いていた。エミリーは思わず目を細めた。ざわついていた会場の人々は皆頭を下げた。ルーカスとエミリーは人と人の間を歩いていき、中央の玉座の前に立った。玉座の横隣にはサラ、レイ、そのまた隣にノアとルイーズが、立っていた。エミリーの席はルイーズの隣であった。エミリーは自席の前に立った。

「今日から私の娘となったエミリー・ベルクトだ」

一斉に拍手が巻き起こった。そして皆口々に「お美しい」「綺麗な顔立ちをしてらっしゃる」とうっとりとエミリーを見ていた。それからパーティが始まるとエミリーの前には列が出来ていた。そして名前を言っては次がきて、名前を言っては次の人と、エミリーは覚えられるわけもないほどに名前を言われ、何度も丁寧にお辞儀をした。エミリは疲れきって、椅子に背中を預け座っていた。

「エミリー、姿勢が崩れていますよ」

サラは横目にエミリーを見ながら冷たい声で言った。エミリーはすぐに姿勢をただした。

「すいません」

そして自身も満更でも無い様子であった。ノアも同じく女性に囲まれてがクールな様子であしらっていた。椅子に座っているとルイーズが近づいてきた。

「あなた、全く殿方から話しかけられないのね。まぁあんな性格じゃあね」

そう言って鼻で笑った。

「お姉様は色々な方々とお話してらっしゃいましたよね。人が寄ってくるほどにいい性格をしてらっしゃるんですね」

エミリーは憎たらしく笑った。ルイーズは眉間に皺を寄せ、持っていた扇をエミリーの目の前に近づけた。

「私に歯向かうとはいい度胸ね。けれどすぐに痛い目見せてあげるから」

そう言って人混みの中に消えていった。するとエミリーの足元に紙が落ちた。エミリーは何かと思い拾い上げ、見ようとした時、人が近づいてきたので服の中に隠した。

「そう言えばノアお兄様と話してないな。けどまぁいっか」

皆が落ち着いてきた頃ピアノが弾かれ、男女で踊り始めた。それを待ち構えていたかのようにエミリーの近くにも男たちが群がってきた。

「エミリー王女ダンスいかがですか?」

「いや俺と!」

「いやいや私と」

男達は波のように詰めかけていた。皆エミリーの綺麗な顔立ちに下心が丸出しであった。

「わ…私ダンスはまだ踊れなくて」

エミリーは苦笑いしながらあしらった。

「俺がリードするので大丈夫ですよ!」

男達はまったく離れようとしなかかった。

「僕とダンスを踊るので下がっていてください」

そう言ってエミリーの手を取ったのはサラサラの黒髪にすっきりした顔立ちをした兄のノアであった。

「そっそうです、お兄様と踊りたかったんです。皆様ごめんなさい」

エミリーはノアに手を取られしどろもどろながらステップを踏み始めた。

「ダンスは出来ないんじゃなかったのか?」

「すこしだけ教わっていたので」

エミリーは踊りながらノアの目を見た。

「ほんとにエルフだな」

「母がエルフでしたので、それは…」

その時ノアはなにか悪寒を感じ瞬時にガラスの窓の方に手を真っ直ぐと伸ばし、エミリーを背にし薄い膜のようなバリアをはった。その瞬間弓のようなものがバリアに当たり、床に落ちた。

「敵手だ」

ノアがそう言ったとき、レイが窓を真っ直ぐ見てから転移魔法を使いどこかへ消えた。

「エミリーの小さな頭を的確に狙ってきたな、お前は部屋に戻れ」

ノアも転移魔法でどこかへ行ってしまった。

「どうゆうこと…?」

「エミリー王女様こちらへ!」

兵士が会場の出口からエミリーに大声で声をかけた。

「はっはい!」

エミリーが急いで向かおうとしたとき首筋にサッと悪寒を感じた、振り向く時には遅く矢が迫っていた。エミリーは死を感じた時、突如つけていたピアスが光だし、エミリーにノアがしたような薄い膜のバリアが全体にはられた。矢はバリアにあたり、また床に落ちた。

「なに……」

エミリーは目を丸くして立ち尽くしていた。

「大丈夫ですか!?王女様!」

「はい…」

「さぁこちらへ」

エミリーは兵士達に囲まれるようにして連れていかれ、会場を後にした。
































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