第3話 兄弟達は面倒くさい
「大丈夫ですか?お嬢様」
フィニーは怒りを帯びているエミリーに聞いた。
「ごめんなさい、私あそこまで言われたことなくってカッとなっちゃって。」
エミリーは言葉では反省しながら拳はぎゅっと握りしめていた。
「大丈夫ですよ。お嬢様は悪くありませんから」
フィニーは怒り狂うエミリーをなだめた。
「陛下は捻くれ者って言ってたけど兄弟達はみんなあんなの!?信じられないわ」
「いえ、長男のレイ様はとても優しいお方ですよ。次男のノア様も無口ですが、気が利くお方です」
それを聞いてエミリーは少し落ち着きを取り戻し、フィニーを抱きしめた。
「ごめんなさい、私取り乱してしまって。」
「大丈夫ですよ。お嬢様にお仕えするのが仕事ですから。それに私もイライラしていたんです!私は口が出せませんから、とてもスッキリしました」
フィニーはエミリーの背中に手を置き、ニッコリ笑った。
「ありがとう。フィニー」
エミリーとフィニーは部屋に戻った。部屋に入るとフィニーは深くお辞儀をした。部屋のソファには黒色の目にきれいな金髪をした顔の整った少年が青年が座っていた。
「おーやっと来た」
ニコッと青年は笑った。エミリーはじっと見つめていたが誰だかわからなかった。
「…どなたですか。」
「やだなー、君の兄のレイだよ。」
レイは数メートル離れていた距離を一瞬で詰めエミリーの手を取り「可愛いー」と言って手にキスをした。エミリーはこんなことは初めてだったためゾワッと鳥肌が立った。
「もっと不細工な子かと思ってたけど、めっちゃくちゃ美人じゃん!めっちゃ好みー♡」
そう言ってエミリーにハグした。エミリーはまた鳥肌が立った。
「み…皆様このぐらいフレンドリーなんですか?…」
「えー?これくらい距離近いのは僕とルイーズくらいじゃなーい?だって近い方がいいじゃーん」
だがレイの言っていることは理解出来なかった。ルイーズはとても意地が悪く、フレンドリーとは程遠かった。レイはエミリーの白い頬にキスをしようとしたがエミリーが手で防いだ。
「すいません、私はそのような経験はありませんから」
「つれないなー」
そう言ってレイは離れた。
「あの、何故今日の昼食にいらっしゃらなかったんですか?」
「えー?お母様が厳しいから、あとルイーズ最近ベタベタくっついてくるんだよ」
レイはドサッとソファに座った。
「レイお兄様はくっつくのがお好きなのでは無いのですか?」
「くっつくのは好きだけどさー、くっつかれるのは嫌だ。つれない女の子とかめっちゃ好き」
レイはエミリーに投げキッスをした。エミリーは少し間を開けた。
「お腹減ってませんか?」
「理由つけて皆が食べる前に済ませた。それよりさ、明日のお披露目会楽しみでしょ?」
「お披露目会って?」
エミリーは首を傾げた。
「エミリーのお披露目会だよ。世界各国から使者がくる。隣国のエルベミエル魔道帝国のエルフ来るだろうな」
レイはあまり嬉しそうではなく、眉間に皺を寄せていた。
「何か悪いことでもあるのですか?」
「今エルフ達は混乱してるだろうな。王族の血縁者がお前の母親で途絶えていたんだ。けど王族の血を引くエミリーが見つかった。どうやってエミリーを帝国に引き抜くか会談でもしてるだろうな」
「私はエルフの王族血縁者でもあるんでしたね。ふとすると忘れてしまいます。」
エミリーはまたややこしいことになったなと疲れが溜まった。
「お前が気負うことはないさ、明日は楽しめよ。」
レイはそう言ってエミリーの部屋から出ていった。
「なんだか王族とは思えないほどに気品がないじゃない。あれが長男ってこの国は大丈夫なの」
エミリーはフィニーとリリに小声で言った。
「レイ様は戦線の前線にも出ていましたし、魔法、勉強、どこをとってもとても優秀なお方です。色々な国に回って陛下の右腕のようなお方ですよ。」
「一応ちゃんとしてるんだ」
エミリーは魂が抜けるようにベッドに倒れ込んだ。
「大丈夫ですか!?さすがに疲れましたよね!」
フィニーはエミリーに駆け寄った。
「私紅茶入れてきます」
「コップは三つ持ってきてちょうだいリリ」
リリは頷いて急いで部屋から出ていった。
「…ドレス脱いでいい?…コルセットがキツい」
「わかりました!ただいま楽な服をお持ち致します!」
フィニーはドレスルームから締め付けない服をいくつか持ってきて、エミリーのドレスを脱ぐことを手伝った。着替え終わるとエミリーは紅茶を飲んで落ち着いた。
「フィニーとリリも一緒に飲まない?」
「いえ、私たちはただのメイドですから。」
フィニーとリリはエミリーの近くで立っていた。
「なんのために私が三つコップを持ってきてもらったと思ってるの?さ!ここに座って!」
「で…ですが」
リリがアタフタしながら言った。エミリーはもう紅茶を淹れ始めていた。
「紅茶は嫌い?」
「滅相もない……失礼します」
フィニーは根負けし、エミリーの隣りに座った。リリもつられるように座り、紅茶のカップを手に取った。
「とっても王宮の紅茶は美味しいわよね」
「本当です!私使用人用のものしか飲んだことしか無かったので」
フィニーはパーッと目を輝かせた。リリも静かに笑って頬を桃色に染めていた。
「お嬢様、明日はお披露目会ですから、しっかり体をお休めくださいね」
「えぇ、ありがとうフィニー」
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