第10話 初恋
「アンタ何それ?そんなもの作れって言われてないじゃん。」
「でも、作るものに指定はなかったし…」
それは結愛が中学1年生の頃だった。
家庭科の授業で皆がそれぞれ作製をしていた時、彼女はクラスの一番目立つ奴に目をつけられたのだ。
「は?そういうとこが生意気なんだけど!作り直せよ!」
「えっ、でも…」
どうやらその女は、結愛だけぬいぐるみの洋服を作っているのが許せないようで罵倒したようだ。
そして一緒にいた仲間達まで、彼女に悪口を言い始めた。
結愛は皆から責められ、言い返すことも出来ない。
だんだん辛くなり体を震わせていた時だった。
「あら、何を作っていてもいいじゃありませんの。それに自分が一生懸命作ったものを他人に否定されたら誰だって嫌な気持ちにならないかしら?」
「ちっ、うっせぇな。じゃあ好きにしろよ!」
そこへ現れたのは他の人とは一風違った雰囲気の女子生徒。
その人物はなんと高級食器メーカーのお嬢様、雅きららだった。
彼女がそう言い放つと、相手は捨て台詞を言って立去っていく。
「あの、雅さん。」
「きららでいいわよ。」
「えっと…きららちゃん、助けてくれてありがとう。」
結愛は助けてくれた相手にお礼を伝えると、ほっとしたような表情をみせた。
きっと何も出来ず怖かったのだろう。
「よろしくてよ。でも貴方が思っていることはちゃんと主張した方がいいわ。主張をすればあのような彼女達なんて怖くないもの。」
きららはすました顔で、考えを述べると結愛の肩に手を添えて励ます。
「それとボタン一つ足りないようだから、良かったらこれ使うといいわ。」
そして彼女が作っていた洋服をみると、自身が作製した時に使っていたボタンを彼女の机に置きその場を離れていく。
そんなきららの姿を見て、結愛は強くなりたい
しっかりと自分の意志を伝えられる人間になりたいと憧れを持ったのだ。
それから彼女はまず外見から変えてみようと、下ろしていた髪をきららと同じツインテールにしてみる。
さして変化はないのだが、本人にとっては少しだけ勇気が湧くような気がした。
そして何ヶ月か経つうちに、その憧れは恋愛感情へと徐々に変化していったのである。
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