第9話 アンタなんかに
「いただきます!」
食事の準備が整えば、皆で挨拶をしてそれぞれカレーを食べ始めた。
しかし、結愛の手だけは一向に動かない。
「ちゃんと食べないとお腹空いちゃうよ。ほら、あーん。」
郁利はそんな様子を見かねて、スプーンでカレーをすくうと彼女の口に運び食べさせる。
するとお腹は空いていたのか、少しずつ口を動かしながら与えられたカレーを食べ終えるとおもむろに話し始めた。
「私、何も出来なかった…一緒にいたのに。」
「結愛?」
「きららちゃんを守りたかったのに。」
先程まで黙っていた結愛がぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。
「つーかお前はアイツに執着しすぎだっつーの。自分の危険も顧みず…」
「は?私がきららちゃんに本気で恋して何が悪いの!?」
「いや、悪いとは言ってねぇけど。」
「あんたなんかにわかんないよ!」
少しの沈黙が流れたあと、最初に口を開いたのは真祐だった。
彼が呆れたように言葉を投げかけると、彼女は立ち上がりひどく腹を立てて言い返す。
そして言い終わると、涙を浮かべながら走ってその場を立ち去った。
「結愛!」
「私様子を見てくる!」
郁利が声をかけても止まらなかった為、花凜は皆へ一言告げると、急いであとを追いかけていく。
「…なんなんだよ、アイツ。」
真祐は結愛が走り去ると、バツが悪そうな表情をしてため息をついた。
言いすぎてしまったと感じているのだろうか?
「ごめんね。結愛はあの時から雅さんに恋着しずきて、あぁなってるんだと思う。」
「あの時?」
彼の様子を見た郁利は幼なじみのしたことに謝ると、ふと中学の頃を思い出して2人へ話す。
十和はその言葉を不思議に思いつつ、彼の話に耳を傾けた。
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