不安
晩餐会が終わり、俺は自分の部屋に戻った、手の中にはテレサ王女がくれたカギがある。それを何度も握ってその存在を確かめる、そのせいかカギは手汗で濡れている。それを上着で拭いて再び握りしめる、これでもう一度彼女に会える。
「今夜零時にリラを君の部屋にノックさせるから、ミサに会いたいなら出ればいい。だけどそのままは駄目よ、もっとちゃんとした顔で会ってあげて」
王女の言葉を思いだし、俺は覚めてから初めて自分の顔に触れた、髭が所々生やしていて髪も元よりかなり長くなってた。
....俺はこんな格好で王族と会見していたのか、....あとで謝らないと
とりあえず今はシャワー浴びて、髭剃りを済ませよう、それからは....
これといったことを一通りすせたら、時はすでに零時に近い。
俺はミサの手紙を手にとって、そして気付いた、俺の手が
....いくら見たしなみを整えても、俺は未だ怖かっている、ミサに直面することを、テレサ王女が言いたかったのはこっちだったかもしれない。
彼女を救えなかった俺は一体どんな顔で彼女に会えばいいのか....わからない、だけど会いたい、もう一度彼女に。
不安と小さな期待を胸に、俺は立ち上がる。そして鐘が鳴った。
零時を示す十三の鐘の音はいつもより長く響いていると思っていたら....
扉の方からノックの音がした。
出ようと思ったら、何故か背中にツンっと寒気がした。振り返ってみれば、そこの壁に掛けたままの剣がいた。
俺が手に入れてずっと使っている剣、名前こそなんだかんだ未だつけてないが、何度も助けになっている相棒だ――そしてあいつはいつもこうやって危険を示してくれる。
剣に付けられた魔晶が昏く光りだし、中にかが渦巻いているように見える。
「行かせたくないのか?」
言い終えた瞬間に身体の底まで浸み透るほどの寒さから一気に解放された....それが答えだろう。
「だけど....ダメなんだ、俺は行かないと行けないだ....なぁ、一緒に来てくれるか。」
魔晶は一瞬だけ強く光った。
「っ....ありがとう」
俺は剣を持ち上げ、ベルトを腰につけた、あとは出るだけ。
扉を開けると、リラがじっと俺を睨ってる。
「すまない、二度も待たせ....っ!」
歩き出そうとしたら、リラが素早く足払いして来た。俺それに反応出来ず受けて前に倒れこむ。すぐに重心をさらに低くして踏ん張ってプロポーズのようなポーズをとり、剣で時間稼ぎの反撃しようとしたら目の前が真っ暗になり、そして息ができない。
少し無理して体を起こすとそこには山があった。
リラはそのまま俺の頭を抱きしめ、立ち上がる。それにつれ俺の体も彼女の方に引かれ、体格差にせいで俺は跪いていた。
無意識に俺はそのまま両手を彼女の背中に回し、リラはびっくんっと体を揺らしたがそれ以上の抵抗はしなかった、そして俺は気付いた。
俺の胸の高鳴りと有り得ないくらいの手足の寒さに。
剣との一件もあるが、多分それ以前に俺は
であればリラがこんなことをして来たのも理解は出来なくもない、俺の状態を察してとった対応策っといったところか「ちゃんとした顔」でミサを会えるように。
....なら俺は彼女の好意に甘えるとしよう。
俺はそのまま目を閉じリラの体抱きしめ、その体温を感じながら、ゆっくり手足の寒さが引くのを待つ。
「....いいよ」
....リラは何か囁いたが、聞こえないことにしよう。
「....すまない、恥ずかしいところを見せたな。これでミサに向き合えそうだ、ありがとう、リラさん」
ゆっくり手を離して立ち上がりながら、俺はリラに礼を言う。
リラは一瞬顔を顰め、振り返って一人で歩き出す。
「....では、こちらに」
棘々しい声に聞こえるが、俺はその後をつけることにした。
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