姫君
「アルバート様、お時間です」
瞼を開けるとすでに日が暮れて、メイドが外に待っているようだ。
「すまない、まだ少しかかりそうだ」
「わかりました、何かお手伝いが必要でしょうか」
「いや、自分でやる」
「はい、かしこまりました」
部屋の隅に置かれている俺の荷物から、唯一持っている司祭の正装を取り出し、それに着かえる前に一応自分に気休めの『クリーン』を掛けておく。
手早く着換えを済ませ、扉を開けるとメイドは扉からちょうどいい場所に礼をしていた。
「では、こちらに」
謁見なんて半年以上していないな、礼儀作法などはうろ覚えではあるがまだ大丈夫。国王陛下の方は....、まぁ....テレサ殿下がフォローしてもらえるなら大丈夫でしょ。
にしてもテレサ殿下か....懐かしい名前だな、前回会ったのも急ぎの案件であんまり話せなかったし。まだ今度会う約束こそしているが、中々うまくいかなかったな。
テレサ殿下はこの国の第一王女にして軍の代言者、普段の喋りや物腰は穏やかで容姿端麗を着せた顔立ちではあるが、彼女を侮る人は少なくともこの大陸にはいない、何故ならその地位は実績だけで築き上げたのだから。
僅か12歳で戦場に立ちながら冷静に判断し、救えない部隊を切り捨てる冷徹さ、
当時こそは彼女のやり方を非難する者はいた、「何故それらの部隊を一緒に救ってやれなかった」「本当に切り捨てる必要はあったのか」などもしくはそれ以上の明らかに八つ当たりな言葉を彼女に投げた時に、彼女はその度頭を下げて謝る。もちろん王族としてはあんまりよろしくないことだが、彼女はそういう方だ。
今ではそんなことを言う者はもういない、きっかけとしては彼女がやりすぎて自分すら切り捨てようとしたあの件でしょうけど、それよりも彼女を非難しようすると
「アルバート様、申し訳ございませんが、少し身体検査をさせて頂けませんか」
「構わない」
あれこれ考えていたら、晩餐会の会場についたらしい。....晩餐会と言っても国王陛下、テレサ殿下と俺三人だけの非公式なものだが。
メイドは俺の答えを聞くなり、すぐさま行動に移し、体のあっちこっちをポンポンし始めた、....古い方法ではあるが有効でもある。
そっと彼女は俺の後ろに回り、顔を埋めるように抱き着てきた。服越しだが確かにリストの情報通りな感触が伝わってくる。そして俺がまだ動揺している間に目の前の扉が開かれ、メイドは素早く手を離し俺の左後方に立ち頭を下げた。
「何かあって遅れていると思えば随分いい趣味してるではないか、アル。私を待たせて別の女と遊ぶなんてね」
目の前にテレサがいた、ジっとこっちを見ていた。
「じっ....違う、そっちのメイドが抱き着てきただけだ」
メイドの方に向けると彼女は床に座り込んでハンカチを取り出し、涙を拭くふりをしていた。
「なっ....!」
「まぁ、いたずらもそれくらいにしてやれよリラ」
「はい、かしこまりました、テレサ様」
するとメイドはすぐに立ち上がりテレサの後を追い、会場の中に入って行った。
....俺を残して。
それから晩餐会は普通に進行した、....国王が始終俺を睨み付けていること以外はな。
話の内容としては旅の途中に起きたことの詳しい説明と俺に王国最近の起きたことを知らせることだった。
「....ねぇ、アルはミサに会いたい?」
「⁈....会えるなら会いたいに決まってる!だけどあの子はもう....!」
「もういないだ」っと言だす前にテレサはこう言った
「まだいるよ、今はね」
「テレサ!そのことは!」
国王はテレサの話しに口を挟む、だがテレサはこう言った
「内密にでしょ、ならアルは教会関係者別に知られてもいいはずだ、それと彼はもっとも知る権利があると思うわ。」
「....なら勝手にしろ!わしはなんも知らん」
それを言い捨てて国王は退室した。
「....本当によかったのか」
「....えぇ、些細なこと気にしなくていい、ちゃんと別れをつけてあけて、私の親友に」
そう言いながらテレサはカギを渡してきた。
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