第6話 研究とデート
そうして、何故だかはっきりしない気持ちと、楽しさを抱えながら、ルーエン様とは週一くらいで会っている。
「ですからね、それぞれの魔法属性が異なっても反発せずに解除できるようにですね……」
「なるほど。そうなると……」
色っぽい逢い引きではなく、ほぼほぼ公爵邸か
毎回、「今日も研究で終わってしまった。次回こそはどこかに行こうか」と、ルーエン様が申し訳なさそうにしてくれるのだけれど、私的には問題はない。いつも一人で研究をしていて、他人がいると邪魔に感じていたけれど、ルーエン様はむしろ、一緒にいてくれると研究が進むのだ。そう感じるのは、二人の聖女のお二人以来だ。
そう答えたら、「あのお二人と同じく思っていただけて光栄です」と、真剣な顔で、でも少しおどけた笑顔で「本当に嬉しい」って言ってくれた。「私もとても勉強になるよ。こちらも予定より早く開発が進みそうだ」とも重ねて言われて、私もとても嬉しかった。
やっぱり私って、研究者気質が強いわよね。そしてルーエン様も。でも、それはそれでいい。お互いに研究で高め合える人なんて、そういないもの。うん、それだけでもありがたいご縁だ。
そんな事を頭の隅で考えつつ、二人でいつもの研究談義をしていると、部屋のドアがノックされた。
「ルーエン様。そろそろお時間でございます」
頭を下げて入って来たのは、リズだ。
「ああ、もうそんな時間か。ありがとう、リズ」
ルーエン様が答える。
「とんでもないことでございます。馬車の準備もできております」
「……ルーエン様、本日はもうお帰りですか?残念ですわ、これからこちらの宵魔法の効用についてのお話をと…」
まだお昼前だ。いつもは夕方のギリギリまで議論しているのに。ちなみに、二人共に寝食を忘れるタイプなので、毎回侍女さま達が軽食をごり押しして、私達が食べるまで部屋で待機をしてくれている。ご迷惑をかけております。だって、キリのいいところまでやりたいじゃない。って、ともかくそんなで、夕方までいるのに。
想像以上にがっかりしている自分に気づく。
「ふふ、お嬢様、お寂しいですか?」
「リ……!だ、だって、本当に途中だから!」
リズの揶揄うような言葉に、咄嗟に否定のような言葉を返してしまう。
「……寂しがってくれないのは残念ですが。まだ帰りませんよ、ダリシア嬢。振られた後に恐縮ですが、今日こそデートしませんか?来週からは学園も始まってしまうでしょう?リズに今日は早めにしっかり声かけを頼んでおいたのですよ。『ファータ・マレッサ』にランチの予約をしてあるのですが、ご一緒していただけますか?」
胸に左手を当てて、右手を差し出すルーエン様。
先ほどまでの研究者の顔から、急に紳士然とされて、ドキドキする。
それに行き先は、乙女の憧れの茶寮『ファータ・マレッサ』。オーナーご夫婦の馴れ初めから、恋愛の聖地のひとつになっているのだ。
だから今朝、どうせ今日も研究室よと言う私を無視して、やけに小綺麗にリズが支度をしてくれたのね。
「今更だけれど、あまりにも婚約者候補らしくなく過ごしてしまったからね。挽回させて?」
だ、だから笑顔が眩しいです!やっぱり私、恋愛耐性がなーい!!
「研究談義だけでも充分楽しかったですわ。で、でも予約をしてあるなら、せっ、せっかくですし、参りましょう」
噛み噛みで言いながら、ルーエン様に手を添える私。
格好つかないし、なぜかツンツンしちゃうし、慣れてないのがバレバレだろうし、全てが恥ずかしい~!
分かってる、分かってるから、そんなやれやれ感丸出しで見ないでよ~!リズ~!!
そんなダメダメ娘にも、柔らかく微笑んでくれる、優しいルーエン様。
「お付き合いありがとうございます。シア姫」
「!!それっ…!」
「ん、ダリシア嬢に再開してから、たくさん昔を思い出してね。そう呼んでと言われていたなと……」
「わ、忘れて下さい!」
前言撤回、全然優しくない!イジワルだ!すんごい楽しそうな顔をしている!
「ルーエン様、結構いじわるですのね?」
少しむくれてしまう。研究では対等に感じるけれど、やっぱり基本は手のかかる妹なのだ。
「ごめんごめん。怒った?昔の可愛いダリシア嬢を思い出して、ついね。…今も可憐だけれど」
「……!!お、怒っては、いません、けど……」
「良かった。じゃあ、時間になってしまうし、行こうか」
「はい…」
さらりと恥ずかしい言葉を言える、ルーエン様に敵う訳もなく。私は大人しくエスコートをされて付いていく。
リズの生温かい目も気になるし、ルーエン様ペースも何だか悔しいし、ふわふわしている自分も信じられないのだけれど。
自分には縁のないと思っていた、恋人…ではないけれど、、、との『ファータ・マレッサ』でのデート!
開き直って、満喫してやります!!
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