第5話 【大賢者】の苦労
□
「さてと、そろそろ入学式だね。全くあの子ったら、いつになったら来るのかしら?」
そう言って、私はこの学園【栄王学園】の校長室で愚痴を漏らしていた。今はここに独りだし、わざわざロールプレイングしなくてもいいてのもあるけど…。やっぱりこっちの喋り方の方がらくねぇ〜。て、そうじゃなくて…!そろそろ、来る頃だろうし、入学式も近づいてきてるから、アバターの方にしときますか。
「セット-【大賢者】Izumi Morias」
宣言しないと、【混合世界】のアバターに変えられないのは、ちょっと恥ずかしいわね。あ、いけない、こっちのアバターなんだし、ちゃんと喋り方も寄せないとね。
「それにしても、
それに、入学式始まる前に晴れ姿くらい見たかったのじゃが。もうそろそろ、40分前じゃぞ!?儂、15分前には会場入りしておかなきゃならんのだが……。
「はぁ……、どこで道草を食っておるのやら。いや、めんどくさくなって帰ったか!?いやいや、彼奴も一応常識というのもあるじゃろうし、何気に儂の言うことは8割くらい守ってくれるしの……」
まあ、気楽にしとけば、彼奴のことじゃ、30分前にはきてくれるじゃろ。私も、いや今は儂の方じゃっな。儂も、ここに集う未来の英雄の卵たちに伝えたいことでも
-30分後
来ななんだぁぁぁ〜!彼奴、方向音痴じゃし一緒に行かないと絶対迷うと思ったから呼んでいたのもあるのに!普通、母親代わりの儂が!入学式前に!約束までして、呼んだのに来ないやつおるのか!?
「どうしようなのじゃぁあ。秘書ちゃんに朧 《おぼろ》を特別ゲスト兼入学式代表にした て言っちゃったのじゃあ。」
あんなんでも世界1位じゃし、めっちゃ凄いし、母親特権使ってちょっと自慢しちゃおなんて思わなければ……!どどど、どーしよ。いや、ちゃーんと分かりやすいように地図も描いて送ったし大丈夫なはずじゃ!代表の挨拶は、半分くらいに設定しておるし、なんなら最後10分前に来れば、ギリギリ大丈夫なように設定しておる…。
「あの、すいません。学園長。大丈夫ですか?汗かいてますけど、もしかして緊張でもなさっておるので?」
秘書ちゃんが心配そうにハンカチくれる。この娘、ええこやのぉ。いや、和んでる場合じゃないのじゃ、あの阿呆が来なかった場合、儂、めっちゃ大見得切ってた恥ずい奴になるじゃ……!それだけは、それだけは回避しなければ!
「い、いやぁ、ぜ、全然緊張なんかしておらんぞ?儂、これっぽっちも、ぜんっぜん、大丈夫じゃぞ?」
「ふふっ。そうですか。いえいえ、分かってますよ。」(今日も可愛いわぁ、学園長。はあ、そんなに見栄をきって、そんな姿も尊いわァ。ぺろぺろしたい)
「ひ、秘書ちゃん……?す、少し怖いのじゃ。なんで儂のこと見ながらじゅるりとか言ってんのじゃ」
「はっ。も、申し訳ありません学園長。あ、入学式の件でお伺いしたいことがあったのを忘れてました」
「おう、なんじゃ?」
「代表の挨拶、本当に、あの
「ぶふぉっっ。ごほっ、えほっ、」
まさか、ここでクリティカルな話題に触れてくるとは……。さ、流石儂が見込んだ秘書ちゃんじゃ。危うく、緑茶が鼻から出かけたわい。乙女が見せる姿を崩すとこじゃった。
「大丈夫ですか?」
「あ、あぁ、大丈夫じゃぞ。も、勿論じゃ、月龍には、ちゃんと伝えておるし、彼奴も了解しておったからな。はは、ほ、ほんとに大丈夫じゃぞ?」
「そうですか?なら、良いのですが。いやー!!凄い楽しみです!!私、月龍さんのファンなんですよね〜!学園長があの方の母親代わりというのも仰天でしたが、そのおかげでこうして生で見れる機会をあずかれるなんて!後でめっちゃオタ友に自慢しますねっ!」
「そ、そうか。うん、まあ、ちゃんと来てくれるさ……」
「え?なんか言いました?」
「いや、なんでもないぞ。なんでもない」
お、終わったーーーーーっ。どーーーしよっ、めっっちゃ期待されておるーーーー!マジで来なかったらどーしよっ。ゆ、許してくれるじゃろおか?あーーー、も、もう始まるぅううう。
「さ、学園長。入学式が始まりますよっ。行きましょう!」
「そうじゃの、行くとするかの…」
-現在
「大丈夫ですよ?学園長、見栄を切ってたのは知っていました。私も世界1位が来るなんて思っていませんでしたし。ね、だから、もうそろそろそこをどきましょ?」
「う、うわぁぁぁ〜〜!違うのじゃ違うのじゃちーがーうーのーじゃーー! ほんとに約束してたのじゃ!見栄なんかじゃないのじゃぁあ!」
「はいはい。じゃ、さっさと行きましょうねー」
「お主、儂の扱い雑じゃない!?儂、全校生徒の前で赤っ恥かいたのじゃぞ!?皆から、生暖かい目で見られて、なんか優しく拍手されたのじゃぞ!?」
「ふっ。学園長に期待した私がいけないのです。それに赤っ恥なら、私も友達にかきました。学園長のせいで、ね?」
「あれ?もしかして結構怒っとる?だだだ、だってぇ、約束したんじゃモーン」
「もーんじゃないです!まだ言うんですかっ!全く……っ」
「うぅっ、ご、ごめんなのじゃ〜〜」
おのれ、彼奴めぇええええ。絶対、許さん。儂にあんな赤っ恥をかかせおってぇええ。必ずとっちめてやる!にしても、彼奴が儂との約束すっぽかすのは珍しいの。ふむ……、少し視てみるか……。
「スキルセット-【
さてさて、彼奴に何があったのかのぉ。そこ瞬間、この学園内で起こった朧に関する情報、そして情景が脳内に流れる。ふむふむ、そうか。彼奴、弟子を取ったんじゃな?ほう、なるほどのぉ?今、帰ろうとしておるなぁ?彼奴にとって、そして弟子になった香和さくらにも、良い事じゃから、かるーいお仕置で許してやろうと思っていたのじゃが。今、許すことはやめたわい。
「スキルセット-【
□入学式終了後 霧宮朧
ふぅ……。やっと保健室に辿り着いた。北校舎の1階の端とか分かりづらいとこありやがって。さて、と今何時かな…
「やべぇ。確か入学式始まるの、て10:00からだよな。もう半じゃん。やばい、これはやばい。めちゃんこキレられる未来しか見えない」
うん。もういっか。入学式の代表挨拶とかめんどいし、まあ、何とかしてくれんだろ。折角だし、もう少しさくらのこと見守ってから帰るか。
「すんませーん。失礼しまーす」
さっき一度入った時、既に誰もいなかったけど念の為。さくらが寝てるから小声でだけど……、誰か居たら困るしな。えーー、と保健の先生的な人は居なさそうだな、よしセーフ。ここでサボってから帰るか。
「それにしても、こいつよく寝てるなぁ」
「うにゃあ……。う、助けてよぉ…、誰かぁ…………」
ほっぺふにふにしてたら、泣き出した。やべえ、悪夢見始めたのか?いや、そりゃそうか。
でも、今は、今だけは、たっぷり休んで欲しいから……
「よしよし。お前はもう大丈夫なんだよ。なんたって、俺が師匠になってやるんだから…」
「ふへ…………。おぼろししょぉ……」
お、なんか安心したのかね。少し顔が和らいだ。たく、もう少しだけ見守ったら帰るとするか。それにしても……、こいつめちゃくちゃ可愛いなっ!?
さっきまで意識とかしてなかったけど、こうして寝顔見ると、まつげ長いし、前髪長いから分かりづらかったけど、顔がエグい整ってる。はは、こりゃあ、今後の修行で顔に傷を付けることにためらいが生まれるな。まあ、それはちゃんとスキルで治せるから、良いんだけど、うーーむ。修行のためとはいえ、どうするか……。
「んぁ……?ししょ〜?ろーして、ここにぃ……。…?」
「あ、わりい、起こしちまったか。何でもねえよ、もう少し寝てな」
「は…い。へへ……、ししょお」
「ん?」
「ありがとぉ、ごじゃいましゅ……、
くぅ……くぅ……。…………」
は、ははっ。全く、今はそんな無粋なことを考える必要は無い、か。この
「時間は、と。うおっ、もう12時か。こりゃ、急いで帰らないとな。じゃな、さくら。また明日」
そう言って、少し名残惜しくはあるけど、帰ることにした。ぶっちゃけ、ばあさんに叱られるのは目に見えてるから帰って言い訳の準備でもしなきゃだし。よーし、サクッと帰るか。そんなふうな事をのんびり考えていた時期が俺にもありました。
「よう。クソガキ?てめえ、何帰ろうとしてんだ、あぁん!?」
門を出る直前だった。多分【
「えー、とごめんなさい。んじゃ、さらばだっ!」
「…………、は?待てやゴラァァァ!!!」
その後、なんとか和解?はしたものの、無事に家には辿り着けました。まあ、家に帰ってから入学式に参加してなかったことを妹に問い詰められたりしたが、
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