第4話 最強は、どこか抜けている
□霧宮朧
まさかこの俺が弟子をとることになるとは…。初めてだ!こんなにもワクワクしてるのは!まさか、この俺が弟子を取る事になるとは、気分が高揚する!
「くくっ。ハハハハハ‼はっはははっ!」
あぁ…、なんて…なんて楽しいんだ‼
あの少女―
「わたしを弟子に、か…。」
あの時のさくらの眼、覚悟・期待、そして恐れ…、そんないろんな感情が混ざり合ってる綺麗な眼。
「あんな眼、されちまったら弟子にしたくなっちゃうよなぁ~」
さて、現実逃避の回想が終わってきたけど、この状況どうしよ?
「ごんらぁ!出てこんかい、クソガキがあああ!」
いや、もう、ほんとにどうしてこうなったんだ…?
よし!今一度、整理してみるか…。
——3時間前。
「よかったよ~…」
「お、おい。ど、どうした…?」
「だっでぇ~~…。うぐ…。ひっぐ…。うぇええぇ~…。」
これは、しばらく泣き止まないしなぁ。えーと、とりあえず少し落ち着かせるか。
「よく頑張ったな。改めて弟子としてよろしく」
そう言って、頭を優しく撫でた。うん、まあ泣いている女子には滅法弱いから、これで泣き止んでくれたら嬉しいんだが…。
「うぇ、ヴぇ〜〜、うえっ、うっ、ぇえぇええええ〜〜んっ……」
あれ!?なんか更にないちゃったんですけど、え、ど、どーしよっ?ええいっ、もうそのまま言うか。
「あー、ごめんな?泣き止んでくれないと困るんだが…」
「ご、ごべ、ごべんなざい。わだじ、ごんなごど、いわれだのはじめでで、ずずごぐ、うれじぐでぇ」
「あー、もう分かった。わかった。」
こいつは、本当にずっと頑張ってきたんだな。ほんとは、時間的な余裕はそこまで無いんだが、泣き止むまでこのままにしとくか。
-30分後
「す、すいません。お、お手数お掛けしました…」
あの後、たっぷり泣いて泣いて泣きまくった目の前の少女は、めちゃくちゃ顔を真っ赤にしながら謝ってきた。顔、ぐっちゃぐちゃじゃん。ほら、ハンカチ。
「あ、ありがとうございます。」チーんッ
あ、こいつ鼻かみやがったな!?はぁ……、今回だけは許してやるか。そろそろ本題に入っとかないと時間ないし、一番重要なこと済ましとくか。
「で、君の名前は?」
「ふへ……?え、あ、え、ご、ごめんなさい!伝えてませんでした!え、えと、わ、わたしの名前は
うん。やっっと名前聞けたぁ。いなあ、スッキリしたわ。なかなか名前聞く流れにならないから、初弟子の名前を知らないまま別れるとこだった。
「よし、さくらだな。俺の名前は
「ふ、ふふっ。はいっ!よろしくお願いします、朧師匠!」
そうして、俺と少女、いや俺とさくらの師弟関係はスタートした。泣き腫らした赤い目で、ちょっぴり不格好に笑っている少女は、この4月の晴れ空と舞い落ちる桜が良く似合うように思った。
「んじゃ、俺、この後入学式だからもう行くわ。じゃあな、さくら。また、後で」
「え!?同学年なんですか!?それに入学式、て今何時ですか!?」
まさかの、初弟子は同い年でした。いや、マジかよ。小柄だし、てっきり中3くらいかなぁ、と思ってたんだが。
「今か?今だと、始まる20分前だな」
「結構ギリギリじゃないですか!急ぎましょ……、え……っ?」
「うおっと。おい、だいじょ、ぶ、か……。て、ははっ、寝ちまったか」
そりゃそうか、俺が来るまでボッコボコにされてたし、その後は
「たく、仕方のない弟子だな。まだ、少し余裕もあるし保健室にでも連れていけばいいか。そこなら、さくらを休ませられるだろ」
-現在
と、回想も終了した訳だが。いやはや、まさかあれから思いっきり迷うとは思わなかったわ。ここの校舎分かりにくいんだよ。校舎ごとに別れてるわ、南校舎?東校舎?しかも、校舎と校舎の間も徒歩15分くらい間あるし。
「ほうほう。で?それが、そ・れ・が!儂との約束すっぽかした言い訳か!?ええ!?お前さんのせいで、儂、入学式で赤っ恥くらったわ!今回ばかりは許さんぞ!」
「ぎゃーーーっ、ちょいまっち、ぎ、ぎぶぎぶぎぶぎぶーっ!か、関節外れるぅ、はずれちゃううううっ」
くっそ、こんのババア。確かに、約束破ったことは悪いけどさぁ、仕方ないじゃん迷っちゃったんだもーん。
「なんじゃあ?ちゃんと反省しとるんか?これでも儂、お主が通う栄王学園の校長じゃよ?【大賢者】じゃよ?」
「あーー、悪かった悪かった!反省してるよ、確かに俺が悪かったっ!だから、頼むばあさん、早くこれ解いてくんね?」
「はぁ〜〜〜〜、仕方ないのぉ。事情も事情じゃから、今回は使いっ走り3回で許してやるわい」
「え、3回も?」
「あぁん!?」
「いえ、なんでもないでーす。やらせて下さいお願いしやっス!」
「はぁぁ〜〜〜〜、もうええよ」
あっぶね、さっきめっちゃ威圧はなってきてたわ。しかも、割と本気めなの。
「で、儂の言った通りじゃろ?お主にとって面白いことちゃーんと、あったじゃろ?」
「はは、そうだな。ばあさん、ちゃんとあったよ」
「なら、いいんじゃよ。お主が、ちゃんと
「ほんと、感謝してるよ。ありがとな」
まさか、あの約束がこんな形で実るとは思ってなかったな。
-約束
俺が栄王学園に来た理由。それは、このばあさん。俺と俺の妹が世話になってる親代わり件、この学校の学園長であり【大賢者】と呼ばれ、ワールドランキングも12位。見た目は腰まで伸びた銀髪に身長140未満の合法ロリ(アバターは【
ま、ここで冒頭に戻る訳でして。いやーー、迷った挙句、めんどくなってサボったんだけど、普通にバレたね。まあ、校長室に来て欲しい、てのは普通に忘れてたんだが。まあ、それは置いといて。流石に、2時間遅刻は不味かったわ。もはや、誰もいなかったし、入学式をやるて言ってた体育館。で、こっそり帰ろうとしてたのが見つかった訳でして。くっそ、あの人のチョークスリーパー、俺でも抜け出せないの意味わからん。一応世界1位だよ、俺?
「で?どうじゃった?」
「ん?」
「お主、聞いておらなんだな?香和さくらのことじゃよ。お主、あやつを弟子にしたんじゃろ?」
やっべ、約束のこと思い出してたから聴き逃してたわ。え、とさくらのことだよな。
「あぁ、さくらね。うん、いい眼をしていたと思うよ。諦念や絶望、だけどそれより強い渇望と希望。あれは、化けるかもしれないな」
「ほぅ……、お主にそこまで言わせるか。かかっ、いい出会いをしたな、朧。」
「おう、そうだろ?初弟子だしなわ手塩に掛けてしごき倒すとするわ」
「ははははっ。そうかい、そうかい。それはご愁傷さまだねぇ、あの子も」
そう言って、穏やかな笑みを浮かべた。きっと、それは俺への心配を少しやわらげた笑みであり、さくらのことも気にしていたんだろう。ほんと、お人好しな教師をやってるよ。
「あ、そうじゃ、お
「うわ。そうだった、完全に忘れてた」
「まあ、健闘を祈っとくわい。香和の方は、念の為わしが護っとくよ。」
「おう、助かるわ、じゃあ、また家で」
「そうじゃの、またな、じゃ」
はあ、お使い3回も怖いが、雪月の方もな。妹に兄離れをして欲しくもあるんだが、一難去ってまた一難とはこの事だなぁ。さくらを鍛えなきゃ、てのもあるし…。うん、疲れたな、今日はもう何も考えずにさっさと寝よーっと。
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