第37話 沼②
「よし、一丁あがりね!」
「どこがだよっ!」
流石にツッコまざるを得なかった。たしかに、リザードマンは倒せたけどさ、味方の英霊まで吹っ飛ばしといて可愛い歓声上げてんじゃねぇよ!杖をクルクル回して格好つけてるし!魔法少女気取りかよ!
「何よ!倒せたんだから良いじゃない!」
あの、リリアラさん。あなた、見た目幼女ですけど、けっこういいお年でしたよね?ほっぺた膨らまして何可愛い子ぶってるんだよ!かわいいなーもー!
「あの、味方がですね……。貴方の魔法で消し飛んだんですけど…?」
「やーねー。あんま細かいこと言ってるとモテないわよ」
リリアラが腰に手を当てて、何故かこちらを説教するように言ってくる。何故、彼女がこんなに偉そうなのかは謎だ。
リリアラは細かいと言うが、細かくないんだよなー。なんで味方ごと屠っておいて得意げなんだ?罪悪感の1つでも覚えないのか?
でも、リリアラのおかげで分かったこともある。この世界、フレンドリーファイア有りだわ。これから魔法職召喚する時は気を付けないと。ゲームだとフレンドリーファイア無しだから気にしなくて良かったんだけど、面倒だな。
ゲームと云えば、此処のリザードマンがゲームの時と違い過ぎる。まず、ゲームでは底なし沼なんて無かったし、沼の中にリザードマンが隠れて待ち伏せしてる、初見殺しのような仕様は無かった。そもそも、ここのリザードマンはそんなに強くない。ディアゴラムを召喚するだけで、問題なく乱獲できるような獲物だった。でも、違った。リザードマン達は沼という環境を最大限利用して、ディアゴラムすら完封しそうだった。油断してたんだろうな……相手を弱者と決めつけ、まんまと術中に嵌まってしまった。怖いな、いつかこの油断が命取りになりそうで怖い。気を付けないと。
しかし、底なし沼か……これじゃ渡れないな。
オレの視線は、底なし沼の中央に浮かぶ小島へと向かう。本当はあの小島に行くつもりだったんだが……。あの小島は、リザードマンの住処というか、アリの巣のような地下要塞みたいになっている。中にはリザードマンが大量に居るし、リザードマンの
その後、ハインリス、エバノンを召喚し、リザードマンの死体を回収してもらう。回収中にもう一度リザードマンに奇襲されたが、リリアラの魔法で一掃した。英霊諸共ね。全部で7体のリザードマンを討伐し、死体を回収した。死体は7体も持ち帰れないので、有用な部分を選別して持ち帰る。
「皮を剥ぐのか?」
「うん、エバノン頼める?」
「やってみるが、リザードマンの解体なんて初めてだ。期待すんなよ」
ゲームでは、リザードマンは皮をドロップする。リザードマンの皮は鎧の材料だ。リザードマンの皮で作られた装備シリーズは、身に付けるとリザードマンみたいな見た目になるが、その見た目とは裏腹に、なかなか装備効果の良い装備で需要があった。きっと装備の材料のリザードマンの皮も需要があるだろう。
ゲームだと解体なんてしなくても、自動でアイテムとして手に入るわけだけど……現実だとそんな便利な機能は無い。皮を手に入れる為には、皮を剥ぐしかないんだけど、これが大変な作業だ。しかも気持ちが悪い。皮を剥ぐ作業自体、あまり気持ちの良いものじゃないのに、相手が人型だと、余計に気が滅入ってくる。皮を剥ぎ終わった後の、人型のピンクの肉塊なんて、見ているだけで何かが削れていく思いだ。
「よし、こんなもんだろ」
「ありがとうエバノン。本当にありがとう」
「なに、いいってことよ」
やっと、皮剥ぎが終わった。オレも最初は手伝っていたが、途中から気分が悪くなって、結局エバノンに任せてしまった。本当にエバノンが居て良かった。しかし、7体分の皮となると相当な量だ。鞄に入りきらない。持っていた布袋に入れてもまだ余る。仕方なく皮を丸めて小脇に抱えるように持つ。
「撤収しよう」
「もう良いのか?」
「これ以上は持ちきれないよ。それに…」
オレは空を見る。空は赤く染まり、もうじき日が暮れることを教えてくれる。皮を剥ぐのにかなり時間が掛かってしまった。もう、いつもなら野営の準備をし始める時間帯だ。しかし、此処はホルスの沼地、敵地のど真ん中だ。すぐ近くにリザードマンの潜んでいる沼地があるような場所で、落ち着いて野営もできないだろう。なるべく此処から離れた所で野営したい。
「こんな濡れた地面で寝たくない…」
足元は水を含んだ泥だ。水たまりもあちこちにある。こんな所で横になったらびしょ濡れになるだろう。それは嫌だ。
「という訳で、出発だ。護衛は任せたよ」
「任された」
護衛をハインリス達に任せて、移動を開始する。せめて地面が濡れてない所まで行きたいな。
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