第11話 支部長とのお話(上の空)
結局、支部長室に案内されてしまった。支部長と話をしないと、コボルトの耳を換金してくれない勢いだった。そして今、オレは支部長と対面している。
「初めまして、支部長のライロック・ポウティじゃ」
「アルビレオです」
「うむ、今回アルビレオ君を呼んだのは、君がコボルトの巣を見つけたんじゃないかと思ってな」
支部長ライロックはヒューマンのおじいちゃんだ。笑顔の和む好々爺に見える。でも、日本生まれの小市民精神が権力者との対面に恐縮しちゃってる。うまく会話できる自信がないぞ。だから嫌だったんだ。
支部長に呼び出された理由は、コボルトの巣の場所の情報提供だった。冒険者ギルドは巣があることの予測はついてが、見つけられずにいたらしい。
場所を教えると感謝してくれた。そして、コボルトの討伐数が報告されると褒めてくれた。昇級の話も出た。冒険者ギルドの調査員が、オレの話の真偽を確かめてから9級になれるらしい。
でもまぁ素直に喜べない。ゲームの知識で知っていただけだし。そんなことよりも、ネクロマンサーだとバレないか気になってそれどころじゃない。
いくらオレでも外套のフード被ったまま目上の人と会うのは失礼だというのは分かってる。でもしょうがないじゃん!!スキンへっドの頭にも入れ墨入ってるんだもん!!
受付嬢さんにも入口で「外套、お預かりしましょうか?」と聞かれたのに断っちゃったしな…。頑なに外套を外さないオレは、かなり不審者ではないだろうか?
いつライロックさんにフード取れと怒られるか…とヒヤヒヤしたまま会話を続ける。怒られたら流石にフード取るか?いやいや、相手は冒険者ギルドの支部長だ、魔法への造詣も深いに違いない。ネクロマンサーだと気付かれたらお終いだ。でも、フードを取らないと冒険者ギルドの支部長の不信感と怒りを買ってしまう。どうしたら良いんだよ!
「じゃあ、今日はこんなところでな」
悶々と悩んでいると、あっさり会談が終了した。やったぞ、乗り切った!
せめて最後くらいは礼儀正しくいようと「ありがとうございました、失礼します」と大きく頭を下げた。少しくらい印象が回復すると良いんだけど…。
改めてギルドのカウンターで受付嬢さんから討伐の報酬を受け取る。銅貨と銀貨でジャラジャラだ。全部で76000ルピス。内10000ルピスは冒険者の登録料として払ったので66000ルピスが残った。物価とか調べないから分からないけど、結構大金なんじゃないか?
ルンルン気分で冒険者ギルドから出ると、街道には人っ子一人いなかった。もうかなり遅い時間なのかもしれない。この時間になると、お店も飲み屋以外閉店している。残念だけど、買い物はまた明日かな。
宿屋とかも興味はあるけど…お金がもったいないか。野宿でも平気だし。
今夜は町の近くだから、いつもより余計に離れた所で野宿した方が良いかもしれない。万が一にも英霊を見られるわけにはいかないからね。
明日の買い物を楽しみにしながら、オレは町の外を目指した。
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