「続・蝶の羽」

「ヘザー。これを貴女に渡したいの」

「これ…結婚指輪?」

「そう。きれいでしょ?緑色に光っていてエメラルドだよ」

「嬉しいヨグソトース…」

「あともうひとつ。この鍵を…首からさげて…」

「これは何?」

「銀の鍵のレプリカ。これで貴女はヨグと一緒の存在になれるのよ」

「ほんと!嬉しいわヨグソトース!」

「これから一緒だよ。だから…ずっと側にいてねヘザー」

「うん!ヨグソトースと一緒にいたい!ありがとう!」

「愛してるわ」

「私もよ」

…そんなことあったなあ。しかもほぼプロポーズに近い言葉だったわ

私、ヘザー・メルニクス…いや、もうメルニクスは関係無いわね。ただのヘザーって感じ。だって家出して名字無くなったから…

家出したら現世では行方不明になってたわ。あんな家族とはもうおさらばしてるし私はあくまでもヨグソトースの側にいたいだけだから

異次元とは心地いい空間だわ。だってこの世界としては体力なんか使わず軽やかに動けるし、何よりエイリアン達はみんな優しい

私は今ヨグソトースの支配人補佐として存在してる。異次元にある機械などと言ったものを私が点検に行けるほど教えてもらったし

何もかもヨグソトースのおかげだ。あのときヨグソトースが来てくれて、告白されて、ここへ来たんだから。これも運命なのかもしれない

そんな私は今異次元の中の工場っぽいところに来ている。そこに来るまでワープを利用して工場へとやってきた。視察って感じ

中位のエイリアンの案内どおりにそこへ来た。ここのエイリアン達、最初私が来たら大いに喜んでいたのが面白い

嬉しいような恥ずかしいような。私は最初こそ上手く馴染めなかったが、しばらくすると慣れた。人間だから、とはヨグソトースは言ってた

小さいエイリアン。中ぐらいのエイリアン、そして大きいエイリアン。大きいエイリアンのほうがいるのが珍しいらしい

基本的に中ぐらいのエイリアンのほうが働き者。小さいエイリアンはうろうろしてるだけだし大きいエイリアンは監視の役目だってさ

というわけで私は中ぐらいのエイリアンに案内されている。工場内見学の意味を込めてね

エイリアン「…ここで、樽に液体を注入して新しいエイリアンを作りだします。1週間経てばエイリアンは外から出て我々の仲間になります」

私はその樽みたいなものが上から液体っぽいものを注がれてるものを見た。へー。そんなふうにエイリアンが生まれるんだ

でもふと思った。小さいのと中ぐらいのと大きいの、どれが生まれるのかしら?

ヘザー「ねえ、大中小といるけど何が生まれるの?」

そう言うとエイリアンはしどろもどろに答える

エイリアン「実は何が生まれるのはランダムなんですよ。大中小といますけど、何が生まれるは私達でもわかりません」

そ、そうなんだ…だから小さいのも生まれたり大きいのも生まれたりするんだね。意外と適当感あるわ

私はもう一度、その樽っぽいものを見た。木材で作られる樽というよりこの世界の石で作った石の樽と言っていいかもしれない

触るとどうなのだろう。暖かいのだろうか冷たいのだろうか?私はちょっと触ろうとしたらエイリアンから言葉が

エイリアン「あ!触ったらだめです!液体に触るともしかしたら溶けてしまうかもしれません!」

…おっと、そうだったか。私は触る寸前だったがその言葉で手を引いた。危なかったわね

ヘザー「そ、そうごめんね」

謝る必要はなかったかもしれないが、注意を聞かなかったら手がひどいことになってたかもしれない

ヘザー「でも…前にヨグソトースと話したけど…人間型のエイリアンが生まれるって話、ほんと?」

私が言うとエイリアンは答える

エイリアン「はい。本当に稀なんですが人間の形をしたエイリアンが生まれるときがあるのです」

エイリアンがそう言うと私は言う

ヘザー「そうしたら…どうなるの?」

エイリアン「体力が回復するゲージに入れて、しばらく放置ですね。樽から生まれた人間型は最初はあまり行動できません」

…回復するゲージ…聞いたことあるような無いような…。いわゆる回復の泉なのだろうか?

それともヨグソトースが言ってただろうか?そんな顔をしたらエイリアンがすぐに言ってくれた

エイリアン「では、ヘザー様にそちらをご案内しましょう」

そう言うと私とエイリアンはその場所へと行こうとした

工場内を歩くと本当に色々なエイリアンたちがいた。装置をあちこち点検してたりなにか慌ただしく動き回ったり…

それを監視する大きいエイリアン。そして空を飛べる中ぐらいのエイリアン。エイリアンとはいえど色々なんだなあとは思ったわ

歩くと部屋で案内された。ここの部屋は一体?もしかしたらその人間型がいる場所なのか?

私とエイリアンは部屋に入った。薄暗い空間で明かりがちょっとしかない。正直つまづきそうだ

その部屋は空いてるのか使っていないゲージがあった。しかし、ひとつだけゲージが明るく起動してるのを発見した

ヘザー「あれが、人間の?」

エイリアン「はい。そうです」

起動してるゲージに近づき、そして私は仰天した。その中に入ってるのはエイリアンでは無く人間が入っていたからだ

間違いなく女性だった。目をつぶり、立ったまま、首をかしげて、まるで普通の水槽に入った人間そのものだった

しかしその人間型、ちゃんと水着みたいな服装をしていて裸体で入ってるわけではなかった。この服はもしかしてヨグソトースが?

そんなことを思っていたらエイリアンがもう一度説明をする

エイリアン「人間型として生まれたエイリアンは、基本的に弱いです。すぐにゲージに入れないと死んでしまいます。

だから服を着させて回復のゲージに入らせてるのです。ちなみにこの服はヨグソトース様が用意してくれました」

なるほど。人間型で生まれてくるのは珍しいことなのだろう。でもヨグソトース、服なんていつの間に…

だがヨグソトースは現世を突っ切っていける能力を持つ人。いや邪神ね。邪神って結構いるらしいからね

そう思うと私はもう一度そのゲージを見た。本当に人間だ。髪色は水色であった。目をつぶっているため瞳の色は不明だが

私はまた思ったことをエイリアンに話す

ヘザー「でもこうやって人間型として生まれたら現世に送るのでしょう?」

エイリアン「はい確かに。気候の変動があまり無いシダレカに向かわせるのがだいたい普通です。この子もきっと新しい名前を付けて生きる人。

他にもポテプ一家と言った異次元生まれの家系がいます。その家系は現在子持ちの家族になってますね」

なるほど。シダレカにエイリアンがいるというのはそういうことだったか。他の国ではだめなのだろうか

私はまたまた思ったことを言う

ヘザー「ちなみに人間型が生まれる…なんていうの確率ってあるの?」

そう言うとエイリアンはうーんとした表情になって答える

エイリアン「そうですねえ…だいたい…約4000分の1…でしょうか。本当に滅多に生まれないので…」

なんていう確率なのだろう。その数値で私はまた驚いてしまった

…ん?首から下げている鍵が少し光る。もしかしてヨグソトースが来るのか?私はゲージを見るのをやめて後ろを向く

空間が歪み、ゲートから人間がでてきた。私のヨグソトースだった。ヨグソトースの姿を見るとエイリアンはお辞儀をする

ヘザー「ヨグソトース!」

ヨグ「やあ、見学してたけどどうだったかな?」

ヨグソトースが言うと私は感想を述べた

ヘザー「ますます異次元の世界がわかったわ。特にこの…数千分の1で生まれるこの子が」

私が言うと私はそのゲージに指を指した

ヨグ「これはね…ヨグ達も全くわからない。どうして人間型が生まれるのか…。今も実は研究中なんだけど、ちっとも結論が出てないのよ」

ヘザー「頭の良さそうなヨグソトースでもわからないのね」

ヨグソトースはちょっと困った顔になっていた

ヨグ「これはヨグ達の仮説なんだけど…樽に液体を注ぐときに人間を生み出す物質が突然変異してるんじゃないかって。わからないけど」

突然変異…可能性としてはありえそう。そんな気持ちになった

ヨグ「そんな感じかな。ヘザー、そろそろ戻ろう?」

ヘザー「うん!わかった!」

そう言うと私とヨグは自室へと戻ることになった。戻る前にヨグソトースは言う

ヨグ「じゃああなた。しっかり管理するようにね」

エイリアン「はは!支配人!」

ここまで言うと私とヨグソトースはゲートをくぐり戻る

エイリアン「ふー。ヨグソトース様来ると緊張するなあ…しかしこの子、もうそろそろ回復が完了するような…」


ゲートをくぐり、私とヨグソトースの部屋へと戻った。きれいにしてる部屋だった

ヨグソトースはイメージ的にあまり掃除しないのかなとは思ったが結構キレイ好きで最初来たときもキレイなままだった

現在、私は人間なので料理を作れるキッチンもあって色々なものが置いてある。エイリアンは来てはいけない場所である

私は人間だからと言って特殊な能力を持ってるわけではない。ヨグソトースが普通ではないのだ

そんな空間を突き抜ける邪神の側に私はいる。これも全部ヨグソトースのおかげだ

ちょっと喉乾いたので冷蔵庫からペットボトルに入ってる水を取り出し、私は飲む。とはいえどこれは回復の泉が抽出した飲み物だ

回復の泉はただ浸かってるだけでも効果はあるが飲み物として存在するこの回復する水は飲んでも効果は発揮するらしい

ごくごく…ぷはー。ただの水っぽいがただの水では無い。喉の乾き、そして体力を回復させるこの水はここだけしかないのよ

美味しいと言われると水なので味はしない。だがこれを使った料理は一味違う味になるのだろう。回復の泉があちこちにあればいいけどね

飲んだらヨグソトースが話しかける

ヨグ「ヘザー、異次元がよくわかったかな?」

そう言われてると私はヨグソトースの顔を見て答える

ヘザー「うん。とてもわかりやすい場所ね。エイリアンが言ってたけど人間型が生まれたり…面白い場所ね」

ヨグ「ヘザーがそう言うならヨグだってここへ来てよかったと思うわ」

ヨグソトースが笑顔を作る。この笑顔に何度心が穏やかになるか。良い笑顔だと思う

そんなこと思っていたらヨグソトースがなにかを思い出した顔をした

ヨグ「そうだ。ヘザー、また貴女に案内したい場所があるの」

案内したい場所?まだあるのか?

ヘザー「どんなとこ?」

そう言うとヨグソトースはまた空間を作りゲートを開いた。開いたら手招きしながらおいでと言う

私はゲートをくぐって知らない場所へと向かった


着いた。ここはなんだろう。ざっとその部屋を見た感じ、異次元特有の変わった部屋になっていた。もう慣れたけど…

中心部にはモニターと機械があった。いや、そのモニターに映し出しているのは宇宙となにかの惑星だった。これは一体?

そんな顔をしたらヨグソトースがしゃべる

ヨグ「ここはね。セントラルコントロールセンター…って言ってまあわかりやすいこといえばこの異次元の心臓部のところなのよ」

セントラルコントロールセンター。直訳すると制御室って意味かしら。あまり勉強してない頭でそんな結論になった

ヨグソトースはモニターを見つつ説明をする

ヨグ「そしてこの場所は他の宇宙を見たり、貴女の住んでた惑星を見たりするのよ。まあ滅多に行かない場所だからほっといていいけどね」

そう言うと私はモニターと機械を見た。不思議な空間だった。機械にはなにか装置みたいなものがあるが触ってはいけないのだろう

モニターは電子モニターだった。これはヨグソトースの部屋にあるものと一緒。既に見てるためあまり驚きはしない

ヘザー「ねえヨグソトース、この惑星と宇宙にあるものってなに?」

私が言うとすぐに答えてくれた

ヨグ「この惑星は貴女がいた惑星ハイテラ。そして宇宙空間にいる建物みたいなのは国際宇宙ステーションルナリアよ」

ハイテラ…そういえば私が住んでた星の名前ってハイテラなんて呼ぶんだった。正しくは多種族住居惑星ハイテラと呼んでいる

そしてルナリアというのも聞いたことある。ここは宇宙にいて様々なことをしてる、そんな場所の気がするわ

じゃあこの異次元はハイテラとは別の場所なんだろう。そもそも空が宇宙なのでハイテラとはまた違う場所にあるのは確定だ

ヘザー「ねえヨグソトース、異次元ってハイテラから何光年離れた場所なの?」

私が言うとヨグソトースは笑ってしまった

ヨグ「あはは!大丈夫よヘザー。この異次元は光年なんて言うほどの遠い場所では無いわ。安心してちょうだい。光年だったら惑星が見えないわ。

あっちこっちで監視モニターを付けてるだけだからハイテラからここはそう遠くはない。だからハイテラにエイリアンはいるのさ。

ちょっとSFチックになっちゃって変な話になるのは仕方ないことなのよ」

笑いながら言うと更に言う

ヨグ「でね。異次元とは違う異星人がたまに異次元に来るの。そしたらヨグが先頭に立って安心するように話すんだよ。

ヘザーはまだ経験したことはないね?でも大丈夫。異星人は基本ハイテラの技術を勉強したいって言って友好的な異星人だらけなの。

ヨグの住む異次元に来たりルナリアに連絡を通して話したり…色々なんだよ」

なるほど…ルナリア、異星人…とても深い話だ。だからこそ支配人であるヨグソトースが存在してるのだろう

ヘザー「じゃあもっと別の星から来る異星人はいるのね?」

ヨグ「そうよ。そういうこと」

本当にここは異次元なのだろう。ここにいるエイリアン達が可愛く思える。この心臓部である制御室、大切にしないと…

ヨグ「制御室は基本あまり行かないから…そろそろ戻りましょう?」

ヘザー「ええ。説明してくれてありがとうヨグソトース」

そう言うとヨグソトースはまたゲートを作り私は元の部屋へ戻った


私とヨグソトースが住む部屋へと戻った。やっぱりここが一番落ち着く。私はゆっくりと既に用意されたソファに座る

ゆったりしてるとヨグソトースは机に座り電子モニターを見ていた。ヨグソトースって意外と仕事熱心なんだなあとは思う

なにかやることはあるだろうか。ヨグソトースが使っている机のコップには何も無い状態だった。何か入れてあげよう

そう思うと私は机のコップを持ち、冷蔵庫から現世で買った飲み物を注ぐ。そして机に置いた

ヨグ「ありがとうヘザー」

ヘザー「いいのよ別に。私は貴女の物だし」

ヨグ「そうね。ヘザーはヨグの物よ」

ヨグソトースが笑顔でコップに注がれた水を飲む。飲むとヨグソトースは言った

ヨグ「…ヨグも一応人間の形してるからこうやって水分補給は大切だからね」

ヨグソトースがそう言うと2人で笑顔になる。思うとここへ来て正解なんだなって思うわ

突然固定電話から通知音が鳴る。ヨグソトースが電話を出る

ヨグ「何?…生まれた人間がそろそろ回復できた?…ううん。100%になるまでしばらく置いておきなさい。まだ装置は止めないで。

中途半端に回復して出したら全く動けなくなる確率が高いから。まだそのままにしておきなさい。…そうよ。じゃあ」

そう言うとヨグソトースは受話器を置く。ヨグソトースの話を聞くかぎりではさっき会った人のことを言ってるのだろう

ヘザー「さっきの装置にいた人のこと?」

ヨグ「そう。ああいうのは完全に回復させないとハイテラの気圧で歩けないどころか異次元ですら歩けない身体になってしまうからね」

ヘザー「そうなんだ…」

ヨグ「そうだヘザー。ヨグの側に来て」

ヘザー「うん?」

そう言うと私はヨグソトースの側に行った

ヨグ「ヘザーが側にいないとだめだわ。ヘザー、お姫様抱っこしてあげるから来て」

え!?急に何を言うのだろうか!でも決して嫌とは思わなかった。私は命令どおりヨグソトースの膝あたりに座る

そして横になってお姫様抱っこになる。不思議と恥ずかしい気分には決してならなかった

ヨグ「うんうんよしよし。これで花が側にいるわ」

ヘザー「んもうヨグソトースったら。仕事できるの?」

ヨグ「大丈夫よ。監視してるだけだから」

なんだか楽しくて笑顔になってしまう。そう思うと私とヨグソトースの瞳が合った。私はしっかりと見つめ合った

そして自然とキスをした。甘くて柔らかなヨグソトースの口。ディープキスだった。また私は幸せを実感した

口から離れるとヨグソトースは言う

ヨグ「…ずっと側にいてね。私のヘザー」

ヘザー「命が尽きるまで、側にいるわ。私のヨグソトース」

そう言うと、しばらくの間、イチャイチャをしてた。そのイチャイチャも幸せなものだった


異次元の空間

私はヘザー。ヨグソトースの隣にいる人。これからも異次元にいるわ



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