「蛾の羽」
…アマリリスの漁港
そこに3人の女性がいた。1人はここに残り、2人は別の場所に向かわないといけない
アザトース「…シュブニグラス、ハスター。お主らも別れないといけないのか」
シュブ「そうよ。アザトースと別れるのは悲しいけど、行かないと」
ハスター「ぼくも行かないとだめなんだよ…」
アザトースは悲しそうにつぶやく。そのアザトースの前にいるシュブニグラスとハスターも悲しそうな顔をしていた
シュブニグラス、ハスター、彼女達もアザトースと同じく邪神としてこの世界にいた
シュブニグラスは黄色いショートヘアをしてアザトース以下の身長だが、とても威圧感のある風貌をしている
ハスターはいつもフードをかぶっておりロングヘアだが常時束ねている。身長はシュブニグラス以下であった
既にアザトースはヨグソトースとの別れを言い、そしてこの2人にも別れを告げないとだめであった
シュブニグラスはハスターと一緒にいて様々な困難を乗り切っていた。そのことはアザトースも知ってるしヨグソトースも知っていた
過去の大戦から2人は縁の下の力持ちとして立ち向かってきた。それは既にいないデーモンロードも知っている
少しの間だけシュブニグラスとハスターはアークデーモンがいる総本山にいたが、退職をしている
アークデーモンはこの2人をとても丁寧に扱っていて邪神だからこそできることをしていた
その2人は、宇宙へ行かないといけない。シュブニグラスもハスターも宇宙の言語がわかるからこそのスカウトであった
国際宇宙駅「ルナリア」。様々な国の人がいて、主にシュブニグラスが次期艦長を務める。そういうわけだった
アザトースがいるアマリリスからサフィーラへ向かい、宇宙ロケットで宇宙へ飛び出さないといけない
アザトースがそう思うとやはり悲しい気分だった。邪神とは言えど感情表現はできる。ただの邪神ではないからだ
シュブニグラスもハスターも、やはり悲しかった。魔王と別れないといけないからだ
シュブ「…でも、魔王さん。貴女がいてくれたから私達は今を生きていけるしそれに現魔王と現副王はしっかりしてるから」
ハスター「ぼくもそのことは安心してるよ。アザトースちゃん、大丈夫だよ」
アザトース「もう我は魔王ではないが…しかしお主らに言われると嬉しい気分になる」
少しだけアザトースは笑顔になる。大丈夫。そう思ったからだ
アザトース「いつか、我が住むアマリリスに戻ってこい。いつでもいい。喜んで迎えに行くぞ」
シュブ「ええ。今までありがとうアザトース。元気でね。風邪なんかひかないのよ?」
ハスター「ばいばいアザトースちゃん。忘れないから!」
そう言うと2人は大型の船にゆっくりと乗っていった。アザトースは姿が見えなくなるまで見送っていた
ぼー…!船の汽笛が鳴り船が動きだす。船はサフィーラに向けて出発していった
2人が乗り込んだ場所からアザトースはずっと船が遠くになるまで見ていた
アザトース「…シュブニグラス。ハスター。お主らは我にとって最高の相棒達だったぞ…」
数ヶ月経ち、ここは国際宇宙駅ルナリア
このステーションの主な目的は違う星から来た異星人との交渉をすること。または宇宙に関する研究もしている
宇宙はまだまだわからないことが多く、だからこそのこのステーションである。働く人数も多い
種族はバラバラでこれが多いというのはない。強いて言うのなら人間が多いことかだろうか
異星人との交渉はなかなか進んでおり敵対心を持った異星人は全くいない。むしろ好意的な異星人だらけである
また異星人と会話してその星独自の研究などを情報交換したりして話し合うことが基本だ
もちろんこの国際宇宙ステーションで働くには様々な訓練が必要だ。ようするにここにいる人はエリートのみしかいない
宇宙に飛び出すときは基本的にサフィーラの宇宙センターから出発することが多い
サフィーラは気候変動が無く、安心安全に飛び立つことが可能なので基本サフィーラからだ
ここにいるシュブニグラスとハスターはサフィーラから出発してここへ来た。シュブニグラスは現在艦長を務める
そんなシュブニグラスだが今は国際宇宙ステーションの整備をしていた。たまに何かあるためこうやってチェックをしている
特別な問題はないもののもしほったらかしにしたら危ないことが起きるかもしれない。だからこそのチェックである
シュブニグラスはチェックを終えると一安心して息を吐く。もしかしたら次は宇宙空間のチェックが必要かもしれない
シュブニグラスもハスターも邪神とは言えど人間だ。さすがに宇宙空間は息ができないのは当たり前である
その国際宇宙ステーションは術の力なのか重力が効いている。それゆえ飛ぶ必要がない。普通どおりに歩ける
シュブニグラスがチェックを終えるとハスターが近寄る
ハスター「シュブちゃん。終わった?」
そう言うとシュブニグラスはハスターに顔を向けて言う
シュブ「ええ。大丈夫よ。異常はなかったわ」
ハスター「よかった。ぼくもあちこちチェックしたけど異常はなかったよ」
シュブ「それが一番よ。何かあったらこの国際宇宙ステーション、やばいことになるからね」
そこまで言うとハスターは思い出したかのように言う
ハスター「あ!そうそうシュブちゃん。今日ここへ新しい人が来るんだってさ」
新しい人?シュブニグラスはそれを聞いていなかった
シュブ「新しい人?新たなスタッフが来るのね?」
ハスター「そろそろ来るって話だけどね」
もう来るのか。シュブニグラスはちらっと宇宙空間の窓を見る。おや、ステーションの連結部分に見慣れないロケットがある
そのロケットはゆっくりと連携して止まった。その中に新しい人がいるのか?
シュブ「…誰かしら。行きましょうハスター」
ハスター「うん!」
2人は連結部分に近い場所へと向かう
連結部分。というより国際宇宙ステーションの入り口だろうか。2人はそこまで来て新しい人を迎える
ロケットの入り口から1人、降り立った。服は宇宙服だが、とにかくでかいのが目についた
身長いくつだ?髪色は緑。どこか幼そうな顔立ちをしていて優しいイメージもあった
シュブ「もしかしてアザトース以上にでかいのかしら…」
降り立った女性が反応してシュブニグラスとハスターに近寄る。宇宙服のヘルメットを取った
ある程度近寄ったらその女性はおじぎをする。結構礼儀正しい人かもしれない。シュブニグラスの第一印象はそれだった
?「はじめまして。貴女が艦長ですね?ここへ力になるように来ました。どうぞよろしくおねがいします」
シュブ「ええ。ようこそ国際宇宙ステーションへ。貴女の名前は?」
そう言うとその女性は慌ててしまう
?「あ!ごめんなさい名前を言わないで…!私の名前はネネ・ポテプ。人間型のエイリアンの母と異形型のエイリアンの父がいます
私も宇宙にあこがれていたので頑張ってここへやってきました。年齢は23歳です」
ハスター「ネネちゃんって言うんだね!よろしくね!ぼくはハスターって言うんだ!艦長補佐だよ!」
シュブ「ネネというのね。私はシュブニグラス。艦長を務めているわ。ここへ来たからにはしっかり仕事をするようにね」
ネネ「はい!よろしくおねがいします!」
ネネは笑顔でお辞儀する。シュブニグラスは思ったが彼女なら大丈夫だろうと判断はした
シュブ「けど貴女…どうしてそんなにでかいの?身長いくつ?」
シュブニグラスが言うとネネはすぐに答える
ネネ「私は194センチです!体重はー…えーと…65キロ。ですかね?」
…なんちゅーでかさだ。シュブニグラスとハスターはその身長で驚くしかなかった
だがシュブニグラスはその身長に驚きながら冷静に言う
シュブ「…もしかしたらその身長を生かした仕事をしてもらうと思うからそのつもりでね」
ネネ「はい!なんなりと申してください!」
シュブ「元気があってよろしい。ハスター、彼女の部屋へ案内して」
ハスター「はーいシュブちゃん!ネネちゃんこっちだよ」
そう言うとハスターとネネは違う部屋へと行った
シュブニグラスはネネとの出会いの後、自分の部屋へと向かった
書類関係はあまりないもののサフィーラの宇宙センターに常時見られているようなものなので部屋では一息つける
ネネというでかい女性…エイリアンと言ってたのだから恐らく人型のエイリアンだろう
彼女にはどういう仕事をさせたらいいか。さっき言った通り体格を生かした仕事をさせようと思う
そう思ってると誰か部屋に来たみたいだ。ガチャっと開ける。ここはドアの存在もある。重力があるからだ
ハスターだった。何か紙を持ってきたみたいだ。彼女が来たらシュブニグラスが言う
シュブ「案内終わったハスター?」
ハスター「うん。シュブちゃん見てよ。ネネちゃんが自己紹介ですって言って履歴書を持ってきたんだけど…」
シュブ「履歴書?何かしら。みせて?」
ハスターはシュブニグラスに履歴書を手渡す。シュブニグラスはそれを見た
シュブ「ふんふん…小中高とは普通の学校行ってたのね。で、大学は…クリスタルウィンター大学。あら一流大学じゃない?
…え?飛び級して卒業したの?3年間しか通ってなくて成績も首席で取ってそのまま卒業したのね。すごいわね…。
そして卒業後はサフィーラの宇宙センターに就職して訓練を経験してここへ来た…ってこと。しかし飛び級とはね…」
そこまで言うとシュブニグラスは履歴書を置いた
ハスター「後、宇宙の言語も勉強していてある程度なら異星人の会話もできるって言うよ。ちょっと話したけど完璧だったね」
シュブ「ふうん。そうなの」
そう言うとまた別のスタッフがドアをノックした
シュブ「はーい?」
スタッフ「失礼します艦長。異星人が交渉をしたいと通信が入っております」
お、来たか。うちらの目的は交渉のこともひとつ。だからこれは決してミスが許されない交渉である
シュブ「今行くわ。ハスター、ネネを連れて交信室まで来てちょうだい」
ハスター「はーい」
2人は仕事へと向かう
交信室。ここは異星人との通話をするための室内。ここでもやはり重力は効いている
モニターにはもう異星人の姿があった。その異星人は目が大きくタコみたいな足をした、ちょっと怖い異星人だった
モニター越しからシュブニグラスとハスターとネネはいた。他のスタッフもいて緊張感が走る
シュブ「ネネ、初仕事よ。異星人と交渉してみなさい」
ネネ「はい!」
本当だったら体格を生かした仕事をしたほうがいいと思うが、一応ネネは異星人語を喋れるので初仕事はそれにすることに
ネネが言うと早速異星人語で会話を試みた
ネネ「アワチョェ、ネンネミタノエ」
よくわからない言い方だがこれが異星人語である。モニター越しの異星人は何も言わなかったが…
異星人「うん?別に異星人語使わなくても大丈夫ですよ?」
…あれ?普通にこの星の言語で言っている。ネネは頭の上にクエスチョンマークが出た
ネネ「え!?どうしてこの星の言語を!」
さすがのネネも言葉が通じるのか星の言語で言う
異星人「実は私達、ヨグソトース様の元に来ていてあなた方の星の言語を学びました。だから大丈夫ですよ」
…。シュブニグラスとハスターは顔を合わせて思った
シュブ「…いつ副王は言語を覚えさせたのかしら」
ハスター「彼女のいる異次元って、様々な場所に通じてるんだね」
そんなことよりもネネは交渉を続けた
ネネ「あなた方の要望はありますか?」
異星人「私達はそちらの星に興味を持っています。ヨグソトース様に言われたのですが、技術の交換をしたいです」
ネネ「了解いたしました」
そう言うとネネはシュブニグラスに顔を向ける
ネネ「艦長。いかがいたしましょう?」
シュブ「この国際宇宙ステーションのデータがあるわ。それを送っておきましょう」
ネネ「かしこまりました」
ネネは再び異星人のモニターを見る
ネネ「おまたせしました。そちらにデータを送ります」
異星人「ありがとうございます。私達からは紙を送信いたしますのでご覧くださいませ」
国際宇宙ステーションと異星人のデータ交換が終わった。こちらの場合FAXみたいな形で紙が送られてきた
FAXなんてローカルすぎて少し笑ってしまうが、データを紙で送られるのはわかりやすくていいのである
ネネ「ありがとうございます」
異星人「こちらこそありがとうございました!」
紙が送られちょっと経ったら交渉は終わった。今日はとても早くスムーズにできたことがまず嬉しいことだ
ネネ「ふー…意外とできましたね…」
ハスター「お疲れネネちゃん!初めてなのにとてもよくできてるよ!」
ネネ「ありがとうございます!」
シュブニグラスは紙を見て思った。なかなかおもしろい技術だと
シュブ「ネネ。後で食事が終わったら私の部屋に来なさい」
その言葉を聞いてハスターは驚く。この勧誘…もしかしたら…と
ネネ「はい?了解しました」
ネネは何も思わずその言葉を飲み込んだ
食事を終えた後。ネネは艦長室へと向かっていた。一体なんだろうか?何かの手伝いだろうか?
もちろん何かの手伝いならやるつもりだが…ネネは艦長室の前にいた。ノックする。コンコン
するとシュブニグラスの声が飛んだ
シュブ「入りなさい」
そう言われるとネネは室内に入った。そこには驚くことがあった
シュブニグラスが下着姿でベッドにいた。ハスターも下着姿でいた。これは一体…!?ネネは仰天するしかなかった
ベッドに座り足を組んで待っているシュブニグラス。その横にいるハスター。入ったらネネは驚いた
シュブ「…ネネ。こちらに来なさい」
ネネ「は…はい…」
何が始まるんだ?何もわからないままネネはシュブニグラスの隣に座った
元々座高の高いネネは失礼かもしれないが見下ろすようにシュブニグラスの顔を見た。そして瞳を見た
ネネは感じた。その瞳は何か違う。吸い込まれるかのような瞳だった。赤く、ルビーのような色。宝石のような色だった
ネネ「か、艦長…」
シュブ「そうよ。いい子ね…私の瞳をじっと見て」
ネネ「あ…あ…」
そんな光景をしながらハスターが説明しようとする
ハスター「あのね。シュブちゃんは君のこと気に入ったみたいなんだ。こうやって人を室内に入って誘惑してるんだよ。
そしてね。眷属にしようとしてるんだ!目をしっかり見た?もう君はシュブちゃんの眷属の一人だよ」
淡々と説明するハスター。その言葉にはどこか喜びがあるような気がした
ネネ「で、でも私…何も…わからな…」
ネネはどんどん口調が弱まっていく。シュブニグラスの瞳はどこか術を使った魔力であった
シュブニグラスは自分より背の高いネネの顎をくいっと掴んだ。ネネはビクッとする。そして言う
シュブ「ネネ。私の眷属になりなさい。貴女ならきっとできるはずよ。優秀な貴女。次からお姉さまと呼ぶように」
ネネ「あ…あ…」
彼女があまり声が出ない。効果が強すぎたか。またはこういうのは初なのか。シュブニグラスは更に言う
シュブ「私はね。蛾って呼ばれるの。蛾のように夜を支配した。そう言われた過去があるの。蛾は、夜の生き物なのよ?
そしては蛾は夜を支配するように優雅に踊り、舞い、そして朝を迎えるときには既にいないの。だから私は蛾なの」
ハスター「ぼくも蛾とか言われるけどシュブちゃんと比べものにはならないんだよねー」
そこまで言うとネネは重い口を開く
ネネ「お…お…」
ネネは瞳を見つめ続け、ついに答える
ネネ「お姉さま…はい…お姉さまの言う通りにします…」
シュブ「よく言えたわね。ふふふ。ご褒美のキス」
そう言うとシュブニグラスはネネの口を奪う。突然のことでネネは驚くが決して反発はしなかった
ネネ「ん…んちゅ…ん…」
シュブ「れろ…ん…ちゅ…」
ハスター「あれま。キスしちゃった。シュブちゃんそんなに気に入ったの?」
キスを終えるとネネはぼーっとしながらシュブニグラスを見ていた
ネネ「これからどうかお願いします…お姉さま…」
シュブ「うふふ。よろしく」
ネネはシュブニグラスとハスターの眷属になった。それは定めか。運命か。それはわからなかった
ネネが来てから数日経った
ここは宇宙空間なのでいつ朝なのか夜なのかわからないが、時差ボケのようなことはあまりない
ネネはシュブニグラスのことをお姉さまと言い指示どおりの仕事を進めていた。ハスターはその光景を見てにやにやするだけだった
ネネ「お姉さま。宇宙空間に出て修理を完了しました」
そう言うとシュブニグラスは笑顔で答える
シュブ「ご苦労さま。やはり貴女は優秀だわ。これからもここへいなさい」
ネネ「はい!お姉さま!」
やはりお姉さまと言えるのが嬉しいのか。元々ネネは姉がいなかったから義理だが姉ができて嬉しいのか
ネネ「そういえばお姉さま。他のスタッフにもお姉さまと呼ばせているのですか?」
彼女の素朴な疑問。しかしシュブニグラスはすぐに言う
シュブ「そうね。基本的には言わせてるけどね。男性には言わせてないけど、まあそんな感じ」
ハスター「へー?じゃあぼくもシュブちゃんをお姉ちゃんって呼ぼうかな?」
そう言われるとシュブニグラスは困った顔をする
シュブ「ハスター。貴女は私のつがいでしょ?お姉ちゃんなんて言ったらよくわからない話になるわ」
ネネ「そうなんですか!」
ハスターは笑っていた。シュブニグラスは困った顔をしつつ、ネネに言う
シュブ「とりあえず…。次は宇宙センターの報告よ。ネネ、着いてきなさい」
ネネ「お姉さま!着いていきます!」
そう言うと2人は交信室へと向かった。慌ててハスターも行く
ハスター「あ!待ってよぼくもー!」
3人で向かっていった
国際宇宙駅ルナリア
今日も宇宙と星を見ていた
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