第292話 サザールダンジョン21階層

サザールダンジョン21階層


最初はすぐにやられて負けを見ると予想していたマーシャも少しシャーズを見直すことにしたようだ。

どうやら変身前=人型の時より変身後=元の姿の方が10倍近い膂力を出すことができるらしい。

そうなると彼らがこのダンジョンに挑戦してもそれほど大変ではないと判る、だがそれは個人の力として戦う場合であり、相手も個だった時に限られる。

このダンジョンのように群で攻撃された場合はひとたまりもない、海竜族の魔法力は人族の中級魔法程度であり変身魔法は特殊で彼らだけの固有魔法に近い、魔法と言うよりそれはスキルに近いようだ。

彼らは水中であれば魔法をそれほど使用することも無いのだろう、なにせ海の中でなら最強の生物なのだから。


思ったより順調に進むダンジョン攻略、ボス部屋以外はアイテムを使用して戦うことなく次の階層へと進んで行く、21階層もLV20以下の魔物であり魔法の笛で操ることになった。


《この階層も戦わなくて済みそうですね》

《膨らんで爆発する魚では後が面倒じゃからな》


フグのような魚は最初簡単に攻略できると思っていたのだが、こちらが近寄るとどんどん大きく膨らんで最後には目の前で爆発する、自らが犠牲になり仲間を守ると言う習性があるようだ。

この魚は爆裂フグと言う、近寄ると自分の体を大きく見せる為100倍近くまで膨れ上がり、ビックリして見ていると爆発して毒の体液をまき散らす。

その毒には当然のことながら神経毒と麻痺毒が含まれていて少量でも影響を受けると言う。

海洋獣人族はもちろんこの魚を食べたりしない、大柄な彼らには細かい毒の除去ができないしそれほど身も多くないためだ。


《毒は殆ど紫色から黒色と言った色が付いておるな》

《そうですね、ですがたまに無色透明の毒もありますのでご注意ください》アローリア

《そうか、安心するのは早いと言う事か》


無色透明と言えば地上では何種類ものガスに有毒な作用が有ったりする、毒ガスの類は殆ど臭いで判別するしかないが、聞いた話だと青酸ガスはほぼ無臭だったと聞いた事が有る。


《大丈夫ですわれら海竜族は匂いに敏感ですから》


海の中の生物は総じて匂いに敏感だ、約1k離れた場所で発生した血の匂いさえ嗅ぎ付けて来ると言う話を聞いた事が有る。

爆裂フグは笛のおかげで我々に対して敵対することなくすれ違っていく。


《笛の効果は10分ぐらいの様だな…》

《耳に残る音が精神を落ち着かせるような効果があるのでしょうか?》ロキシー

《いいやそうではないらしいぞ、どうやらダンジョンの仕組みに関係する設定らしい》


そう言いながらフグに触れてみる。


《マーシャ様!》

《どうじゃ驚きもせぬじゃろう》


目の前で爆裂フグに触れても別に何の反応もしなかった、それはロキシーやシャーズが触っても同じ反応だったかからだ。


《多分笛の音に反応して戦闘を回避するようになる仕組みじゃろう》


話している内に22階層の扉が見えて来る。

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