第290話 11階層から19階層

11階層から19階層


一つの階層を攻略するスピードとしては前代未聞の速さと言える、11階層からはこのダンジョンで手に入れた2つの魔具を交互に使用する事になった。

水魔物の魔笛で操り戦うことなく攻略、LV20以上の水生魔物には虹の架け橋(腕輪)で眠らせてしまえば殆ど全ての階層で戦いを避けて進める。

まあそれでもマーシャは構わないが他の3名の勉強にはならないと言う事で、3回に1回は肉弾戦と魔法の勉強に当てながら攻略することになった。


《おぬしら、体力はさすがに底なしか?》

《海の中にいる生物は殆ど海中からエネルギーを補給できます》

《そうなのか?》

《はい》


要するにアローリアとシャーズを含め海洋獣人族全てが海の中にいる時、傷やケガもいつの間にか治ってしまうと言う事になる。


《ふむオートケア又はオートリペアの効果かなるほど》

《私たちの場合、魔法の武具にはそういう効果がありますけど、海竜族達はそれとは違うようですね》

《海水自体が彼らの魔道具なのじゃろう》


そう考えれば彼らの長寿の秘密も海水からいかに魔力を取り入れる事ができるかという所にあるのかもしれない。


《この区域に掛けられている結界にもそういう効果があるのかもしれぬな…》


そうなるとダンジョン攻略が終わり、この世界との交流を始める場合も良く考えておかなければいけないと言う事になる。

海洋獣人族は地上に上がって暮らせるかどうかも含めて、いろいろと制限があると言う事になる。


《次へ進もう》

《はい》


魚の種類は様々、その形もこの世界特有の魚さえ出現する、まるで水族館の中を水槽を隔(へだ)てず見て回るような物。


《この階層は何も見えませんね》


19階層に到達しこの先は20階層のボス戦となるのだが、手前の階層はがらんとした海中洞窟。


《いやそうではなさそうだぞ》

「シュシュシュシュ」

「コンコンコンコン」


マーシャの目の前で銀色の魚がガードスキルに当っては弾かれ、そして再度特攻しようと10メートル以上引き返すように離れて行く。


《なんて薄い魚!》


しかも薄いだけではなくその体は透明に見える、体内の臓器が外から丸見え。

そして決定的なその形は頭部から突き出る棘のような針のような、まるでダーツの矢のような姿。

ダーツフィッシュ(別名ヌーディダーツ):その体はほぼ透明で敵が迫ると頭をこちらへ向け攻撃して来る。

1メートルぐらいまで近寄らないと姿が見えない為、気付いた時には穴だらけになる。

頭の先にある角には神経毒を出す器官がある為、刺されると動けなくなってしまう。


《攻略できそうか?》

《このぐらいなら問題ない》シャーズ

《われらにお任せを》アローリア


どうやら海竜族にはこの魚を攻略する手立てがある様子、2名に任せてみるとなるほど。

海洋獣人族の体表に張られた膜のような物質は何も体温調節だけでは無かった。

マーシャのようなガードスキルが無くともダーツフィッシュの攻撃が海竜族にはほぼ当らないと言って良い。

そしてどうやって攻略するかと思ったら、それは素手でつかまえているのだ。


「シュン」

「パシッ」


器用に指と指の間、しかも水掻きを避けて斜めに挟み込む、さらにその指でダーツフィッシュの角をポキリと折ってしまうだけ。


「ポキッ」


まるで流れ作業のようにとびかかって来るダーツフィッシュを捕まえると同時に、ポキリと角を折って行く。

10分後にはほぼ全てのダーツフィッシュを攻撃不能へと追い込んでいた。

面白いことに角を折るだけでダーツフィッシュは死んでしまうと言う設定らしい、海底には魔核がどんどん散らばって行く。

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