第283話 サザールダンジョン2階層
サザールダンジョン2階層
1階層の攻略時間は20分と言った所、マーシャが先行し魔銀ピラニーを殆ど駆逐してしまう事で後処理は簡単になった。
このダンジョンも後で魔石を1階の所定の場所へ返却することでダンジョンの形を失わなくて済む仕掛けだ。
放置しておけば数時間でダンジョンが吸収してしまうので忙しい時は放置しておいても構わない。
《次へ行くぞ》
《はい!》
次の扉を開けると1階と同じく魔法陣の部屋があり同じように魔石の灯りが灯っている。
《どうした?》
《本当に伝説の聖女様なのですね》
《ん~それはどうかな、妾は聖女ではなく戦士だと思っておる》
確かに聖女という枠ではくくれないであろう、剣術体術魔術どれをとっても規格外。
戦争と言うより戦闘をこよなく愛し、常に修行すると言う変わり者、しかも今は冒険を楽しんでいたりする。
《そうなのですか?私には伝説の聖女にしか見えません》
《まあそのうちわかるじゃろ》
マーシャはさらに次の扉へと手を伸ばす、できれば本日中に20階層までは行こうと思っていたりする。
水中ダンジョンは今まで誰も攻略できなかった場所である。
海竜王の指輪を手に入れ水の中でも楽に息ができるが、道具をそろえたとしても普通の人族や魔族ではこのダンジョンの攻略は難しいと言えるだろう。
《う~む、もしかするとこのダンジョンの基本は群の攻略なのかもしれぬな》
2階層の扉の向こうに見えるのはウナギのような魚の群れ、それが海底に重なるようにうねっている。
だがそこから立ち上がるように見えているのは黒い靄のような物質。
《あれは黒毒ウツボ》
黒い靄は毒ウツボが放つ毒だった。
《あれに触れると肌がただれるだけじゃなく服も溶かされてしまう》シャーズ
《奴らは何故平気なのじゃ》
《彼らの体表にはその毒に対して耐性が有ります》
《そうするとあそこを突っ切るだけでダメージがあるという分けじゃな》
《それだけじゃないどう見ても1匹の大きさは5メートル以上ある》
《あれに巻き付かれると動きが取れなくなるわ》
毒の種類が何なのかわかれば中和液を作成することも可能だが、それでは時間がかかってしまう、それに微量の毒から成分を鑑定するのは難しい。
《そう言えば先ほど手に入れた笛があったな》
そう言うとマーシャはストレージから水魔物の魔笛を取り出す。
《マーシャ様楽器の演奏もなさるのですか?》ロキシー
《いや、初めてじゃ》
だが数百あるスキルの中には音感や演奏などのスキルも有ったりする、これらのスキルは使用しなければ成長しないものだが。
マーシャの他のスキルとの相乗効果はそんな危惧など些細な事だった。
「ピー」
「ピ~ピラピ~ピ~ヒャラピ~」
海底しかも水の中だと言うのにその笛は超音波のように海中に響く、そして黒毒ウツボ達は一斉に動き出すと今まで吐き出していた黒い毒液を飲み込むように動き出した。
最初こちらを見た時は警戒して体から射出していた毒の液を今度は口の中へと吸い込みだした。
5メートルはあるウツボ達が我先にと黒い靄を食べているように動き出すのは少しグロテスクだが。
この行動は別に笛で操ると言うより、ある程度スキルが有れば音を出すことで敵の動きが変化すると言う設定なのかもしれない。
《この笛ありきの階層じゃな、この隙に進むぞ》
《はい》
《は はあ》
「シャー」
2階層は戦うことなく毒ウツボ達を操ることでその先へとマーシャ達は進んで行く。
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